音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■「フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集 」を学ぶ意義■

2010-09-20 18:03:13 | ■私のアナリーゼ講座■

■「フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集 」を学ぶ意義■
                                2010・9・20 中村洋子


 

★昨日のブログで、取り上げました

「 フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集

Klavierbuechelein fuer Wilhelm Friedemann  Bach 」は、

手書譜の表紙裏に、「 1720年 1月 22日 」の日付が、

記されています。

この曲集は、バッハは、長男・フリーデマンの教育のために、

編まれたものです。


★長男・ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ

( Wilhelm Friedemann Bach, 1710年11月22日~ 1784年7月1日 )は、

そのとき、満 9歳 2カ月でした。


★ここで、注意しなければならないのは、この曲集は、

フリーデマンが、鍵盤楽器を弾けるようになるために、

編んだ曲集ではない、ということです。


★この曲集は、「 作曲 」 を学ぶために、編まれたものです。

幼少時から、最高の環境で英才教育を受けたフリーデマンは、

当時既に、鍵盤楽器の演奏は、相当なレベルに、

達していた、とみるべきです。

曲集には、父親のバッハと一緒になって、

作曲した作品も、含まれていますが、

鍵盤楽器を、自由に弾けない子供が、

作曲できる曲では、ありません。


★この曲集に、「 平均律クラヴィーア曲集第 1巻 」 の、

前奏曲 1番 ~ 12番 ( 7番を除く ) と、

「 インヴェンションと、シンフォニア 」の、

大半の初稿が、入っています。


★≪ 最終稿である、 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻や、

インヴェンション&シンフォニアを、勉強しさえすれば、

この 「 フリーデマン曲集 」 を、見る必要はない ≫、

と考えるのは、大きな間違いです。


★この初稿と、最終稿とを比較することにより、

バッハが、どれだけ推敲し、飛躍的に内容を豊かにしたか、

それが、手に取るように、実によく分かります。

また、その相違点を、味わうことにより、

あまりにも、耳に慣れ過ぎてしまったこれらの名曲の、

魅力を、再度、新しく発見でき、

新鮮な気持ちで、曲に向き合うことができます。





★また、昨日のブログで書きましたように、

バッハの伝記作者・フォルケルの、明らかな誤りも、

一目瞭然で、判明します。

さらに、フォルケルの伝記本を、無批判に孫引きしている、

日本のバッハ解説本が信頼できるかどうか・・・、ご自身で、

判断することが、可能となります。


★以前は、この 「 フリーデマン曲集 」 が、

ライセンス出版で、入手できましたが、現在は、

信頼できる国内版は、ありません。


★「 ベーレンライターの原典版 」 を、入手され、

まずは、 “ 弾いて、驚き、味わって  ” ください。


★10月8日の、「 カワイ・平均律アナリーゼ講座 」 は、

第 1巻の 「 8番 変ホ短調前奏曲、嬰ニ短調フーガ 」を、

勉強しますが、この曲も、

「 フリーデマン曲集 」 に、収められています。


★「 8番 」 について、「 フリーデマン曲集 」 と、

「 平均律 」 との違いを、学ぶことで、

バッハの秘密を、探ることができます。

アルぺジオの掛け方も含め、アナリーゼ講座で、

詳しく、お話いたします。


★カワイ・表参道の「スタッフブログ」に、私の作品

「 無伴奏チェロ組曲 1番 」 の楽譜案内が、載っております。

http://omotesando.blog.kawai.co.jp/ 

どうぞ、ご覧ください。




                                            ( 無花果、韮花芽、雑草の花 )
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