心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

勾玉の携帯ストラップ

2010-06-13 10:11:20 | Weblog
 どんよりとした空を眺めると、いよいよ梅雨の季節なんだと思います。天気予報ではきょうの午後にも雨が降り出し、いっきに梅雨入りの予定だとか。四季がはっきりしている日本に暮らす私たちにとって、梅雨も季節のひとコマです。アジサイを愛でる心の余裕が必要なのだと思います。
 さて、島根県の玉造温泉で開かれた中学校還暦記念同窓会に出席して、早や1週間が過ぎますが、なんとなくこの1週間は重たいものを引きずって歩いたような気がします。職場の喧騒がおさまった僅かの時間に、駅で電車を待つ無防備な空白の瞬間に、ふわっと浮かんでは消える旧友の姿。45年前の彼、彼女の姿と45年後の彼、彼女の姿。既に亡くなった親友の姿を追う。しかし、今の自分の存在とが繋がらない、淋しさ。
 過去を封印してきたわけではないけれど、故郷に後ろ髪を引かれながらも前へ前へと歩んできた我が人生。ホテルの受付で私の名前を叫ぶ友、過去を思い出すのに少し時間を要しました。名簿と、それも旧姓とお顔を照らし合わせながら、ぼんやりと思い出す。ところが人間の記憶というのは不思議なものです。少し時間が経ったある瞬間、過去と現在の像がはっきりと繋がり、45年という歳月がいっきに縮みます。

 還暦同窓会には、地元はもちろん全国各地から同期生の約半数にあたる70人あまりが集まりました。みんなで神主の祈祷を受けたあと、記念写真を撮って、いよいよ懇親会です。全員が1分間スピーチをしても1時間はゆうにかかります。昔から元気一杯だったAさん、Bさんを中心とする女性陣の歓迎ドジョウ掬い踊りで宴も最高潮。懇親は夜を徹して行われました。仲間と旧交を温めながら、さて10年後の古稀記念同窓会に出席できるのかどうか、何人が集まるのかどうか。最後は淋しい話題になりました。
 実は、きのうの土曜日は、職場のOB会に招かれて池田市の山間にある温泉旅館に出かけました。2週連続の温泉宿です。大半の方は70以上、90歳に手の届く方もいらっしゃいましたが、「還暦?まだ若いなあ」というのが皆さんの一致した声。古稀(70歳)を過ぎると、元気に動きまわれるのはあと10年。残された年月を精いっぱい生きたい、とも。こう考えると、我が人生はあと20年あることになります。頑張らなくては。

 同窓会の翌朝、私は清々しい空気に誘われて、ホテルから山陰本線の玉造温泉駅まで歩きました。小川に沿っておよそ20分、全身で田舎の空気を満喫しました。そのあと、出雲市に足を伸ばして姉夫婦宅に寄り道をして、美味しい出雲そばをご馳走になって、午後2時30分発の特急やくもで帰途につきました。
 そうそう、いま机の上に、勾玉(まがたま)の携帯ストラップがあります。出雲駅のお土産店で私の還暦祝いのために買ったものです。以前、小林秀雄講演集CD第8巻「宣長の学問/勾玉のかたち」を聴いていて、小林さんが勾玉の姿に「人間が初めて表現しようとした原初的な形」とお話になっていたことを思い出したからです。説明書には、この石の持つパワーと題して「心を癒し、また、柔軟な思考力を授けてくれる」とあります。このストーン・パワー、いまの私には最も必要なものような気がします。....と、書き進んだところで、雨が降り始めました。

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