音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ 私のクリスマス休暇とお正月休み ■■

2007-12-19 23:43:42 | ★旧・ とびきり楽しいお話
■■ 私のクリスマス休暇とお正月休み ■■
2006/12/28(木)

★ことしもあと、数日となりました。

私のことしのクリスマスは、素晴らしいものを二つ観ました。

■【榎並悦子写真展】 Paris ー刻(とき)の面影ー (東京Canon Gallery)

榎並さんは、私の尊敬する写真家・野町和嘉さんの奥さまであり、

ギターの斎藤明子さんのポートレートも撮影されています。

一見、シャンソンが流れるパリのいかにもの写真ですが、

よーく見ますと、人物やパリの建物の窓、ベンチ、空、セーヌ川、エッフェル塔の影、

物乞いをする犬、美女のポッケからひょっこりと顔をだす子犬・・・など

一幅の絵画のような構成感、モノクロームの処理が秀逸でした。

1月には名古屋、2月には大阪のCanon Galleryで、この展覧会を見ることができます。


★人形劇団プークのクリスマス公演【12の月のたき火】を観ました。

スロバキアの民話。吹雪の森に、王様の命令で「イチゴ」を探しに言った少女マルーシャの物語。

1月から12月まで、12人の森の精霊に助けられ、無事にイチゴを見つけ、やさしい青年と結ばれます。

勤労の喜び、継子いじめ、権力者からの無理難題、<見てはいけないものを見てしまった>者の運命。

<約束を守ることによって得る幸せ>は、日本をはじめ世界の民話に伝わっています。

私は、この人形劇を小さいときに観て、このたび、何十年ぶりかで再び観ました。

内容をほとんど覚えていたことに大変、驚きました。

上記のテーマが、どんな人間社会でも起きることだからでしょうか。

森の自然を描写する日本語の科白が、とても美しく、宮沢賢治の詩のようでした。

美しい正確な日本語で、深い内容の物語を、幻想的な人形劇で幼少時に観ることの計り知れない影響。


★客席は100人ほどの小さな劇場でしたが、幼稚園、小学生のお客様たちは、

皆さん実にいい顔をされて、舞台に熱中し、食い入るように観ていました。

この劇場に連れてこようとするお父さん、お母さんの暖かさ、知性が伺われます。

12月23日の東京新聞で、35周年を迎えた「プーク人形劇場」の紹介記事が掲載されました。

「ファンはなかなか増えてこない」

「経営は苦しくなっている。国からは、建物の運営など演劇環境に対する助成が全くない」

私は、子供の心を育てるこのような文化活動こそ、一番求められ、支援すべきことだと思います。


★お正月休暇は、次の2冊を読みたいと思います。

横道萬里雄 著「能にも演出がある」 檜書店

この本の序文である「はじめに」は、含蓄に富む内容です。

要約いたしますと・・・

★能は「舞う」と表現します。舞踊的動作の少ない演目でも「舞う」といいます。

≪俊寛を舞う≫といいますが、歌舞伎の≪寺子屋を舞う≫、狂言の≪棒縛を舞う≫とはいいません。

能には、「型付ケ」という演技譜があり、「型付ケ」どおりに演ずれば、

それで充分という感覚が「舞う」といわせているではないでしょうか。

歌舞伎や狂言は、型そのままになぞっても、さまになりません。

能の鑑賞者は、昔は殿様や、謡や仕舞のお弟子さんが中心であったため、それでよかったのでしょう。

しかし、現在は、演能会の在り方が変わり、観客層も広がっています。

さまになってはいないが、強固な訴えがある能のほうが成功することもありえます。

能役者よ、能を舞うな、能は演ずるものである。


★横道先生は、この序文で、次のようなことをおっしゃりたかったのでしょう。

どんな伝統的芸術でも、時代の変化、要請に敏感になるべきで、変革は必要である。

昔どおりのものを墨守しさえすればいい、という態度からは、創造は生まれない。

型をなぞって舞うだけでは、人々の心は捉えられない。

★「横道先生のように能五流のすべてに通じていらっしゃる方はもう、

いらっしゃらないでしょう」と、いわれています。

※横道先生については、ブログの8月24日「横道萬里雄の能楽講義ノート」でも触れております。


★もう一冊は、東洋文庫「良寛詩集」入矢義高 訳注 

平凡社の新刊です。

漢文で書かれた、良寛さんの飄々とした詩の世界が、現代日本語訳に翻訳されています。

味わい深い詩のひとつをご紹介します。


■私は一生、身を立てようという気にはなれず、

のほほんと天然ありのままの生き方だ

頭陀袋には米が三升

炉ばたには薪が一束

悟りだの迷いだの、そんな痕跡なぞどうでもよい

名声だの利益だの、そんな塵芥なぞ我れ関せずだ

雨ふる夜に苫のいおりのなかで

両の足をのんびりと伸ばす


★皆さま、よいお年をお迎えください。来年が平和で明るい、希望に満ちた年でありますように。



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