音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Bachの誕生日、Fischer「毎日、Bach を勉強すれば至高の宝に到達」■

2014-03-21 21:35:52 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■Bachの誕生日、Fischer「毎日、Bach を勉強すれば至高の宝に到達」■
             2014.3.21   中村洋子

 


★きょうは 3月 21日、

Johann Sebastian Bach  バッハ  (1685~1750) の、

お誕生日です。

1685年生まれですから、何歳でしょうか?

バッハの不滅の音楽は、ますます生命力を、輝かせています。

お誕生日を祝して、

Edwin Fischer の著作 「 Johann Sebastian Bach 」 を、

少しですが、丁寧に読みました。










★Edwin Fischer : Johann Sebastian Bach
                          Eine Studie
        Parnass-Büchrei Nr.76  パルナッスス文庫 No.76
 Alfred Scherz Verlag Bern  アルフレート シェルツ出版  ベルン

全体は、
    1) Praeludium
       2)   Tempo Ordinario
       3)   Interpretation
       4)   Lyrisches Intermezzo
       5)   Postludium   
                                   の5章から成っています。


★日本でも、 「 音楽を愛する友へ 」  (新潮文庫) という題で、

翻訳が出版されていましたが、

「 Tempo Ordinario 」 の訳が、「 四分の四拍子」 となっていたり、

首を傾げることが、多過ぎる翻訳です。


 
★その第4章 Lyrisches Intermezzo の最後のところを、

少し抜書きして、訳してみました。

So nahen wir uns auch zeitlosen Werken und je größer sie sind,
um so mehr ist ihr Wesen einer Sphinx vergleichbar.
Ein solches Werk sagt jedesmal etwas anders aus: 
es faßt heute unseren Lebenssturm, und  läßt sich  morgen logisch  auslegen;
verlangst Du Farben von ihm, es hat sie,

willst Du reine, architektonische Formen, Du findest sie und staunend
betrachtest Du das geheimnisvolle Rätsel dieser Werke, in denen so
konzentriert ein Vielfaches ist, und die so viel Gesichter haben. Da wird
man stil und fühlt, daßman sein kleines Leben nicht am Ewigen messen
kann, daßwir höchstens durch demustsvolle Arbeit und
unermüdlicheBeschäftigungmit der Ursprache des Meisters hoffen
dürfen, zu jenem ihm eigenen inneren Frieden zu gelangen, der zu den
höchstenGüterndieses Erdendaseins gehört.










★私たちは、流行に左右されない Bach の作品に、

近づくことができます。

(Bach の)作品が偉大であればあるほど、

その本質は、Sphinx スフィンクス に似てきます。

Bach の作品は、表現するたびに、前とは異なった容貌を、

私たちに、見せてくれるのです。


きょうは、人生の嵐 ( のような感情 ) を、表すかと思えば、

あしたは、論理的な側面を見せてくれます。

あなたがその作品に、色彩を要求すれば、それはそこにあります。

あなたが純粋に、建築のような形式を望むならば、作品のなかに、

それを見つけるでしょう。


幾重にも何重にも凝縮された、たくさんの容貌、そして、

神秘的な様々な謎に、満ちています。

あなたは、それに驚き、凝視することでしょう。

人の一生は短く、永遠という物差しでは、測ることができないほど、

短いのです。


Bachの言語 ( Ursprache ) で、謙虚に謙虚に、

倦まず堪えまず、仕事 ( 演奏、勉強 ) をすれば、

彼自身の内なる平和、即ち、

世界がもつ至高の宝物に、到達することができるでしょう。

 

Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886~1960) は、

Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) と並ぶ、

Bach の、最高の表現者でしたが、

その彼が、 “ Bach は毎日毎日、違う容貌を見せる。

スフィンクスのように謎である ” と言っていますが、

この考えは、Casalsと同じです










★≪ 毎日毎日、 Bach の  Ursprache =源の言語 を学びなさい ≫

というのは、偏見や独善、孫引き、コピペに満ちた、

エディターたちによる、校訂版楽譜に依らず、

Bach の 自筆譜から学びなさい、と言っているように思います。


★感情、論理、形式、色彩、

すべてが Bach の作品に凝縮されています。

色彩とは、 harmony、

論理は、 countepoint 、

形式は、motif の有機的発展を基礎とする大規模な構築性、

感情とは、人類のもっている美しい、これ以上ない心の表現、

という風に、置き換えることも、

あながち、間違いではないでしょう。


★偉大な Fischer や Casals が、毎日毎日、

Bach の作品を勉強したのですから、

私たちも、怠けている時間はなさそうです。

 



 

  ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

 Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます






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