Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

三つの要塞に人質を捕る

2007-04-18 | 生活
先日の遠足で、トリフェルツ(三つの要塞)と呼ばれる歴史的な山城を訪れた。過去にこれまで、五回以上は訪れて、中の見学も数回している。それでも、未だに歴史的な全容が掴みきれない。

その理由は、最も歴史的な事象である獅子心王リチャードの活躍と捕囚、そしてこの城で人質となった状況が良く分からない。更には、神聖ローマ帝国の三種の神器などが並ぶとなお複雑となる。それどころか、近辺の帝国の主要地点であるシュパイヤーやヴォルムスが紹介されるとますます混乱を極める。

今回も展示を見て、先ず獅子心王の生涯を二十枚以上のパネルを使って三各語が併記されているのがいけないと判った。つまり、要点を纏めて小さく紹介してから、詳しく紹介すれば良いものを時系軸をもとに生涯を述べている。シュートプロフィールすら無いのである。

その中で、展示者が訪れた地点の関係を20枚のパネルから見つけ出さなければいけない。大変具合の悪い展示なのである。大抵の博物館などは大変良く出来ていて感心するのだが、この手の古城や教会関連ではあまり今まで素晴らしい展示説明を見た事がない。

獅子心王の場合は、オックスフォード出身に係わらず、その精力的で華々しい十字軍活動を中心に、その腕っ節の強さで欧州中どころか、イスラエルや黒海までを成敗し続けていて、住所不定のような感すらある。だから、英国議事堂の前のウェストミンスター広場に像があるとして逆に驚かされる。

その獅子心王もヴィーンの近くで嘗ては十字軍の同志で宿敵のフィリップ二世の手に落ちて、拘束される事となる。そして、予てから教皇と世俗で力比べをしていた帝国皇帝ハインリッヒ六世に身柄を預けられて、政治的な人質となる。

兎に角、身代金だけでも銀を何トンも要求され、甥の政略結婚まで要求されている。ハインリッヒ皇帝が教皇に対して破門の危険を避ける苦心をしながら、なんとか交渉成立に漕ぎ着ける政治環境が浮き彫りにされてくる。

神聖ローマ帝国の三種の神器がなかなか揃わずに複数箇所に別れて保存されていたりするのが、そうした不安定な権威を示す事象として捉えられている。ヒットラーがそれをヴィーンから取り寄せニュルンベルクに集めたのは最近の事である。

そこで面白いのがハインリッヒ皇帝は、こうした神器を大切に、十字軍の功績者を挟んで教皇との間で政治手段の正当性に配慮したことであり、これは彼の皇帝でさえ与えられた正統性が全てであった事を思い起こさせる。

西洋史に詳しい者ならば当然の概念であるのかも知れないが、王権神授説をして我々はこれを知っており、これこそが秩序システムであって宗教心と言うよりも哲学理念の問題である事に気がつく。

結局、獅子の心臓を持つリチャードは、身代金やその他と交換に解放される。現代においてもブッシュ政権のような政策は、ただその軍事経済力にものを言わせていて、その正統性はただ米国国民の民主主義的審判と言うところに依拠している。これを以ってしても、封建制の中での王権の正統性に比べて、現在のホワイトハウスの権力は揺るぎ無いものとはならない。選挙における集金力に依存した経済的なパワーゲームとして、一千年後の世界は中世の封建社会と現代の民主主義をどのように比較するのだろうか?


写真:トリフェルツ近影
コメント (2)
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