音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ピアノ独奏曲を作曲しました。Kempffの「Goldberg-Variationen」偉大な演奏■

2015-06-02 22:35:48 | ■私の作品について■

■ピアノ独奏曲を作曲しました。Kempffの「Goldberg-Variationen」偉大な演奏■

                 2015.6.2  中村洋子

 

 


★5月末は、鹿児島県・屋久島近くの口永良部島で突如火山が噴火し、

首都圏も、二度にわたって大きな地震に見舞われ、

小笠原諸島でも、記録にないような深い震源での大地震が起きました。

穏やかな気持ちに、なかなかなれません。


★東京銀座の「山野楽器」クラシックCD売場で、

私の「無伴奏チェロ組曲全6曲」のSACD( Wolfgang Boettcher 演奏)が、

心のこもった紹介文を添えて、展示販売されています。

うれしいことです。

タワーレコード本店でも、ご紹介いただいているそうです。


★私は、これから出版します本の準備や、

新しくピアノ独奏曲の作曲などで、忙しい毎日でした。


★昨夜は夜中にふと、 Wilhelm Kempff ヴィルヘルム・ケンプ(1895~1991)

演奏の Bach 「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」を、聴きました。

楽譜を見ながら演奏をお聴きになりますと、冒頭の Thema である「Aria」で、

Bach の書いた装飾音を、 Kempffが大胆にカットしていることに、

驚かれるでしょう。


★これは、前回のブログでも書きましたように、

Kempff が考え抜いた結果、現代のピアノで演奏するためには、

「過剰となる」装飾音を省くことで、よけいに Bach の本質が

理解できるということなのです。

見事な演奏です。


★この曲を、カイザーリンク伯爵が不眠症対策にした、

とかいうお話は、戯言でしょう。

Bach の「Clavier Übung クラヴィーアユーブンク」の第4巻として、

生前に出版された、渾身の名曲です。

眠くなるどころか、 聴き惚れます。

 

 

 


2008年から始めました Bach の

「Inventionen und Sinfonien  インヴェンションとシンフォニア」、

「Wohltemperirte Clavier Ⅰ、Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集第1、2巻」

の全曲アナリーゼ講座は、6月16日 (火)の「平均律2巻 5番 ニ長調 D-Dur」 、

7月14日 (火) 「平均律2巻12番 ヘ短調 f-Moll」のみを、残すことになりました。


★7年かけて達成しつつありますが、

私の希望はやはり、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」と、

「Die Kunst der Fugue フーガの技法」を、どういう形になるか

分かりませんが、皆さまと一緒に勉強していきたい、ということです。


★「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の

 「Manuscript Autograph  自筆譜 」は、行方不明ですが、

幸い、 Bach 公認の生前出版された楽譜のfacsimileが、

存在しますので、それで勉強できます。

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」と同じです。


★「Die Kunst der Fuge フーガの技法」は、

「Manuscript Autograph  自筆譜 」が、残されています。

Bach が亡くなった直後に出版された「Die Kunst der Fuge」

初版譜とは、配列などが異なっています

私はこの「Manuscript Autograph  自筆譜」で、勉強しますと、

初版譜より、こちらのほうに説得されてしまいます。

その点も、じっくりと探求したいと思います。

 

 


今回作曲しましたピアノ独奏曲は、「Suite No.1 for piano solo」です。

7楽章形式の組曲です。

与謝蕪村の俳句を、各章に一句ずつ掲げました。


★これは、私が学生時代から愛読しています、

萩原朔太郎「郷愁の詩人与謝蕪村」という作品にある句から、

選び出しました。


★私が、Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生と、

一緒にSACDを出しました「無伴奏チェロ組曲1~6番」の姉妹編

言えます。

Bach を7年間勉強してきましたご褒美かもしれませんが、

私なりに、満足した作品となりました。


朔太郎の評論は、若い頃から何度も読み、

そのたびに、発見があります。

それが「名作」である理由でしょう。

朔太郎と蕪村、天才が天才を見るのです。

機会がございましたら、是非お読みください。

 

 

Kempff は、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の冒頭、

この変奏曲の主題となる「Aria」の装飾音をほとんどカットし、

2小節目上声の前打音も、弾いていません。

これは、 Bach 「 Inventio 1番 C-Dur 」を、

 Bachの 「Manuscript Autograph facsimile 自筆譜 」 で、

勉強した人でしたら「なるほど!」と、

膝を打つことでしょう。


彼はただ装飾音を省略するのでなく、深いアナリーゼを基に、

カットしているのです。

それによって、Ariaの骨格が隅々まで分かります。

Ariaのみならず、この曲全体の構造まで、

まるで、X線透視したかのように、

分かってくるのです。


★続く 「Variatio Ⅰ 第1変奏」は、二声 の曲なのですが、

 Kempff の演奏では、四声に聴こえます。

くっきりと四声に聴こえます。


★「二声 の Inventio」が、本当は「四声」であるのと、同じ理由です。

さらに、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」と、

「Inventionen und Sinfonien  インヴェンションとシンフォニア」とが、

兄弟の曲であることまで、分かってくるのです。

それを教えてくれるのが、 この Kempff の偉大な演奏です。

 

 

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