心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ささやかな足跡

2014-08-03 09:00:07 | 愛犬ゴンタ

 8月最初の日曜日を迎えました。1週間もすれば10日ほどは仕事から逃れることができそうですが、でも何も計画を立てていません。愛犬ゴンタ爺さんを差し置いて宿泊旅行にも行けないからです。そんな休日の朝、ゴンタ爺さんとお散歩にでかけました。気持ちは高ぶりますが、後ろ足が思うように動きません。時々、足が縺れてしまう姿を横目に、「頑張れよ」と声をかける私がいました。
 「願いにより職を解く」。先日こんな辞令をいただきました。半年待てば「定年により職を解く」という辞令になるところでしたから、なんとも意味深いものを感じます。耳元で、「君らしいなあ」と囁くもう一人の私がいました。42年間ではなく、41年4カ月。その間の様々な思い出。楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと、怒ったこと、卓袱台をひっくり返しそうになったこと。この短い辞令文言にそれらが凝縮されているように思いました。長いサラリーマン人生の最後に、やっと自分のささやかな足跡を記したように思います。さあ、あと2年、もうひと踏ん張りしますか。

 今朝は、珍しくアンドレア・ボチェッリのCD「情熱のラブ・ソング」を聴いています。なぜかここ数年、ボチェッリの歌から遠ざかっていましたが、先日立ち寄ったCDショップで見つけました。帯にあった東端哲也さんの「もともと長身で優しい面差しだったが、最近は大人のイタリア・オヤジとしてめっきりセクシーな雰囲気も漂わせきた」というコメントが気に入りました。からっとした南欧の陽の光が優しく脳味噌を解きほぐしてくれる、盲目であるがゆえに人の心の機微が見える、そんなボチェッリの歌が私は気に入っています。私が彼に出会ったのは15年ほど前のこと。最初に聴いたCDは「SOGNO(夢の香り)」でした。
 そうそう、昨日新しい文庫に出会いました。待ちに待った玉岡かおるさんの「負けんとき:ヴォ―リズ満喜子の種まく日々」(新潮文庫)です。帯には「播州小野藩最後の藩主の娘と近江兄弟社を興したアメリカ人」とあり、「封建的な時代に自分の生きる道を探した男女の生涯」とあります。単行本が出版されて3年目にしてやっと文庫本になりました。
 昨秋、「銀のみち一条」に触発されて、生野銀山ウォークに出かけたほどに魅かれる玉岡さんの世界です。ことし5月には「お家さん」が読売テレビ開局55周年ドラマとして放映されました。欲張って上下2巻買ってきました。ここ2カ月ほど読んでいた塩野七生さんの「ローマ人の物語」は、しばらく横において、この夏の「夏休みの友」にいたしましょう。
 いつでもどこでも気軽に開くことのできる「文庫」。小説を読むには、手の平に乗る文庫本がお似合いです。通勤電車の中で立っていても読めます。ベッドに寝転がっていても読めます。私は文庫が気に入っています。そういえば季刊誌「考える人」夏号の特集は「文庫~小さな本の大きな世界」でした。
 本と言えば、先週金曜日の夜、久しぶりに広島の知人と大阪ナンバの夜を楽しみました。御堂筋線「なんば」駅をおりると、こてこての大阪の街、お笑いの殿堂「なんばグランド花月」の界隈が広がります。予定の時間より30分早く着いたので、ビッグカメラなんば店を通り抜け、古書店「天地書房」で時間潰しをしました。飲み屋街の一画に佇む古書店。棚には人文系の専門書がずらり。お客が数名。アカデミックと飲み屋街がなんとなく融合している風景に、「さすが大阪やなあ」と思いました。その夜は半年ぶりにお会いした若い大学の先生方と夜遅くまで楽しい時間を過ごしました。

 ブログの更新作業をしていると、孫君からお電話です。「おじいちゃん、温泉に行こう」。はいはい、それでは近くのスパ温泉にでかけることにいたしましょう。
 

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