ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

パッション

2011年08月04日 | レッスンメモ
パッション、情熱(熱情)、よく使われる言葉ですね。音楽の楽語にも「アッパショナート(appassionato、熱情的)という言葉がありますし、ベートーヴェンのソナタ23番はベートーヴェン本人がつけた題名ではありませんが、「アパッショナータ(熱情)」とも呼ばれています。一方、バッハの代表作の一つ、マタイ受難曲は英語では「St. Matthew Passion」です。このパッションの意味は「受難」です。

つまりパッションという言葉は、日本語にすると一見全然別物に見える「情熱(熱情)」という意味と、「(キリストの)受難」という二つの意味があるということです。

キリスト教では、イエス・キリストが最後の晩餐の後、すべての苦難を受け容れて、引き受けて、静かに十字架の上の人となった、その行為のことを「パッション(受難)」と呼ぶのだそうです。

ベートーヴェンの曲には、「熱情」をはじめ、聴く者にベートヴェンの苦難とそれを起爆剤にしてほとばしる喜びや悲しみ、彼の激しい感情の発露を印象付ける曲が少なくありません。もちろんベートーヴェンに限らず、クラシック音楽の中には、静かな音楽の中にもパッションが隠れている名曲が多いと思います。

苦難を受け容れて、受け容れたものをしっかりと心の中で抱える。その抱える精神力、力強さを何かはじけるものにと変換させていく。そしてついには、それを喜びに変える、愛に変える。そうして胸の内からほとばしり出てくる強い感情、これが情熱(熱情)であり、パッションなのではないでしょうか。

受難と情熱(熱情)が、西洋では元は同じ言葉だということ、何だかとても深いと感じます。このことは芸術を理解する上でとても大切なことではないでしょうか。

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コメント (4)
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