音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 調性とは何か?、という問いに対する、バッハの回答 ■

2011-05-24 19:09:11 | ■私のアナリーゼ講座■

■ 調性とは何か?、という問いに対する、バッハの回答 ■
 ~ 平均律アナリーゼ講座 第12番 ヘ短調 を開催 ~
                                   2011.5.24  中村洋子

 


★27日金曜日は、カワイ表参道 「 パウゼ 」 で、

Das Wohltemperirte Clavier 

平均律アナリーゼ講座 第12番 ヘ短調 」 を、開催します。

3月の 「 東日本大震災 」 で、延期になっていた講座です。

このような理由で、中断するとは、

講座を始めた頃には、夢にも思わなかったのですが、

「 12番 」 という番号をみて、ハッとしました。


★「 平均律全 24曲 」 の、ちょうど真ん中の曲であり、

この曲が、前半の頂点 「 へ短調 」 だったのです。


★自筆譜を勉強していますと、バッハが、その曲の前と後の曲で、

どのようにモティーフを 「 敷衍 」 させ、配置していったか、

手に取るようにわかり、その面白さに、夢中になってしまいます。


★しかし、それだけではなく、

「 もっと大きく 24曲を見通しなさい 」  と、

バッハ先生に、声を掛けられたのかもしれません。

また、インヴェンションの頂点の曲、 「 へ短調 」 が、

「 15曲の曲集 」 の 3分の 2にあたる、

「 9番 」 であるのも、全くの偶然では、ありません。

 


★ヘ短調の主音である 「 へ音  ( F音 ) 」  は、

「 1番 ハ長調 」 の音階の、 「 第 4音、下属音 」 に当たります。

11番 へ長調は、 1番の下属調、

12番 へ短調は、下属調の同種短調

( 主音が同じ長調、短調の関係 ) です。


★「 へ短調 」  に、曲集の頂点をもってきた、

バッハの意図は何か?

この意図こそが、  ≪ 調性とは、何か? ≫  という、

大きな大きな  「 問い 」  に対する、

≪ バッハの回答 ≫  と、言えるかもしれません。

 


★バッハの自筆譜では、「 平均律クラヴィーア曲集 」 は、

一頁 六段、見開き 二頁で、記譜されています。

「 フーガ 11番 」  は、見開きの始め、左頁始めから記譜され、

その 11番が、右頁二段目で終わった後に、

「 プレリュード 12番 」 は、あたかもその続きのように、

右頁 三段目から、記入されています。


★「 プレリュード 12番 」 を、自筆譜を見ながら演奏する場合、

いつも 「 フーガ 11番 」 が、自然に目に入ってきます。

バッハは、 「 フーガ 11番 」 の、何を見ながら、

「 プレリュード 12番 」 を、弾いて欲しいと、

考えていたのでしょうか?

この点につきましても、講座でお話しする予定です。

 

★現在、流布しております一般の楽譜は、

当然のことながら、バッハ自筆譜のようには、

印刷されていません。

各曲ごとに独立させ、きれいにページを改めています。

これでは、バッハの意図は、

到底、読み取れないと、私は思います。

 

 

                            ※copyright ©Yoko Nakamura 


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