■ 龍雲庵のお料理と佐川さんの漆器 ■
2007/2/19(月)
★先日、佐川泰正さんの漆器展に行ってまいりました。
今回は、ヒノキで作ったお箸が、特に私の興味をそそりました。
塗り箸は、一年も使いますと、通常は先端の漆が剥がれ、醜くなります。
そこで買い換えることになります。
業界は、そうなるように作っているのでしょう。
佐川さんは、それを「もったいないなあ!」と思われる方です。
そこで今回、長い間、使うことのできるお箸を考案されました。
先端や頭の部分が鋭角に尖っていると、塗った漆が磨り減ったり、
剥がれやすくなります。
角に丸みをつけ、先端部に入念な布着せをするなど工夫を凝らしました。
それでいて細身、上半分は小粋な朱色、下半身が深い黒、どこか歌舞伎調の艶やかさ。
しっとりと手に馴染み、幾久しく使えることでしょう。
★展示会では、「おしのぎの御献立」をいただきました。
すべて佐川さんの器に盛られています。
とても贅沢なことです。
新宿「龍雲庵」のお料理は、季節感や色彩感に溢れ、切れ味鋭く、感動の美味しさでした。
「龍雲庵」の主・後藤紘一良さんが自ら、節分にちなんだお献立の解説をしてくださいました。
そのお話は、平易、明快、的確な言葉、まさに「簡にして要」でした。
ほんの数分で、お料理のすべてが伝わってきました。
お料理の出来栄えと同じぐらい、感銘しました。
日本語をかくも使いこなせるとは。
「料理」は究極のところ「知性」である、と得心しました。
その他の領域でもさぞかし達人のお方であろうと思われます。
さっそく、おうちに帰り、真似っこ料理を作ってみたくなってしまいます。
メモいたしましたお話のすべてを、皆さまにお伝えしたい、と思います。
★★ 御献立のご紹介 ★★
●【 先附け 】 ・高足付き朱色のデザート皿
「胡桃豆腐 割しょうゆ、山葵添え」=国産の姫クルミを素揚げ、ペースト状にして葛と混ぜて練る。
(山葵の緑が新鮮、香りが鼻をくすぐります。お豆腐のプルンプルンとした舌触り、
割しょうゆの切れのよさ、塩気を感じさせない清流のような爽やかさ。
こんなに美味しいものが最初なら、次はどんなに素敵なものが・・・と、心ときめきます)
●【 和風盛り合わせ(節分皿) 】 ・拭き漆の楕円盆
「枡大根」=豆撒きの枡の形に刳り抜いた大根、その中に、緑鮮やかなお多福豆。
(枡にお出汁がじっとりと滲みています。お豆は蜜で煮てあり、典雅な軽い甘さ)
「赤鬼麩」=やんちゃな赤鬼の顔に似せたお麩、中に味噌餡入り。(遊び心満点です)
「海老芋寿司」=大和芋を蒸して裏ごし、酢、砂糖、塩を加え、手毬のように丸め、
巻き海老(小さい車海老)を貼り付ける。(海老の鮮烈な赤、お芋の滑らかさ)
「独活甘酢」=ウドを甘酢に漬け、細く切る。(目が覚めるような酸味、とても爽やか)
「穴子入り出し巻き」=穴子を白焼きしてから軽く煮る。
(卵のやさしい感触に、穴子のしっかりした食感、焼いた皮の硬質な味が見事に調和)
「鰯梅香煮」=節分に欠かせないイワシを三枚におろし、梅干で煮る。
(口に含みますと、梅干の軽く若い酸味、つぎに、醤油の逞しく香ばしい風味、そして最後に、
イワシ本来の旨みが、じっくり重厚に染み出してきます。
その余韻がしばらく続きます。
お箸がおのずと止まります。
そして、おもむろに消えていきます。
“人の一生とはこんなものかな・・・”と、目を瞑っている自分にふと、気付きました。
最も感動した一品です)
「ひいらぎ」=柊の小枝が一本刺してあります、厄除け用です。
●【 汁 】 ・檜の四季椀
「菜の花スープ」=菜の花、京人参、牛蒡、蒟蒻、椎茸、白味噌、酒粕。
(立春が旬である菜の花を茹で上げ、それをすり鉢で摺りおろします。
その色鮮やかな菜の花ペーストを、白味噌と酒粕のお汁に混ぜます。
真っ黒いお椀の中は、萌え黄色の大海原でした。
早春が溢れています。
崩れそうに柔らかい真っ赤なニンジン、椎茸や小岩のような蒟蒻たちが泳いでいます。
そんな中、笹がきゴボウのシャリシャリ感と土の香りには参りました。
刃を食べているかのような舌触り。蕎麦の喉切れをさらに鋭角的にした心地いい食感。
視覚を、触感をとことん追求して、異次元の美味に到達する。
「これが割烹である」と理解しました)
●【 洋風盛合わせ 】 ・楕円形の乾漆皿
「合鴨鍬焼き」=アイガモの皮側を焼き、そぎ切りして小麦粉を付ける。
フライパンで焼き、たれを絡める。
(これまでの、軽い品々と比べ、お肉のしっかりした旨みと脂分が、充実感を与えます)
「ししとう」=サッと素揚げ。(鮮やかな緑)
「きざみ野菜」=レタスの細切り。(サクサクとした歯応えの心地よさ)
「芽キャベツ」=半分に輪切り。(緑、黄、白と断面の色彩変化が見事)
「ドレッシング」=経験したことのない軽やかな味。
●【 ご飯 】 ・外周に茶の模様が入った黒の大椀
「芋粥」鼈甲餡かけ=おイモの入ったお粥に、清流で育った芹を細かく刻んで混ぜます。
甘酸っぱい醤油味の餡(ベッコウあん)を、粥にトロリと垂らす。
(白いお粥に描かれるベッコウ色の文様は、琳派の川流れの図のようです。
緑のセリから、早春の香りがプンプン)
★すべてのお料理は、一口で召し上がるそれはそれは可愛い「おしのぎ」ですが、
いただき終わりますと、気持ちのいい腹心地でした。
季節の肌触り、大地の恵みを余すところなく感じさせていただいたお料理でした。
私たちは、なんと豊かな国に生きているのでしょう。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽
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2007/2/19(月)
★先日、佐川泰正さんの漆器展に行ってまいりました。
今回は、ヒノキで作ったお箸が、特に私の興味をそそりました。
塗り箸は、一年も使いますと、通常は先端の漆が剥がれ、醜くなります。
そこで買い換えることになります。
業界は、そうなるように作っているのでしょう。
佐川さんは、それを「もったいないなあ!」と思われる方です。
そこで今回、長い間、使うことのできるお箸を考案されました。
先端や頭の部分が鋭角に尖っていると、塗った漆が磨り減ったり、
剥がれやすくなります。
角に丸みをつけ、先端部に入念な布着せをするなど工夫を凝らしました。
それでいて細身、上半分は小粋な朱色、下半身が深い黒、どこか歌舞伎調の艶やかさ。
しっとりと手に馴染み、幾久しく使えることでしょう。
★展示会では、「おしのぎの御献立」をいただきました。
すべて佐川さんの器に盛られています。
とても贅沢なことです。
新宿「龍雲庵」のお料理は、季節感や色彩感に溢れ、切れ味鋭く、感動の美味しさでした。
「龍雲庵」の主・後藤紘一良さんが自ら、節分にちなんだお献立の解説をしてくださいました。
そのお話は、平易、明快、的確な言葉、まさに「簡にして要」でした。
ほんの数分で、お料理のすべてが伝わってきました。
お料理の出来栄えと同じぐらい、感銘しました。
日本語をかくも使いこなせるとは。
「料理」は究極のところ「知性」である、と得心しました。
その他の領域でもさぞかし達人のお方であろうと思われます。
さっそく、おうちに帰り、真似っこ料理を作ってみたくなってしまいます。
メモいたしましたお話のすべてを、皆さまにお伝えしたい、と思います。
★★ 御献立のご紹介 ★★
●【 先附け 】 ・高足付き朱色のデザート皿
「胡桃豆腐 割しょうゆ、山葵添え」=国産の姫クルミを素揚げ、ペースト状にして葛と混ぜて練る。
(山葵の緑が新鮮、香りが鼻をくすぐります。お豆腐のプルンプルンとした舌触り、
割しょうゆの切れのよさ、塩気を感じさせない清流のような爽やかさ。
こんなに美味しいものが最初なら、次はどんなに素敵なものが・・・と、心ときめきます)
●【 和風盛り合わせ(節分皿) 】 ・拭き漆の楕円盆
「枡大根」=豆撒きの枡の形に刳り抜いた大根、その中に、緑鮮やかなお多福豆。
(枡にお出汁がじっとりと滲みています。お豆は蜜で煮てあり、典雅な軽い甘さ)
「赤鬼麩」=やんちゃな赤鬼の顔に似せたお麩、中に味噌餡入り。(遊び心満点です)
「海老芋寿司」=大和芋を蒸して裏ごし、酢、砂糖、塩を加え、手毬のように丸め、
巻き海老(小さい車海老)を貼り付ける。(海老の鮮烈な赤、お芋の滑らかさ)
「独活甘酢」=ウドを甘酢に漬け、細く切る。(目が覚めるような酸味、とても爽やか)
「穴子入り出し巻き」=穴子を白焼きしてから軽く煮る。
(卵のやさしい感触に、穴子のしっかりした食感、焼いた皮の硬質な味が見事に調和)
「鰯梅香煮」=節分に欠かせないイワシを三枚におろし、梅干で煮る。
(口に含みますと、梅干の軽く若い酸味、つぎに、醤油の逞しく香ばしい風味、そして最後に、
イワシ本来の旨みが、じっくり重厚に染み出してきます。
その余韻がしばらく続きます。
お箸がおのずと止まります。
そして、おもむろに消えていきます。
“人の一生とはこんなものかな・・・”と、目を瞑っている自分にふと、気付きました。
最も感動した一品です)
「ひいらぎ」=柊の小枝が一本刺してあります、厄除け用です。
●【 汁 】 ・檜の四季椀
「菜の花スープ」=菜の花、京人参、牛蒡、蒟蒻、椎茸、白味噌、酒粕。
(立春が旬である菜の花を茹で上げ、それをすり鉢で摺りおろします。
その色鮮やかな菜の花ペーストを、白味噌と酒粕のお汁に混ぜます。
真っ黒いお椀の中は、萌え黄色の大海原でした。
早春が溢れています。
崩れそうに柔らかい真っ赤なニンジン、椎茸や小岩のような蒟蒻たちが泳いでいます。
そんな中、笹がきゴボウのシャリシャリ感と土の香りには参りました。
刃を食べているかのような舌触り。蕎麦の喉切れをさらに鋭角的にした心地いい食感。
視覚を、触感をとことん追求して、異次元の美味に到達する。
「これが割烹である」と理解しました)
●【 洋風盛合わせ 】 ・楕円形の乾漆皿
「合鴨鍬焼き」=アイガモの皮側を焼き、そぎ切りして小麦粉を付ける。
フライパンで焼き、たれを絡める。
(これまでの、軽い品々と比べ、お肉のしっかりした旨みと脂分が、充実感を与えます)
「ししとう」=サッと素揚げ。(鮮やかな緑)
「きざみ野菜」=レタスの細切り。(サクサクとした歯応えの心地よさ)
「芽キャベツ」=半分に輪切り。(緑、黄、白と断面の色彩変化が見事)
「ドレッシング」=経験したことのない軽やかな味。
●【 ご飯 】 ・外周に茶の模様が入った黒の大椀
「芋粥」鼈甲餡かけ=おイモの入ったお粥に、清流で育った芹を細かく刻んで混ぜます。
甘酸っぱい醤油味の餡(ベッコウあん)を、粥にトロリと垂らす。
(白いお粥に描かれるベッコウ色の文様は、琳派の川流れの図のようです。
緑のセリから、早春の香りがプンプン)
★すべてのお料理は、一口で召し上がるそれはそれは可愛い「おしのぎ」ですが、
いただき終わりますと、気持ちのいい腹心地でした。
季節の肌触り、大地の恵みを余すところなく感じさせていただいたお料理でした。
私たちは、なんと豊かな国に生きているのでしょう。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽
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