きのう、近くの公園にお散歩に行ってきました。あちらこちらの木陰で水彩画を描く人の姿。長閑な風景が広がります。池の真ん中にある島では、アオサギの巣に親鳥と幼鳥の姿がありました。コロナ禍にも関わらず健気に生きている野鳥の姿に思わず見とれてしまいます。長い長い自粛生活でした。
緊急事態宣言が解除され、今日から外出自粛要請が緩和されました。徐々にではあっても元の生活に戻っていく気配がします。やっとひと息です。.....でも、この2カ月弱の間、時間が止まったかのような生活を強いられてきた私たちは、ここで少し立ち止まって、これからの生き仕方を考えてみるのも無駄ではないような気もいたします。
NHK特設サイト「新型コロナウイルス」にある「専門家・著名人~私はこう考える」のコーナーに、私が注目している広井良典先生(京都大学こころの未来研究センター)がご登場です。テーマは「ポスト・コロナ時代こそ成熟社会にかじを切れ」。前文には「日本が直面している人口減少や低成長の社会。それにあらがうような成長路線に対し長年、脱成長路線を唱えてきた京都大学の広井良典教授。ポスト・コロナ時代こそ、新しい成熟社会にかじを切るチャンスだと主張します」と紹介されています。必見のインタビュー記事です。https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/interview/
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さて、外出自粛生活で時間を持て余した私は、日々断捨離に励みました。その作業中に大量のCDが入った段ボール箱を2個見つけました。リタイアしたときに一度整理して仕舞っておいたものです。その中に、5、6年前に隔週発売されていたCD雑誌「クラシックプレミアム」(全50巻)がありました。各巻とも20頁ほどの小冊子とCD1枚が付いています。
以後、そのCDを毎日1巻ずつ聴いています。順不同ですが、最初はモーツアルトのピアノ協奏曲、ピアノソナタ、交響曲、オペラ、クラリネット協奏曲。冊子の解説を読みながら楽しみました。
表紙をめくると、モーツアルトに所縁のある風景写真が飛び込んできます。ウィーンのブルク庭園に立つモーツアルト像、聖シュテファン大聖堂、そしてモーツアルトの生家があるザルツブルクの街....。数年前に訪れた懐かしい風景です。
モーツアルトは1756年にザルツブルクに生まれ、1791年に35歳の若さでこの世を去りました。日本で言えば開国間近い江戸末期の頃です。そんな時代に、西洋でこんな素晴らしい音楽が生まれている。なんとも不思議な気がいたします。
音楽三昧のある日、思い切って日本橋の中古レコード&CD店「DISC J.J.」さんに行ってきました。さすがに人出はまばらでしたが熱心なファンはいます。この日は、内田光子「モーツアルト/ピアノソナタ第14、15、17、18番」、そして館野泉の「シューベルト/4つの即興曲作品90、作品142」を連れて帰りました。館野さんが脳溢血で倒れる前の録音になります。内田さんのCDは10年前のリサイタルライブ録音です。
そういえば、「クラシックプレミアム」13巻の冊子(ブラームス特集)を開くと、なにやら見覚えのある教会の写真が飛び込んきます。ウィーンのカール教会です。ウィーン中心部に建つバロック様式の教会ですが、「カール6世がペスト撲滅を願って建設を命じ1739年に完成した」とあります。
4年前、地図を片手にウィーン市内の公園や庭園を歩き回って、主だった音楽家の立像をカメラに収めたことがあります。その最後に訪れたのが、楽友協会の真向かいにあるカール教会でした。広場はクリスマスマーケットの真っ最中でした。このカール教会が、ペスト撲滅を願って建設されたとは知りませんでした。
カミュの小説「ペスト」の最後のページには、突然潮が退いたように終息する事態についてこう記されています。
「市中から立ち上がる喜悦の叫びに耳を傾けながら、リウー(医者)はこの喜悦が常に脅かされていることを思い出していた。(中略)ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり、数十年の間、家具や下着類のなかに眠りつつ生存することができる」(新潮文庫)と。
私たちも、いずれやってくるかもしれないコロナ第2波に注意を払いながら、解除後の生活を用心深く、しかし楽しく歩み出していきたいものです。