■野町和嘉さんの写真展「聖地巡礼」、日本の歪みを映す鏡■
09.4.12 中村洋子
★私の大好きな写真家・野町和嘉さんの写真展「聖地巡礼」が、
恵比寿・東京都写真美術館で、開かれています。
メッカの「カーバ神殿」での、イスラム巡礼者の、
撮影に関する、随筆を読んでから、ファンとなり、
品川での写真展「地球巡礼」(2005年)で、
初めて、本物の彼の作品に、触れることができました。
★その折、一時間ほど、写真を一つ一つご説明してくださり、
その暖かなお人柄と、日本の尺度には入りきれない真の、
国際的な芸術家であることにも、心を打たれました。
また、偶然にも、野町さんの奥様・榎並悦子さんが、
ギターの斎藤明子さんの、プロフィール写真を、
撮影されていることを知り、驚きました。
★昨11日は、野町さんが会場で直接、
解説される日でしたので、楽しみにして、
見に行って、まいりました。
★野町さんはこれまで、インドの取材を、
「とても、太刀打ちできない」と、避けられていたそうですが、
5年前から、やっと取材を始め、精力的に訪れているそうです。
★この写真展の中心は、そのインド、インドのガンジス河、
聖なるガンジスへと巡礼する、何億人もの人々の群れです。
シバ神を信仰する人々は、ガンジスの聖水に身を浸し、
沐浴することで、罪が清められ、遺灰を流すことで、
天国に生まれ変わると、信じています。
★ガンジス河は、ヒマラヤ氷河から、
2500キロを流れ、ベンガル湾に注ぎます。
その途中に、たくさんの聖地があります。
12年に1回の「クンプ・メーラ」という祝日は、約1ヵ月続き、
1日だけで1800万人、総計、何億人もの巡礼者が、押し寄せます。
インド最大の、国民的行事だそうです。
★写真は主に、ヒマラヤとベンガル湾との中間にある、
ガンジス河畔の「アラハバート」と、
「バラナシ」という聖地で、撮影されています。
★未明のガンジス河、野球のナイターのような照明が、
ギラギラと川面に反射、川岸には、ウンカかアリの集団のように
くすんだターバンやサリーの民衆が、夜明けを待っています。
無限大の果てまで、同じアリのような集団が、
米粒のように、写っています。
★チケットの写真は、極彩色のサリーを纏った女性たちが、
小船に満載されて、上流のシバ寺院に、向かう光景です。
未明の、出立です。
★圧巻は、「サードゥー」という世俗と断縁した、
行者になる人々の、入門式の光景。
頭を丸め、ほぼ全裸。
壮年から老人まで、さまざまな人たち。
お団子をこねて作り、それを河に流します。
「ピンダ」というお団子は、普段は、死者の弔い用。
ここで、家族や俗世間との訣別をするのです。
自分の“葬式”を、出しているのです。
それ以降、祈りと托鉢の日々に入ります。
★聖なる日の沐浴は、このサードゥーが何十万人も、
裸で行進して、信者を先導して、河に入ります。
★サードゥーは、死して火葬されず、
河に、流されます。
そして、その遺骸が岸辺に流れ着きますと、
犬たちが、生の輪廻で、それを食します。
その川辺の光景、犬たちの写真は、
不思議な静けさを、もっています。
残酷さとは、異質の世界です。
★野町さんの平易な言葉は、写真と同じ様に、
力があり、聴く人の心に残ります。
印象に残った言葉・・・。
★≪「祈り」つまり、宗教とは、家族の絆のようなもの。
絆はとても強く、深いところで、安心感がある。
支えあっている、ということかも≫
祈りと托鉢の日々の、サードゥーという行者は、
自分の家族より、もっと大きな“家族”が、
支えてくれる、という安心感が、根底にあるから、
托鉢によって、生命を保つことができ、
そして、祈りによって、精神の高潔さを、
保ってことが、できるのでしょう。
★≪日本も50年ほど前は、そういうウェットな家族関係が、
ありましたが、これから、そういうものに、
向き合っていく必要が、あるのかもしれませんね≫
★≪巡礼者は、何日も何日も歩き、そして河に入り、
沐浴して、祈りを捧げる。
それが終わると、さっさと、帰る。
巡礼者が手にしたものは、達成感だけ、ただそれだけ。
だから、尊いのです≫
★≪インドは、ベジタリアンが約半分、
不殺生が行き届いている≫
★≪イランは、30年間、アメリカと敵対しています。
グローバリゼーションという言葉で、世界中が、
単一化されようとしていますが、
イランは、アメリカとの敵対のおかげで、
美しい文化が残り、自爆テロもなく、
経済も、ダメージ受けていない。
一方、同じイスラムのドバイは、
お金によって、すべてが変わり、いまは、ガタガタ≫
★野町さんは、「グローバリゼーション」の
中身を、具体的には、おっしゃいませんでしたが、
お金儲け最優先、経済成長至上主義、
弱者切捨て、すべては自己責任、
そういう特異な、価値観のことでしょう。
それに、どっぷりと浸かり、絡め捕られ、
しかも、それを自覚していない日本。
どんなに歪んでいるかを、巧まずに、
映し出してくれる鏡が、野町さんの写真、
ということが、できるでしょう。
★写真展は、東京・恵比寿の「東京都写真美術館」で、
5月17日まで。
野町さんの解説がある日は、4月25日、29日、
5月2.3.4.5.16.17の各日、いずれも午後2時から。
★4月18日(土)、NHK「お早う日本」首都圏ジャーナルで、
この写真展と野町さんの解説が、放映されます。
(写真は、写真展のチケット)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
09.4.12 中村洋子
★私の大好きな写真家・野町和嘉さんの写真展「聖地巡礼」が、
恵比寿・東京都写真美術館で、開かれています。
メッカの「カーバ神殿」での、イスラム巡礼者の、
撮影に関する、随筆を読んでから、ファンとなり、
品川での写真展「地球巡礼」(2005年)で、
初めて、本物の彼の作品に、触れることができました。
★その折、一時間ほど、写真を一つ一つご説明してくださり、
その暖かなお人柄と、日本の尺度には入りきれない真の、
国際的な芸術家であることにも、心を打たれました。
また、偶然にも、野町さんの奥様・榎並悦子さんが、
ギターの斎藤明子さんの、プロフィール写真を、
撮影されていることを知り、驚きました。
★昨11日は、野町さんが会場で直接、
解説される日でしたので、楽しみにして、
見に行って、まいりました。
★野町さんはこれまで、インドの取材を、
「とても、太刀打ちできない」と、避けられていたそうですが、
5年前から、やっと取材を始め、精力的に訪れているそうです。
★この写真展の中心は、そのインド、インドのガンジス河、
聖なるガンジスへと巡礼する、何億人もの人々の群れです。
シバ神を信仰する人々は、ガンジスの聖水に身を浸し、
沐浴することで、罪が清められ、遺灰を流すことで、
天国に生まれ変わると、信じています。
★ガンジス河は、ヒマラヤ氷河から、
2500キロを流れ、ベンガル湾に注ぎます。
その途中に、たくさんの聖地があります。
12年に1回の「クンプ・メーラ」という祝日は、約1ヵ月続き、
1日だけで1800万人、総計、何億人もの巡礼者が、押し寄せます。
インド最大の、国民的行事だそうです。
★写真は主に、ヒマラヤとベンガル湾との中間にある、
ガンジス河畔の「アラハバート」と、
「バラナシ」という聖地で、撮影されています。
★未明のガンジス河、野球のナイターのような照明が、
ギラギラと川面に反射、川岸には、ウンカかアリの集団のように
くすんだターバンやサリーの民衆が、夜明けを待っています。
無限大の果てまで、同じアリのような集団が、
米粒のように、写っています。
★チケットの写真は、極彩色のサリーを纏った女性たちが、
小船に満載されて、上流のシバ寺院に、向かう光景です。
未明の、出立です。
★圧巻は、「サードゥー」という世俗と断縁した、
行者になる人々の、入門式の光景。
頭を丸め、ほぼ全裸。
壮年から老人まで、さまざまな人たち。
お団子をこねて作り、それを河に流します。
「ピンダ」というお団子は、普段は、死者の弔い用。
ここで、家族や俗世間との訣別をするのです。
自分の“葬式”を、出しているのです。
それ以降、祈りと托鉢の日々に入ります。
★聖なる日の沐浴は、このサードゥーが何十万人も、
裸で行進して、信者を先導して、河に入ります。
★サードゥーは、死して火葬されず、
河に、流されます。
そして、その遺骸が岸辺に流れ着きますと、
犬たちが、生の輪廻で、それを食します。
その川辺の光景、犬たちの写真は、
不思議な静けさを、もっています。
残酷さとは、異質の世界です。
★野町さんの平易な言葉は、写真と同じ様に、
力があり、聴く人の心に残ります。
印象に残った言葉・・・。
★≪「祈り」つまり、宗教とは、家族の絆のようなもの。
絆はとても強く、深いところで、安心感がある。
支えあっている、ということかも≫
祈りと托鉢の日々の、サードゥーという行者は、
自分の家族より、もっと大きな“家族”が、
支えてくれる、という安心感が、根底にあるから、
托鉢によって、生命を保つことができ、
そして、祈りによって、精神の高潔さを、
保ってことが、できるのでしょう。
★≪日本も50年ほど前は、そういうウェットな家族関係が、
ありましたが、これから、そういうものに、
向き合っていく必要が、あるのかもしれませんね≫
★≪巡礼者は、何日も何日も歩き、そして河に入り、
沐浴して、祈りを捧げる。
それが終わると、さっさと、帰る。
巡礼者が手にしたものは、達成感だけ、ただそれだけ。
だから、尊いのです≫
★≪インドは、ベジタリアンが約半分、
不殺生が行き届いている≫
★≪イランは、30年間、アメリカと敵対しています。
グローバリゼーションという言葉で、世界中が、
単一化されようとしていますが、
イランは、アメリカとの敵対のおかげで、
美しい文化が残り、自爆テロもなく、
経済も、ダメージ受けていない。
一方、同じイスラムのドバイは、
お金によって、すべてが変わり、いまは、ガタガタ≫
★野町さんは、「グローバリゼーション」の
中身を、具体的には、おっしゃいませんでしたが、
お金儲け最優先、経済成長至上主義、
弱者切捨て、すべては自己責任、
そういう特異な、価値観のことでしょう。
それに、どっぷりと浸かり、絡め捕られ、
しかも、それを自覚していない日本。
どんなに歪んでいるかを、巧まずに、
映し出してくれる鏡が、野町さんの写真、
ということが、できるでしょう。
★写真展は、東京・恵比寿の「東京都写真美術館」で、
5月17日まで。
野町さんの解説がある日は、4月25日、29日、
5月2.3.4.5.16.17の各日、いずれも午後2時から。
★4月18日(土)、NHK「お早う日本」首都圏ジャーナルで、
この写真展と野町さんの解説が、放映されます。
(写真は、写真展のチケット)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲