音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■私の「無伴奏チェロ組曲第2番」が、マンハイムで、世界初演されます■

2009-09-11 22:25:20 | ■私の作品について■
■私の「無伴奏チェロ組曲第2番」が、マンハイムで、世界初演されます■
                    09.9.11 中村洋子


★ベルリンにお帰りになった Boettcher ベッチャー先生から、

ご連絡が、入りました。

先ごろ、CD録音をしました私の作品

「Yoko Nakamura : Suite Nr.2 fuer Violoncello solo

 無伴奏チェロ組曲2番 」を、10.Okt.2009 、

10月10日、ドイツの Mammheim マンハイムで、

「World Premiere 世界初演」してくださることが、

決まったそうです。


★今回の来日中には、ソプラノのベーレンス先生が急逝され、

さらに、ベッチャー先生が、とても信頼されている

お弟子のチェリスト、Ansgar Schneider 

アンスガー・シュナイダーさんの奥様が、亡くなられ、

とても、心を痛めていらっしゃいました。


★シュナイダーさんは、ボン生まれ、1980年から、

the Radio Symphony Orchestra in Stuttgart の 、

principal cellist を、務めています。

同じく、ベッチャー先生の弟子であるWen-Sinn Yang さんと、

シュナイダーさん、ベッチャー先生との3人で、「cello trios」

というCD( telos music=www.telos-music-records.com )を、

出されており、私の愛聴版です。


★ベートーヴェン、コダーイ、クレム、テレマンなどの

三重奏が収録され、そのなかで、6分ほどの短い曲の

「Alessandro Stradella アレッサンドロ ストラデッラ

(1642~1682)の  Aria di Chiesa 」は、息を呑む美しさです。

ヴィブラートや、フレージングは、3人の見分けができないほどです。

信頼しあった芸術家同士の、アンサンブルとは、

こういうものなのでしょう。


★ベッチャー先生の帰国後、6番目のお孫さんが生まれ、いまは、

幸せをしみじみと、感じていらっしゃるご様子。

幸せといえば、シューベルトの「即興曲 Op90」の2番と4番は、

3部形式(AーBーA)で書かれており、Aの部分は、聴き方によっては、

“幸せな音楽” ともとれますが、この4つの即興曲は、

4楽章形式のソナタと同じく、第1楽章のモティーフが、

全楽章にわたって、展開されています。


★第1楽章のモティーフは、以前に書きましたように、

同時期に作曲された歌曲集「冬の旅」と、

緊密な関係を、もっています。

「嘆き」の「2度音程」や、「疎外感」や「孤独」を表現する

「3度音程」などが、「冬の旅」と「即興曲」では、

とてもよく似た使い方が、されています。


★長調で、明るくみえる部分でも、

死を間近にしたシューベルトが、無意識のうちに、

実は、深い孤独や嘆きを、予言のように、

感じていたように、とれます。


★私は、この即興曲を、小学生の時、ピアノ発表会で弾きました。

もちろん、なにも分からず、ただ美しく、

とてもメカニックに指を動かす曲、という印象でした。


★大学生の時、再度、勉強しましたが、曲の難しさのみ強く意識され、

それに親しみ、十分理解するには程遠かったように思われます。

その後、シューベルトの歌曲や室内楽、オーケストラ曲を勉強し、

自分で、たくさん曲を書いて、やっとシューベルトの全体像が、

朧気に、見えてくるようになりました。


★このように、子ども時代や若いころ、十分理解できなくても、

名曲を、何度も何度も繰り返して勉強することが、

将来、その曲を理解する、一番の近道です。


★近ごろ、小学生のピアノレッスンで、口当たりのいい、

映画音楽や、一流の作品とはいえないピアノ曲を与え、

ある種、子どもに迎合する傾向も、見受けられるようです。

一番記憶力があり、好奇心に満ちた子ども時代にこそ、

真の名曲に取り組むことが、その子供にとって、

ピアノ教師からの、最大の「プレゼント」といえます。



★9月13日のカワイ・アナリーゼ講座では、

「シューベルト即興曲Op90」の2番、4番を取り上げ、

「冬の旅」の主要モティーフ、との関連も含め、

シューベルトの即興曲が、どんなに深い内容であるのか、

どう、勉強したらいいのかを、お話したいと思います。

    
                        (ミズヒキ草など)
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