心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

読み始めと聴き始め

2013-01-06 09:46:49 | Weblog
 2013年初めての日曜日。生駒山の空が朱色に染まる頃、つまり日の出前の、手先が悴むほどの寒さの中を愛犬ゴンタとお散歩に出かけました。ふだんは遠くに見える生駒山が、その山肌までくっきりと見える、そんな素敵な風景が私は大好きです。

 『雪にたえ 風を しのぎて うめの花 世にめでらるゝ その香りかな』。お正月、初詣に行った近所のお寺で引いた御神籤、今年は『中吉』とありました。「初めは憂き事あれど後 吉深く歎き悲しまず身を慎んでおれば後は万事多いのまゝになります あわてさわぎ心乱れると災いこれより起こる事あり心静かにしなさい」と。何やら意味深な言葉が並びます。歳相応の見識をもって事に当たれということなんでしょう。心してこの1年を過ごしたいと思います。

 2013年の読み始めと聴き始め.....。年末に孫たちを迎えに最寄駅へ行ったとき、本屋さんで時間待ちをしていて楽しそうな新書を見つけました。劇作家で大学教授でもある平田オリザさんの「わかりあえないことから~コミュニケーション能力とは何か」(講談社現代新書)です。平田さんには数年前、あるシンポジウムでお話を聞いたことがあります。何かしら私が日頃接している方々とは違う視点をお持ちで、私にとっては気になる存在でした。
 ページをめくると、世の中でコミュニケーション能力という言葉がヒステリックなほどに使われているが、では「コミュニケーション能力とは何ですか」と問い返して、きちんとした答えが返ってくることは少ない、という言葉にまずは目が留まります。企業や教育現場も近年こぞって若者の「コミュニケーション能力」を問題視するご時世です。
 もうひとつ気になる言葉。それは「ダブルバインド」。ふたつの矛盾したコマンドが強制されている状態を意味する言葉のよう。「わが社は社員の自主性を重んじる」と言いながら、相談に行くと「そんなことも自分で判断できないのか」と言われ、しかしいったん事故が起こると「なんでもきちんと上司に報告しろ。なぜ相談しなかったのか」と叱られる。支社に権限を委譲しながら一方で本社に報告がないと立腹する図に似ています。その現実は現実として受け止めながら、しかし私自身の振舞も含めて再点検が必要だろうと思ったものでした。
 ご自身の体験型コミュニケーション教育、ワークショップを題材に、「伝える」ことの本質に迫るものでした。コンテクストの「ずれ」、コミュニケーションデザインという視点。戯曲づくりを教材にして医療コミュニケーションまでも視野に入れる取り組みに、なにやら大きな時代的課題をいただいたような気がします。

 お正月に立ち寄ったCD店では、ブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」を買いました。演奏はバーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルハーモニック、ピアノはグレン・グールド。1962年4月6日、カーネギーホールでの録音です。この演奏会のことは、以前ご紹介した村上春樹の「小澤征爾さんと、音楽について話をする」にも登場します。グールドのテンポ設定にどうしても納得のいかないバーンスタインが、開演前に聴衆に向かって「今日のテンポはグールド氏のテンポ」ですと、ユーモアを交えて説明した伝説のライブ演奏で、このCDにはそのスピーチも収録されています。グールドのインタビュー録音もあります。
 
 ソニー「BEST CLASSICS 100」に収録されている1枚で、特典としていただいた卓上カレンダーにはグールドの写真が掲載されていました。2013年の聴き始めも、やはりグレン・グールドになってしまいました。

 話は変わりますが、年末、家族総勢11名の団体さんで白浜温泉に出かけました。孫たちはアドベンチャーワールドでパンダにご対面、大人たちは温泉を楽しむ、そんな気楽な小旅行でした。泊まったのは旅館でもホテルでもありません。発泡スチロールでできたメルヘンチックなリゾート型施設「とれとれビレッジ」。2人部屋から6人部屋まで幾種類かのドームハウスがあって、フロントも、レストランも、温泉も別棟。家族連れで賑わっていました。夜遅くまでワイワイガヤガヤと楽しい時間を過ごしました。帰りには近くの市場で新鮮な海の幸を求めましたが、そのせいもあって今年のお正月はずいぶんお酒をいただきました。(笑)
 さあて、残り少ない仕事人生、2013年の第一歩を踏み出すことにいたしましょう。
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