音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■第9回 インヴェンション講座のご案内、“曲集の頂点をなす第9 番『ヘ短調』”を分析■

2009-04-05 17:52:36 | ■私のアナリーゼ講座■
■第9回インヴェンション講座のご案内、“曲集の頂点をなす第9 番『ヘ短調』”を分析■

                09.4.5    中村洋子


★バッハ・インヴェンション講座も、

3分の 2の道のりに、さしかかりました。

西洋クラシック音楽では、曲の 3分の 2 のところに、

クライマックスを置くことが、よくあります。

ソナタ形式ですと、ちょうど、展開部が終わり、

再現部に、入るところです。

このインヴェンション、シンフォニアとも、

バッハは、曲集としての大きなクライマックスを、

この 9番に置いている、と私は考えます。


★バッハの書いた受難曲では、ちょうど、

キリスト受難の場面に重なります。

この観点から、8番と 9番との関係、

また、10番からどのように新しい世界が開けるか、

についても、お話いたします。


★インヴェンションの 9番は、

嘆き(エスプレッシーヴォ)の歌。

シンフォニアの 9番は、印象的な半音階のバスに、

歩行の音形がかぶさり、沈痛に曲が始まります。


★しかし、深い内容ですので、

“子どもに与えるには早すぎる” というのは、

大きな、間違いです。


★宗教的な意識の有無を問わず、バッハの音楽は、

人類共通の、普遍の感情を表現していますので、

誰が弾いても、美しく深く、

音楽の真の喜びを、味わうことができます。

人類にとって、かけがえのない宝物なのです。


★レッスンを始めてから、間もないお子様にも、

無理なく弾けるよう、どのように指導したらいいか、

バッハのカンタービレ奏法とは、何か、

ソルフェージュに、どのように応用できるか、などを、

分かりやすく、ご説明いたします。


★バッハ(1685~1750)は、

「インヴェンションとシンフォニア」の序文(1723)で、

次のように、この曲集の意図を説明しています。

(以下は、私が意訳して、分かりやすく書きました)


★クラヴィーアのLiebhabern=amateur(愛好家)特に、

 それを真剣に、学びたいと思っている方にとって、

 この曲集は「Auffrichtige Anleitung

 =Honest method (誠実に筋道を教える手引)」です。

 まず、

・二声部を、はっきりと演奏することを学びます。

・そのうえ、さらに上達することを目指して、

・記譜されている三声部を、すべて正確に、かつ、

 上手に、演奏できるようにします。

・同時に、優れた着想(インヴェンション)を、

 得ることが、できるようにします。

・さらに、それを巧みに展開し、特に、
 
 カンタービレ奏法を、身につける

・将来、作曲をする際に味わうであろう、
 
 (その苦楽を)事前に、十分に積極的に体験する。


★このように、出版の目的を書いています。

今回の私のシリーズでは、

二声のインヴェンションを、全部終わってから、

三声のシンフォニアに、入るのではなく、

二声と三声の同じ調の曲を、同時に、

学んでいく、という方法をとります。


★曲の構成を詳しく理解することによって、

バッハを弾くことが、さらに喜びに満ちたものとなり、

自信をもって弾くことが、可能になります。


★日時: 2009 年4 月24 日(金)午前10 時~12 時30 分

★会場:カワイ表参道2F コンサートサロン「パウゼ」

★会費:3000 円 (要予約)

★参加ご予約・お問い合わせは

 カワイミュージックスクール表参道

 Tel.03-3409-1958 omotesando@kawai.co.jp



■第10 回は、5月 21日(木)インヴェンション第10 番、

  シンフォニアの第10 番のト長調です。

■第11 回は、6月 23日(火)インヴェンション第11 番、

  シンフォニアの第11 番のト短調です。

■特別アナリーゼ講座 6月 7日(日)「前奏曲とは何か(仮題)」


(写真は、海棠の蕾です)
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