音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■平均律クラヴィーア曲集1巻4番・前奏曲は、深刻に重々しく弾くべきか?■

2010-04-27 19:09:59 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律クラヴィーア曲集1巻4番・前奏曲は、深刻に重々しく弾くべきか?■
                  2010・4・27 中村洋子


★寒い4月です。

咲き始めましたツツジも、冷たい風に揺れています。

明日の平均律アナリーゼ講座には、

たくさんの皆さまのご予約をいただき、とても、嬉しいです。


★今回の「 4番・嬰ハ短調 」については、

フーガのテーマの“ 音形 ”が、「十字架の形をしている」と、

平均律の解説書には、繰り返し記載されています。

まるで、エンドレステープのようにしつこく、

孫引きに孫引きが、重ねられています。

テーマを構成する各々の音を、和声上の機能から考えますと、

私は、このテーマは、十字架の形にはなっていないと、思います。


★前奏曲も、それに引っ張られるように、

“ 重々しく弾かなければいけない ”、

“ 深刻に弾くべきだ ”として、

「子どもには早すぎる、レッスンには使えない」と、

敬遠されている方が、多いのではないでしょうか。


★平均律1巻を、4曲ずつのセットと見る場合、

4番は、最初のセットの最後の曲です。

喜びに満ちた 1番と、合わせ鏡のように、

見つめ合っている曲、と言うことができます。

同時に、遥か彼方の24番とも、呼応しています。


★4番前奏曲の 36小節目、アルトの 2拍目 Ais,Gis の 8分音符に、

バッハ自身が、珍しく、スラーを付しています。

同様に、3拍目 H,Ais にも、スラーを付しています。


★バッハがスラーを、わざわざ記したのは、

そこが、とても重要な個所であると、知らせるためです。

自筆譜では、この部分が、とても目に入りやすい、

目立つ場所に、据えられています。


★このスラーは、24番の要の場所にも、同様に記されています。

36小節目の、このスラーの部分が、

4番のフーガの、テーマに育っていくのです。

また、このスラーは、実は、

バッハ・フランス組曲の舞曲とも、深い関係があるのです。


★明日の講座では、バッハ・フランス組曲と、

この前奏曲4番についても、お話いたします。


★この4番は、もったいぶったり、秘密めかして、

深刻に弾く必要は、全くありません。

心の底から、歌い、共感して演奏できるような曲しか、

バッハは、作曲していないのです。

                       ( シャガの花 )
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