■「 Ries & Erler」 から、私の「Suite für Violoncello Solo Nr.3」が近々出版■
~ ピアノの能力を凌駕した リヒテルの Beethoven 演奏 ~
2013.8.23 中村洋子
★Berlin の音楽出版社 「 Ries & Erler リース&エアラー社 ※」 から、
私の作品 「 Suite für Violoncello Solo Nr.3
無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 が、 近日中に出版されます。
そのため、楽譜の最終チェックや、
8月30日、 KAWAI表参道で開催の
「 Wohltemperirte Clavier Ⅱ平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 」
アナリーゼ講座の準備で、忙しい毎日です。
★2009年に出版されました 「 Suite für Violoncello Solo Nr.1
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 と同様、 Spieltechn、Einrichtung は、
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生が、
快く、お引き受け下さいました。
★Spieltechn、Einrichtung とは、
bowing ボーイング、fingering フィンガリング、
harmonics ハーモニックス、expression エクスプレッション等、
演奏に必要な、ありとあらゆる指示です。
★Maestro マエストロが、渾身の力で、何一つ包み隠すことなく、
すべてを、書き込んで下さいました。
これは、Boettcher 先生の芸術作品ともいえるかもしれません。
Bach の自筆譜から伝わってくるような、迫力があり、感動します。
Boettcher 先生のインタビューが、以下でご覧になれます。
http://www.youtube.com/watch?v=dic4lXlz8tk
★そんな忙しさの最中に、私の Wohltemperirte Clavier
平均律クラヴィーア曲集・アナリーゼ講座の、熱心な受講者の方が、
教会のオルガンで、自ら演奏されました 「 Wohltemperirte Clavier Ⅱ
平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 」 1~12番までの
prelude & fugue の録音を、送ってくださいました。
★Bach への愛情に満ちた、誠実なとても佳い演奏でした。
以前ご紹介しました Afanassiev も、 「 若い人の演奏には、
耳を傾けなさい 」 と、自著で書いています。
このような演奏を聴きますと、希望が湧いてきます。
★ Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集は、
チェンバロ、オルガン、ピアノなど、どの楽器で弾いても、
素晴らしい曲集です。
“ Bach の時代には、ピアノがなかったから、ピアノで弾いてはいけない ”
などと、暗黙の脅しや、圧力を、教条主義的にかける方もいるようですが、
そのような偏狭な考え方の人々は、いつの時代にも存在し、
その種の人は、自由な精神のBach を生涯にわたって迫害し、
苦しめた種類の人々、ともいえます。
★何故、Bachをいかなる楽器で演奏してもいいのか、といいますと、
Bach の音楽は、楽器の特性や響き、音色に頼るような、
か弱い、脆弱な音楽ではない、からです。
ましてや、ドイツの 「 民族音楽 」 でもないのは、自明の理です。
これを、肝に銘じませんと、
勉強方法が、間違った方法へと向かってしまいます。
★前回に書きました Sviatoslav Richter スヴャトスラフ・リヒテル
(1915-1997) の 「1981年 Tokyo recital 東京リサイタル」 は、
私にとって、忘れられない思い出です。
Beethoven ベートーヴェン (1770~ 1827) の
Piano Sonata ピアノソナタ のみの、演奏会でした。
No.6 F-Dur Op.10-2 、
No.7 D-Dur Op.10-3、
No.17 d-Moll Op.31-2 "Tempest"、
No.18 Es-Dur Op.31-3。
★使用されたピアノは、日本製でしたが、
Richter リヒテルの ff に、ピアノが耐えられず、
低音域が割れるような音をたてることが、たびたびありました。
ピアノの悲鳴のように、聴こえました。
★しかし、それは、ピアノの欠陥というより、 Richter リヒテルの能力、
Beethoven ベートーヴェンの音楽の巨大さが、
ピアノの能力を、はるかに上回ったような印象でした。
★それでは、それを聴いていた私が、
不快であったか、といいますと、
全く正反対で、Beethovenの音楽の構造が、
ギリシアの神殿の骨組みのように、浮かび上がり、
叫びだしたい位の感動を、覚えました。
★Bach の音楽も、枝葉末節にこだわり、その結果、
干からびた博物館の、ミイラのような演奏となるのは、
Bach の世界から、最も遠いものです。
★それには、まずなによりも先に、
Bach の自筆譜の勉強が、第一です。
その後、Bartók Béla バルトーク (1881~1945) や、
Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855~1932)の、
校訂本を、構造を読み解くための、
「 道標 」 とするのがよいと、思います。
(※日本ではリース&エルラーと表記されているところもあるようです。)
※copyright © Yoko Nakamura
All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲