音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 行く春を近江の人とおしみける & グリーグの舞曲 ■

2009-04-01 23:32:18 | ■私のアナリーゼ講座■
■ 行く春を近江の人とおしみける & グリーグの舞曲 ■
              09.4.1  中村洋子


★私の好きな句に、

「行く春を近江の人とおしみける」(芭蕉)が、あります。

「奥の細みち」の長旅を、大垣で、終えた芭蕉が、

すぐには、江戸に戻らず、琵琶湖の南の

「湖南地方」で、芭蕉に心酔していた弟子たちと、

春を、惜しんだ句です。


★きょうは、夜に入ってから、雷が東京で鳴り響きました。

春雷の冷たい雨を前にして、夜桜の見物を、

諦めた方も、たくさん、いらっしゃったことでしょう。


★2日前に聴きました、ノックレベルグ先生の、

「北欧音楽の講座」についての、私の感想の追加です。


★先生は、「グリーグ」の舞曲の演奏法のなかで、

「Sprung Tanz(ジャンプするようなダンス)という3拍子の、

2拍目は、Schlag und lange で奏するように」と、おっしゃいました。

「Schlag」は、英語の「 blow」 と同じで、

「打撃、一撃、(打撃などの)物音」、という意味です。


★その意味は、「強い一撃を与え、その音をそのまま、伸ばす」

というのが、適切であると思います。

残念なことに、通訳の日本人ピアニストの方は、それを、

「2拍目に重みがあります」と、訳されていました。

もし、この日本語訳だけでメモを取っていた場合、

2拍目を、ただ重くするだけの演奏ということになり、

ジャンプするような「Sprung dance」 の音楽を、

うまく、表現することができないのでは、

と危惧いたします。


★また、先生が「ジェズアルド(イタリアの作曲家、1566~1613)の

マドリガルにも、このような増音程があります」とおっしゃった際、

通訳の方は、「ジェズアルド」を、ご存じなかったようで、

「マドリガルという“楽器”にある・・・」と、

妙な訳をされていました。


★通訳をする際、分からないところがあれば、

再度、先生に疑問点を尋ね、正確な訳を心がけることが、

必要である、と思います。

そうすることが、先生にも講座の聴衆に対しても、

礼儀であるでしょう。


★「Schlag und lange」 は、

ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」の

第1番プレリュードにも、応用できます。

この曲も「組曲」ですから、広い意味で、

舞曲のように、扱うことも可能です。


★第1小節の4拍子の、1拍目と2拍目のアクセントを、

「Schlag und langeに」弾きますと、

3拍目のスフォルツァンドが、

活き活きと、効果的に、

無理なく演奏できます。

是非、お試しください。


(写真は、クロモジの花と新芽)
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