Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

棘ある酸塊味の葡萄酒

2007-04-09 | 試飲百景
聖週間の水曜日に試飲をする。復活祭前でお客さんもちらほら居るかと思ったが、夕刻であり誰もいなかった。先代の親爺さんが事務所でうろうろしていたので、色々と勧めてくれる。

勿論、前回見つけたワイン、ヘアゴットザッカー(キリストの棺 ― 何と聖週間向きの地所の名前であることか!)を褒め称える。当方が勝手に想像していたことを打ち明けると、いつものことでハッキリと肯定も否定もしないが、幾らかそれに付け加える。

つまり、手作業の剪定だけでなく、例年以上に手を掛けたことを認める。そして最終的には、どうも、摘み取りの時期の集中した仕事振りも大きそうである。

前回の訪問時は、丁度デュッセルドルフのワイン博覧会で出払っていたので、その成果を尋ねる。非常に反響は高く、また例の雹被害を挙げて、例年の六割方の収穫量なので、売り切れが三ヶ月ほど早まるだろうと、ご機嫌である。

また醸造上の変化も指摘すると否定しなかったので、少なくとも2006年は少量高品質へと狙いを定めたコンセプトの切り替えが功を奏しているようだ。

その中でも、展覧会で評判の良かったエルスターは、流石に価格も「上のお気に入り」と比べて丁度一ユーロ上がるが、石灰質のミネラル風味が愉しめる。その時、ここ数年気になっていたグレープフルーツ苦味が、後味に残らないので、大変嬉しい飲み物となっている。高級ワインとしての競争力も高い。これは、第二のお気に入りである。

その前に、シュティフトを試すが、これは土壌の特徴が出て幾らか重みがある。更に、モイスヘーレは、価格が上がる分、香り高く、高級ワインの中での評定が下される。

ヴァイスブルグンダーを試すかと親爺さんに言われて返事をしなかったので、それは出さなかったが、ソーヴィニオン・ブランを出してくる。

こちらとしては、あまり興味を示さなかったのだが、「これ、直に無くなるよ。今買わなきゃ、もう飲めないからね。もし興味あるなら」と念を押される。そして、価格票を横目に、期待せずに飲むと、これが納得なのである。

親爺さんの説明通り「西洋酸塊、学名 Ribes uva-crispa」の香りなのだ。色は透明に近く、ワインを飲むと言うよりも新しい飲料と言う印象がある。大変珍しいだけでなく、サラダや魚にもその清涼感が素晴らしいと思わせる。フランス産かで何かでも、あまり覚えの無い経験である。

なるほど、メーヴェンピックグループが来年度産の注文も出しているのも理解出来る。リースリング以外としては、少々高価であるが、買えるのである。既に十年近い栽培経験があると言うが、軒並みリースリング以外で成果を挙げることが少ない醸造所の中で、これをものにするのは立派である。

水はけの良い、果実を腐らせない土壌をダイデスハイムにあてがい、2006年度に拘らず成功させた秘訣はと言うと、「9月22日には早めに収穫したから」とさっと答えるのである。

兎に角、2006年の不幸を消し去るような仕事振りは賞賛に値する。今日は、娘さんが女性オーナー会のメンバーの誕生日で留守と言う。「先日独第二放送へのリンクで観てね」と言うと、観ていないという。「お宅のHPのリンクで観たよ」と言うと、ネットサーファーで無い様子をその表情に見せる。

五月には、日本からお客さんが来るかも知れないとして、前情報を得る。新価格表は印刷中であり、一月の間に、地所ではムーゼンハングやラインへーレ、またウンゲホイヤーからバサルトなどが瓶詰めされる予定である。どれも期待出来るが、今年はバサルトは特に楽しみである。

良く考えれば、ここ数年代替わりしてからあまり購入していないと言っても、2003年産シュペートブルグンダーなどをワイン蔵に納めてあるので、結構面白いものを勧めて貰って、少量ながら買いつけているのも事実である。

若婿さんとの連係プレーも作動して来ているようで、まさに情報が受け取り易い典型的な家族経営の醸造所となっているので、今後も期待が出来る。

こうして、「ネットに書くと注文が殺到するかもしれないので、自分のものを先ず確保しておかなければいけない」と、親爺さんに溢しておいた。五月二十日の試飲会に初めて参加してみようと思っている。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする