音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■第13回インヴェンション・アナリーゼ講座は、9月29日(火)&甘納豆■

2009-09-26 01:15:36 | ■私のアナリーゼ講座■
■第13回インヴェンション・アナリーゼ講座は、9月29日(火)&甘納豆■
                    09.9.25  中村洋子


★「インヴェンション&シンフォニア13番」の

アナリーゼ講座の準備で、バッハを集中して、勉強しています。

きょうは、秋風に誘われ、息抜きに、

浅草は隅田川の、吾妻橋を渡り、

本所の街を、散策しました。


★第二次世界大戦の空襲で、壊滅的な被害を蒙った街ですが、

戦後直後に建てられました民家や、町工場もまだ残り、

懐かしい昭和の香りが、漂います。

鉛の活字が棚に、所狭し並んだ印刷屋さんや、

日が暮れても、忙しそうに働く製本屋さんなど、

毎日、こつこつ誠実に仕事をされている姿は、

ある種、バッハの作曲態度と、

重なるものが、あるかもしれません。


★私は、大の和菓子党です。

散策の目的の一つは、「甘納豆」です。

「平野屋」さんという、家族だけで一生懸命になさっている

お気に入りの、小さなお店で求めます。

もちろん、一切、添加物ゼロです。

こちらの「富久花豆」は、絶品です。


★親指の半分ほどはある、大きな黒い花豆、

品のいい軽い甘さ、お口にいれますと、

ほろりと崩れ、豆の香りが、はじけます。

豆が育った大地の、生命力溢れる香りです。

その余韻が、暫く続きます。

これほど、感動するお菓子はあまりないでしょう。


★帰宅後、「富久花豆」をいただきながら、

バッハの自筆譜を、じっくり眺めました。

まるで、バッハ本人からレッスンを受けているように、

いままで気付かなかったこと、分からなかったことが、

雲が晴れるように、見えてきます。

ショパンの自筆譜からも、同様に、見るたびに、

必ず、新しい何かが得られます。


★「インヴェンション13番」は、全体を、

4つの部分に分けることが、できますが、

その第2部分に当たる、6小節目後半から、

13小節目の前半までの左手部分を、バッハは、

≪アルト記号≫で、書き記しています。

第1部分の1小節目から、6小節目前半までの左手部分を、

バッハは、≪バス記号≫で、書いています。


★現在、普及している大部分の楽譜のように、

ト音記号とバス記号の「大譜表」に、書き直してしまいますと、

バッハが、第1部分を「バス声部」、第2部分を「アルト声部」と、

とらえていたことが、見え難くなってしまいます。


★この声部の違いを、どのように、演奏で引き分けるか・・・、

それが、課題となります。

それにつきましては、29日の講座で、詳しくお話いたします。


★また、「インヴェンション13番」と、バッハ作曲の

「ヴァイオリンとオブリガートチェンバロによる6つのソナタ」

との関係や、「シンフォニア13番」と、「フランス組曲」との

共通点につきましても、ご説明します。


★バッハが意図した、インヴェンションの大きな構想のなかで、

私はいま、最後の急な坂を、登っているという印象です。

13、14、15番の3曲の組み合わせで、バッハがこの曲集を、

どうやって、まとめ上げていこうとしたか、ということが、

少しずつ、見えてきました。

この体験を、皆さまと分かち合いたいと、思います。


★写真は、富久花豆(黒)、インゲン豆(白)と山本英明さんの漆盆
「平野屋」さん:東京都墨田区本所3-22-7 03-3622-5244  無休

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