音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ノックレベルグの公開講座、シューベルトの連弾曲■

2009-03-30 23:49:26 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■
■ノックレベルグの公開講座、シューベルトの連弾曲■
              09.3.30    中村洋子


★昨日3月29日に、アイナル ステン=ノックレベルグの

リサイタルを聴き、

本日30日、ノックレベルグの「グリーグなど北欧音楽の講演」を

聴いてきました。


★私は、「ナクソス」レーベルから出ています、

グリーグのピアノ全集を、愛聴しております。


★このCDを録音したのが、ノルウェー出身のピアニスト、

ノックレベルグさんで、1944年生まれ、

現在、ドイツのハノーファー音大教授です。


★ノックレベルグさんは、グリーグの音楽を、

勉強する前提として、以下のような、お話をされました。


★19世紀の北欧は、電気も、ラジオも、テレビも、

もちろん、レコードもありませんでした。

でも、多くの家にはピアノがありました。

5、6ヶ月も続く、長い長い冬。

雪に閉じ込められたこの冬の期間、

人々は、ピアノを弾き、聴くことで、

心を、慰めていました。

グリーグの音楽は、そういう世界から、

生まれてきた、ということを、

忘れては、なりません。


★家庭で音楽の楽しみ、といえば、

ピアノ連弾が、あります。

きょうは、シューベルト作曲の連弾曲

「4つのポロネーズ」Op.75 について、

以前に書きましたコンサート・プログラムノートから、

ご紹介いたします。


★シューベルトは1818年夏、ゼレチュ(当時は、ハンガリー領)に、

ありましたエステルハージー伯爵の、別荘で過ごし、

二人の伯爵令嬢の家庭教師を、務めました。

この曲は、ここでの作品です。

映画「未完成交響曲」で、描かれたように、

令嬢が恋人であった訳では、ないようです。


★召使たちの建物のなかに、一室をあてがわれ、窓の外からは、

40羽あまりの鵞鳥の、かしましい鳴き声が、聞こえてきました。

彼の恋人は、可愛らしい小間使いの女性だったようです。

彼の手紙には、「伯爵は、いささか粗野で、伯爵夫人は、

気位が高く・・・(略)令嬢たちは良い子です」と書かれています。


★ポロネーズは、ポーランドの国民的舞曲のことで、

当時の音楽雑誌には「この曲に、本当のポロネーズを、

期待すべきではない。

ポロネーズのリズムによる、極めて独創的な作品で、

大部分は、はなはだメロディー的な、小品である」

という論評が、載っています。


★A・アインシュタインも、「この曲は、小さな詩趣(ポエジー)も

意図したもの」と、書いています。

とても、可愛らしい曲です。


★芸術的な観点とは別に、先生と生徒が2人で連弾する

教育的効果は、大変に大きいものがあります。

先生の演奏に導かれ、合わせることで、

正しいリズム、表現法、強弱などが、

自然に、身に付いていきます。

高度な芸術的表現も、学べます。


★私も学生時代、作曲のレッスンの前に、

まず、モーツァルトやベートーヴェンの交響曲を、

ピアノ連弾用に編曲したものを、先生と一緒に、

よく、弾かせていただいたものです。

シューベルトの、この曲の作曲意図は、

令嬢への、そうした教育的観点も、うかがえそうです。


(写真は、伝通院の本堂から眺める参道の桜)
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