心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

孫長男君と坐禅体験

2018-10-04 20:36:44 | Weblog

 台風一過。前日の風雨が嘘のように晴れわたった夕暮れ時、お婆さんが幼稚園に通う孫次男君を連れて歩いていると、西の空にそれは美しい夕陽が見えたそうな。それを見たお婆さんは孫次男君に言いました。「見てごらん。綺麗だねえ」と。すると孫次男君、「わぁ綺麗。インスタ映えするね。”いいね”たくさんもらえるかもね」と答えたのだとか。最近の子供たちは何でも知ってるねえというのが、私たち初老夫婦の夕食どきの会話でした(笑)。
 そんな10月某日、小学校の創立記念日でお休みの孫長男君の面倒を私が見ることになりました。さあて、どうしよう。思いついたのが坐禅体験でした。興味を示してくれたので、さっそく予約を入れて東福寺塔頭毘沙門堂「勝林寺」に向かいました。もちろん、孫長男君は初めての体験です。お寺が見えてくると、それまで元気だった彼から出た言葉は「叩かれたら痛いの?」でした(笑)。
 この日の体験申込は十数名。うち小学生は1名だけ。手続きを済ませて坐禅をする部屋に向かうと、爽やかな秋風とお香の匂いが漂っていました。まさにお寺の風情です。あたりを見わたしていた孫長男君も、なんとなく落ち着いた様子でした。定刻の午後1時、住職さんが現れました。まずは、お寺の歴史についてお話しがあり、続いて姿勢や足の組み方、手の置き方や呼吸の仕方などについて説明がありました。そして、15分間の坐禅が始まります。
 座敷に静寂が広がるなか、時々、警策をもった住職さんが体験者の求めに応じて両肩を打ちます。ふあっとした心に喝をいただくような、そんな心もちになります。私の隣に座った孫長男君も、見よう見まねで警策をいただきました。
 通常は1本のお線香が燃え尽きるまで続けるのだそうですが、この日はいったん休憩を挟んで、もう一度15分間の座禅を体験します。いつもサッカーや塾やらで忙しい孫長男君。この日ばかりは、お爺さんとゆったりまったりの時間を味わったようでした。
 マンションでしか暮らしたことがない孫長男君にとって、静まりかえったお寺の空気は別世界だったよう。もちろん土と向かい合う生活なんて知りません。バーチャルな世界とリアルな世界の境目が分からなくなっているご時勢に、何かをつかんでほしいと思うお爺さんの思いが伝わったのかどうか.......。
 いま、読売新聞の企画記事「時代の証言者」が政治学者・佐々木毅先生にスポットを当て「学問と政治」をテーマに連載しています。実は、かつて法学部政治学科に学んだ私が2年生の時に読んだ本の中に、佐々木先生の「マキアヴェッリの政治思想」(岩波書店)がありました。いまも書棚の奥に鎮座していますが、これが佐々木先生の助手論文であったことを、この記事で知りました。回が進むにしたがって、南原繁、福田歓一、丸山政男など昔聞いた名前が登場します。大学を出たあとずいぶん経って、塩野七生さんの「わが友マキアヴェッリ」に出会い、以後「ローマ人の物語」などイタリアの歴史物語に関心をもったのも、いま思えば学生時代のこんな出会いがあったからなんでしょうか。
 後に東大総長までお務めになった佐々木先生は、秋田高校のご出身でした。第2回「山に育てられた少年時代」は、なんとなく私の田舎の風景と重なります。第11回「丸山政男先生から刺激」、第12回「論文マキャベリで勝負」、第15回「研究室、破壊され悲痛な夜」あたりになると、まさに私の学生時代と重なってしまいます。丸山政男の門下生だったゼミの先生の影響なのでしょう。以後、全く別の世界に生きてきたのに、時代精神を共有してきたような錯覚を覚えます。こんな新聞記事に触発されて、古き良き時代を思い返す楽しさ。そんな歳になってしまいました。
 さてさて、このところアシスタントのお仕事が立て込んでいるため、ブログの更新もやっつけ仕事になりました。あす金曜日は父の33回忌法要のため出雲に帰省しなければなりません。とは言っても、せっかく島根に帰るのだからと、新幹線と特急「やくも」&「スーパーはくと」利用で4日間乗り放題というお得感満載のトクトク切符「山陰めぐりパス」(12,000円)を購入して帰省することに。紅葉には少し早いようですが、松江や足立美術館、大山などに寄り道をする予定です。.......ところが、なんと台風25号が近づいています。素通りしてほしいと願っていますが、さあてどうなることやら。

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