ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

プルジャヌィ児童図書館で「ごんぎつね」が紹介されました

2016-12-02 |   新美南吉
 先日新美南吉ロシア語童話集「ごんぎつね」を寄贈したプルジャヌィ児童図書館から、地元の子どもたちに南吉童話について紹介してほしいと依頼されました。
 正直言って寄贈するまで「プルジャンヌィってどこにあるの? ルジャンヌィなら知っているんだけど。」という低レベルの知識だった私ですが、電車を乗り継ぎ行ってきました。

 プルジャンヌィはブレスト州にあり、意外と歴史のある町でした。1487年には街として機能しており、16世紀にはイタリアの王族の血を引き、ポーランド国王と結婚したボナ・スフォルツァの統治下にありました。
 その娘アンナはポーランド・リトアニア共和国の女王になりますが、プルジャヌィの町の紋章として、母方の実家であるスホルツァ家の紋章に少し手を加えたものを与えました。
 要するに今はベラルーシにある町、プルジャヌィですが、中世にはイタリア貴族の流れを汲む紋章をもらっていたということです。

 これがその紋章なのですが、最初見たとき「どうしてこういうデザインなの?」と思う紋章ナンバーワンです。(私の中で。)
 イタリア王族、そしてポーランド・リトアニア共和国の女王ゆかりの紋章なので、蛇の頭の上に王冠が載ってるのは理解できるのですが、この飲み込まれている人は・・・「赤ちゃん」だそうです。

 難しすぎる、スフォルツァ家の人々・・・。
 
 気になったのでごんぎつねそっちのけで、今調べたのですが、もともとこの蛇の紋章はイタリアのヴィスコンティ家の紋章に使われており、親戚の関係であるスフォルツァ家も少々デザインを変えて使うようになりました。
(日本でも分家が本家の家紋の陰紋を使うことがあったのと同じような感覚ですね。)

 このヴィスコンティ家の紋章に描かれているのは大蛇あるいは竜だそうですが、は、昔ヴィスコンティ家の人が竜に襲われそうになっている子供を助けたという話に由来しているという説があるそうです。
 やっぱり子どもなんですね。そして助かっていたんだ。よかった。

 もう一つの説は、また飲み込まれているのは子どもではなく回教徒であるサセラン人で、竜はヴィスコンティ家の祖先の化身であるとする言い伝えもあるそうです。
 先祖が異教徒を食べちゃっている図、ですね・・・。
 
 さらにはこの大蛇は旧約聖書に出てくるレヴィアタンと同じ、という説もあります。
 (私の頭の中ではレヴィアタンは、水木しげる先生が描いていたワニみたいな妖怪・・・。)

 話をごんぎつねに戻します。
 プルジャヌィには3つの図書館があり、そのうちの児童図書館の司書さんの依頼により、3年生と6年生の40人ほどの小学生に新美南吉の紹介、「ごんぎつね」のロシア語訳の朗読、それからきつねの折り紙を作りました。
 その前には館長さん自ら日本についての説明をしてくれました。
 よく分かったのはベラルーシ人の子どもはみんな日本のアニメが好きだということ、でも地震や津波は怖いと思っていることでした。

 すでに本を寄贈していたので、「ごんぎつね」を読んでいた人もいましたが、今回初めて朗読を聞く子どもが多く、兵十が火縄銃を出したあたりから、みんなすっかり静まり返ってしまっていました。
 多くの子どもが「ごんが死んじゃってかわいそう。」と話していましたが、担任の先生は、この話が日本の小学校4年生の国語の教科書に載っているという話を聞いて、
「10歳の子どもにこの話の内容は難しすぎる。」
と言っていました。
 言い換えれば、日本の小学生4年生のレベルは高い、と褒めています。

 ごんが死んでしまってしょんぼり、でしたが、折り紙できつねを作ったら、みんなにこにこしていました。
 3年生は早めに帰ったのですが、6年生の女の子たちにきつねの折り紙に名前を日本語で書いてあげたら、大喜びで日本語を勉強して日本に行きたい!と大騒ぎでした。

 会場にはちゃんと南吉さんの写真も飾られていました。
 日本の方が作ってくれた立体折り紙のふくろう、ロシア語で書かれた日本を紹介する雑誌などもこの図書館に寄贈しました。折り紙のふくろうを作ってくださった方に感謝しております。またベラルーシの図書館に羽ばたいていきました。
 
 今回の朗読会ですがプルジャヌィの皆さんに喜んでもらえてたようでよかったです。
 南吉さんの生家の生業である下駄や畳(と言っても本物ではなく、ランチョンマット)も見せながら説明しましたが、下駄イコール木の靴、と思ったらしく、みんなびっくりしていました。叩いて硬さをチェックする人もいました。

 司書さんたちと話し合って、プルジャヌィ周辺の図書館にも「ごんぎつね」を寄贈することになりました。
 
 意外と大都市より、地方都市のほうがベラルーシ人は外国文化に対して心を開いている場合が多いですよ。

 この図書館で「ごんぎつね」を初め、他の南吉童話にも地元の子どもたちが触れてほしい、いや、そうなるだろうと思いました。
  

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