朝晩ひんやりする季節を迎えました。ここ半月、島根への帰省やら歩き遍路やらが続き、そのうえにカレッジの仕事も本格化。きょう一連の予定がひと段落ついて、やっとふだんの生活に戻ったところです。
「歩き遍路」№7は車中泊を含めて3泊4日。次の旅程を考えると今回はぜひとも土佐の国を歩き終えておきたかったので、列車やバスも利用して、岩本寺、金剛福寺、延光寺と回りました。
足摺岬から室戸岬を望む
今回一番印象に残ったのは、足摺岬から遠くに霞んで見えた室戸岬でした。今年は台風の直撃を受けた室戸岬ですが、あちらから足摺岬を見たのは5カ月も前のことでした。区切り遍路とは言え、あんなにも遠くから歩いてきたことに、ある種の感動さえ覚えました。そんな風景を眺めながら、その間の楽しかったこと辛かったことが浮かんできて、なんとも言えない気持ちになりました。
珍しく道に迷う
今回の「歩き遍路」は、列車とバスを多用したとは言いながら、3日間で50キロを越える距離を歩いたことになります。その間、一度だけ辛い場面がありました。それは2日目のこと。中村駅前から足摺岬をめざしたときのことです。
朝早くに宿を出て、今回のメインルートである足摺岬に向かう途中、下ノ加江、大岐海岸と順調に進みましたが、以布利トンネルを抜けた所で前方にジョン万次郎記念館の看板を見て「あれ?そんなはずはない」。このままでは西海岸に出てしまわないかと。さっそくGooglemapで確認すると、案の定、道を間違えていました。これは大変と以布利港をめざしましたが、その途中で以布利の住宅街に紛れ込んでしまいました。やっとの思いで本来の道に戻ったところで30分のロスです。
「遍路道」に四苦八苦
そんなとき、道端に寂しそうな「遍路道」を見つけました。でも、地図をみると少し時間を稼げそうな道です。さっそく遍路道を歩き始めました。ところがです。歩き始めてすぐに樹々が横たわって道を塞ぎます。目の前にはだかるクモの巣を金剛杖で払いのけながら、アップダウンのある山道を歩き続ける羽目に。道でありそうで、道ではなさそうな、そんな遍路道をただひたすら歩くことに。方向感覚が麻痺するなかで、頼りは左側から微かに聴こえる潮騒の音だけでした。
そんな寂しい山道を独り必死に歩いていると、木の根っこでも食べていたのか猪が掘り返した山道に足を滑らせて4メートルほどずり落ちる始末。筋肉痛を抑えながらやっとのことで出たところは墓地の中でした。でも、目の前には窪津漁港が見えてきて、ひと安心。慣れない古い遍路道の独り歩き、頼れるのは自分独りであることを改めて実感した「歩き遍路」でありました。
金剛福寺の宿坊に泊まる
足摺岬の金剛福寺では、久しぶりに宿坊に泊まらせていただきました。お客は、関東からおいでのご夫婦と私の3名だけでしたので、夕食時一献傾けながらいろんなお話しをさせていただきました。私よりもう少し長いスパンで区切り遍路をされていて、移動は公共交通機関利用が原則というご夫婦、今回は観自在寺まで行っていったんお帰りになるとか。仏像彫りが趣味という温厚そうなご主人を温かく包み込む奥様。こちらまで心なごむ時間をいただきました。
老いの生き方
宿坊だけあって、部屋は広いけれどもテレビもラジオもありません。部屋の鍵もありません。秋の虫の音が静かに聴こえてきます。早々に眠りにつきました。翌朝は5時半に起床、6時から「朝のお勤め」がありました。ご住職と般若心経を唱えました。そして、法話のテーマは「老いの生き方」でした。人生80年、100年と言われる時代の人の生き方。あまり早く介護施設に入ると、手取り足取りの介護サービスで逆に体力が萎えてしまう。元気なうちはできるだけ身体を動かした方がよいと。納得です。「歩き遍路」も、そのひとつかもしれません。
「歩き遍路」を始めたのが一年前の9月下旬。以後2カ月に一度の頻度で出かけて、やっと修行の道場といわれる土佐の国を歩き終えました。88ヶ寺のうち39ヶ寺を巡ったことになります。次回から菩薩の道場といわれる伊予の国・愛媛県に入りますが、こちらもなかなかタイトな旅になりそうな予感がします。
岩本寺本堂の格天井
さて、今回も前回同様、夜10時に大阪駅バスターミナルを出発して翌朝午前5時過ぎに高知駅前に到着すると、普通列車に飛び乗って2時間45分、窪川駅に降り立ちました。そして10分ほどのところにある37番札所・岩本寺に向かいました。このお寺の本堂の天井には全国から集まった600枚近い絵画で覆いつくされています。なかなかの圧巻でした。
雄大な入野松原と四万十川
窪川駅に舞い戻ると、今度は土佐くろしお鉄道の特急列車に乗って土佐上川口駅を下車。まずは海岸沿いに入野松原をめざしました。延々と続く浜辺を1時間あまり歩いて辿り着いたのが道の駅です。ここで小休止。「シラス丼」をいただいたあと松林を楽しみながら、四万十川に向かいました。単調な風景を眺めながらひたすら歩き続けておよそ3時間。やっと四万十大橋に到着です。休憩所で一服したあと、雄大な四万十川を眺めながら堤防沿いに北上して中村駅に向かい、この日お世話になる民宿土佐に到着しました。
翌日は足摺岬へ、そのまた翌日は足摺岬からバスにのって西海岸回りで中村駅に戻ると、列車で平田駅に向かいました。駅から歩いて40分ほどでしょうか。土佐の国最後になる39番札所・延光寺に到着です。関東のご夫婦とはここでお別れでした。
こうして今回も、たくさんの気づきをいただいて帰阪することができました。さあて、次回は年末、それとも年明け?伊予の国の地理をお勉強してから計画を立てることにいたします。