ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

「ビートたけしの独裁国家で何が悪い!?2」取材の経緯 その1

2008-09-20 | ベラルーシ生活
 日本テレビで放映された番組「ビートたけしの独裁国家で何が悪い!?2」での、取材の経緯、裏話についてです。

 8月8日午後、出勤すると、勤務先である日本文化情報センターが入っているミンスク市立第5児童図書館の副館長さんから言われました。
「ロシアのテレビ局を名乗る女性から、2回電話がかかってきて、日本文化情報センターの代表(つまり私のこと)がいないか探してたわよ。」

 ベラルーシじゃなくて、ロシアのテレビ局が私にモスクワからわざわざ電話してくるなんてなんだろう? と思っていると、しばらくしてその人から電話がかかってきました。
 実はロシアのテレビ局ではなく、日本のテレビ局がロシアの会社を通じて電話をしてきていたのです。
 モスクワからリサーチしてきたロシア人がまず在ベラルーシ日本大使館に連絡し、ベラルーシに住んでいる日本人のことを尋ねて、日本文化情報センターに電話してきたのでした。

 そのときのこのロシア人からはこういう話でした。
「日本のテレビ局が、ベラルーシのことを紹介する番組を撮影しようとしています。それで、ベラルーシに住んでいる日本人を探しています。取材をしてもいいですか?」
それで私が
「ええ? ベラルーシの何を紹介するんですか?」
と質問すると
「ベラルーシの社会とか、文化とか。」
「それはいいことだと思いますけど、どうして私が取材に協力するんですか? 私は日本人なんですよ。ベラルーシの文化を紹介したいなら、ベラルーシ人にインタビューしたりするほうがいいと思いますけど・・・。」
「ベラルーシ人は日本についてどう思っているんでしょうか? 日本文化に対する関心が増えてきていると思いますが・・・。」
「ああ、それはそうですね。」
「なので、『日本のことが好きなベラルーシ人』を日本のテレビで紹介したいのです。」

 今から考えると、大嘘ですね、これ。
 リサーチをしている人は、他にもベラルーシで空手や柔道をしているベラルーシ人を知りませんか? とか、ベラルーシで日本語を学んでいる学生にもインタビューして、「日本のどこに興味がありますか?」といった質問をして、日本語で答えてほしいと思っている、と私に話しました。

 私は大学に関しては、
「大学所在地などはすぐに調べられるけど、今は夏休みだからすぐに日本語専攻学生が見つかるかどうか・・・。日本語の先生にきいてみてください。」
とアドバイスしました。
 そして、私には日本文化情報センターに日本びいきのベラルーシ人や、かわいい小学生を集めておいてほしい、と頼んできました。
 しかし、やはり夏休みの最中なので、みんなバカンスを取って、どこかへ行ったりしているし、小学校も先生がいないから、連絡が取れないので、集められないと断りました。
 
 今から考えれば、無理してベラルーシ人を集めなくてよかったあ・・・
 駆けずり回って、ベラルーシ人の中高生を20人集めて、日本のテレビ局が撮影して、実際の放映ではものの見事にカットされたという、不愉快な経験があるのです。
 なので、「夏休みなので無理です。」と繰り返して、今回は断ったのです。(大正解でしたね。)

 でも、「日本が好きなベラルーシ人」がテーマで、日本文化情報センターを撮影しているのに、日本人の私が一人ぽつんといるだけでは、おかしい、というのは分かります。なので
「うちの子(6歳)なら、間違いなく連れて来れますけど。」
と言うと、その人は
「ぜひ、お願いします!!! でも、できたらもう少し日本好きベラルーシ人がいたら、いいと思いますけど、子ども一人でもいいのかどうか、取材スタッフにきいておきます。撮影は8月14日になりますが、時間は前々日に連絡します。」
ということで、電話は切れました。

 さて、撮影前々日、撮影の時間を知らせる電話がモスクワからかかってきました。時間を伝えるとそのリサーチのロシア人は、それではよろしくとさっさと電話を切ったので、
「ああ、他にベラルーシ人を呼んでこなくてもいいんだ。うちの子だけ連れて行こう。」
と思いました。
 日本が好きなベラルーシ人のために日本文化情報センターで、働く私にインタビューするのだ、と思っていたので、撮影当日は自分は着物を着て、子どもには浴衣を着せて、センターで待っていました。

 時間になるとプロデューサーの後藤氏、撮影する2名のスタッフ、ロシア人通訳の女性がやってきました。
 そこで、初めて後藤氏から私は「ビートたけしの独裁国家で何が悪い!?2」のことをきかされたのです!!!
 話が全然違う! 
 しかし、幸い私は「ビートたけしの独裁国家で何が悪い!?」という番組が1年前に放映されていたことを、ネットで偶然見つけており、内容を多少は知っていたのです。

 また後藤氏からは、独裁国家から日本が学ぶべきものはないか、というまじめなテーマ(でもくくりはバラエティー番組・・・)ですと説明を受けました。
 ベラルーシという独裁国家に住む日本人としての視点から、この国のことを話してほしい、と頼まれたので、取材を受けることを承諾しました。

 後藤氏は
「ベラルーシは美人の国と言われていますが・・・」
と話し始めたので
「また、そういう切り口で報道するんですか? つまらないから、やめてくださいよ。『世界一美人が多い国』なんて、まちがいだと思いますけど。」
と私が言うと「え、そうなんですか?」と驚くので
「そんなこと、言ってるのは日本人だけですよ。世界一美人が多い、なんて誰が決めているんですか? まあ、そういうことに関しての私の意見は自分のブログに書いてますけど。」
と話し、
「今はネットがあるから、テレビが一方的に発信した情報に対し、一般庶民も自分の意見を表現できるし、便利な時代になりましたね。」
(前にフジテレビが取材に来たときは、夫の職場を撮影したのに、放映では「フリーター」と紹介したのが、一番不愉快だった。でもHP『ベラルーシの部屋』で、私が「訂正」しております。)
 そういう『間違いと訂正』はネット上でできるし、1回放映して終わりのテレビ番組と違って、ネットだと長期にわたって文章が読まれるのが長所。今回の放映に関しても内容に間違いがあったら、自分のブログ上で訂正させていただきますので、と後藤さんには直接言っておきました。
 代わりに、事前に放映日時など、ブログで宣伝しますよ、と言ったら後藤さんは「ありがとうございます。」と言っていました。

 さて、なぜか後藤氏は撮影するとき、センターにベラルーシ人がいないとだめなので、誰でもいいからベラルーシ人の同僚の人や、図書館の来館者をつれてきてほしいと頼んできました。
 こういうことは、早めに言っておいてもらわないと困るのに・・・
 案の定、図書館員さんたちは、いきなり
「日本のテレビに出てくれませんか。」
と頼まれて
「急にそんなこと言われても・・・。今日は服が・・・髪型が・・・」
と嫌がりました。私も無理に頼みませんでした。
 うちの子じゃだめなんですか? と後藤氏にきくと、浴衣を着ていてベラルーシ人っぽくないし、それより、私とベラルーシ人同僚が仕事をしているシーンが撮りたい、と言われました。

 結局、ロシア人通訳さんが説得して、副館長さんが取材に協力することになり、さらにたまたま本を借りにきていた女性(その小学生の子どもは嫌がってセンターに来ませんでした。)と男子高生を何とか副館長さんが説得して、撮影に応じてもらうことになりました。
 センターでは机の上にロシア語とベラルーシ語に翻訳した日本の絵本を並べて、みんなが周りに座り、適当にしゃべってほしい、と言われました。
 それで私が、副館長さんたちに「前から日本の絵本を翻訳しているんですけど、今では40冊以上になりました。」とか「日本語のオリジナル文章も読めるようにしています。」とか適当にしゃべりました。

 その様子を撮影した後、来館者の二人にインタビューがありました。
「日本の絵本の感想は?」
女性「日本の絵本でも子どものために、きれいな絵を使ったり、字を大きく印刷したりして、配慮が行き届いていますね。」
高校生「日本語は難しそう。一生かかっても分かるようになるとは思えないし、習いたいとも思わない。」
 などなどインタビューに応じてくれました。(うちの子は「私にはどうして何もきかないの?」と納得しかねる様子だった。)
 今から考えれば、被害者が2人だけでよかった・・・
 大勢ベラルーシ人を引っ張ってきて、インタビューをして、結局全部カットされてたら、私はその後、図書館で針のむしろですよ・・・

 ちなみに、これらのベラルーシ人へのインタビュー(質問と答え)は全て私が通訳しました。
 ロシアから来た通訳の女性は、私がロシア語ができるから、自分は撮影の邪魔にならないよう、別室にいました。
 その間、その人が退屈しないように、チロ基金のパンフレットや日本文化情報センター関連の記事が掲載された新聞記事のコピーなどを渡していました。

 細かいことは言いたくないですが、私も通訳をしているのに、それ対する労働への賃金(通訳料)は全くもらっていません。
 通訳として雇われているロシア人女性は、センターでは通訳の仕事はしませんでした。

(その2に続く)

この記事についてブログを書く
« 取材協力者の名前も明示しな... | トップ | 「ビートたけしの独裁国家で... »

ベラルーシ生活」カテゴリの最新記事