ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

新しいチロ基金の活動 「日本児童文学コレクション」

2009-04-18 | チロ基金
 2009年、日本文化情報センター開設10周年にあたり、新しいチロ基金の活動「日本児童文学コレクション」を始めました。
 日本の最近の作家(村上春樹など)や日本昔話など必ず売れる、あるいはいつの時代でも必要、とされる日本文学は常にロシア語に翻訳され、ベラルーシの書店にも並んでいます。

 しかし、日本児童文学書は私が知っている限り、ベラルーシでもロシアでも、ロシア語訳の新書、あるいは再版ですら、ここ20年ほど出版されていません。
 売れるか売れないか?が翻訳するかしないか、の判断基準ではなかったソ連時代(50年代から90年代)に、約20冊の日本児童文学がロシア語に翻訳され、ロシアで出版されました。その多くは最近再版されることなく、図書館で貸し出しされ続け、現在保存状態が危機的状況です。

 例えば、日本文化情報センターのあるミンスク市立第5児童図書館には、4種類の日本児童文学書のロシア語版がありました。
 そのうちの1種、「1945年8月6日広島は語りつづける」(伊藤壮 作・丸木俊 絵。ロシア語版は1984年出版)は2部あったはずが、1部は行方不明、残った1部はボロボロの状態です。
 「コッペパンはきつね色・ねこによろしく」(松谷みよ子 作・ロシア語版は1977年出版)と「窓際のトットちゃん」(黒柳徹子 作。ロシア語版は1988年出版)はかろうじて、1部ずつ見つかりました。(でも状態がいいとは言えません。)
 
 このように、あと10年もすれば、ベラルーシ中から日本児童文学のロシア語版は、廃棄処分されるか、行方不明になるかのどちらかだと思います。
 また「売れない。」とロシアの出版社に思われている日本児童文学書が再版される可能性は大変低いです。
 そこで、今何とか保存する方向に誰かが進まなくていけないと思い、今年からチロ基金の活動として「日本児童文学コレクション」の収集を始めました。
 すでに日本文化情報センターのベラルーシ人向けロシア語サイトではお知らせを更新しています。 

http://blog.goo.ne.jp/fondchiro/e/df58db53d70cd15cb202df7274950aad


http://blog.goo.ne.jp/fondchiro/e/10266fedd5ec676d4a014cc4fa99073e


 ベラルーシの図書館に残っている本ではなく、個人蔵の本をチロ基金が買い取って、日本文化情報センター内「日本児童文学コレクション」に加えて、永久保存を目指す、という試みです。
 しかし、最新の翻訳書でも1991年発行ですので、多くの家庭で古本として処分されてしまった可能性が高いです。
 どれぐらい集まるのか分かりませんが、数年はこの呼びかけを続けようと考えています。

 私が知っている限りで、ロシア語に翻訳された日本児童文学で、買い取りをベラルーシ人に呼びかけているのは以下の19冊です。(表示している発行年度は原書ではなく、ロシア語版の発行年度です。)

1)「おしょうさんとこぞうさん」 羽仁説子 1956年
2)「子どもの頃の日々」 徳永直 1958年, 1965年
3)「あかつきの子ら」 片山昌造 1960年
4)「コロポックルの橋」 森和男(一歩)1963年
5)「つるのとぶ日」 いぬいとみこ 1966年
6)「いやいやえん」 中川梨枝子 1967年
7)「赤い鳥小鳥」 1967年
8)「うみねこの空」 いぬいとみこ 1968年
9)「龍の子太郎」 松谷みよ子 1970年,1978年
10)「ゆびきり」 早乙女勝元 1973年
11)「さらば、ハイウエイ」 砂田弘 1974年
12)「300番地の子どもたち 谷真介 1976年
13)「風の中の子ども」 坪田譲治 1978年
14)「パパはのっぽでぼくはちび」 平塚武二 1981年
15)「1945年8月6日広島は語りつづける」 伊藤壮 1984年 (1部はありますが、状態が悪いのでリストに入れました。)
16)「天の赤馬」斎藤隆介 1985年(1部はありますが、状態が悪いのでリストに入れました。)
17)「三コ」 斎藤隆介 1988年
18)「窓際のトットちゃん」 黒柳徹子 1988年(1部はありますが、状態が悪いのでリストに入れました。)
19)「むかしむかしおばあちゃんは」 神沢利子 1991年

(注意! これらの日本語の原書を集めているのではなく、ロシア語版を集めています。)

 図書館員さんたちは「こんな昔の本、なかなか見つからない。」と悲観的です。
 しかし、何もしないよりはましだろうと、私は思います。
 この活動については、また改めてご報告します。(日本文化情報センター開設20周年のころの報告になるかも・・・。)(^^;)
 
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以下は5月18日の追加書き込みです。
 リスト中の
17)「三コ」 斎藤隆介 1988年
 ロシア語版を購入できました! 
 初めての1冊です。とてもうれしいです!  
 
 「ノンちゃん雲に乗る」(石井桃子 作・三浦みどり 訳)(これは翻訳者の三浦さんが自費で1997年にロシアで出版したものです。)
「手袋を買いに」(新美南吉 作・三浦みどり 訳)(これは本ではなく、1999年にロシアの雑誌に掲載されたものです。)
「橋をかける 子ども時代の読書の思い出」(美智子 著)(児童文学書ではなく、皇后美智子様が子ども時代に親しんだ読書の思い出の記。1999年すえもりブックスから発行。)
「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治 作・中澤敦夫 訳)(2002年に新潟大学で出版されたもの。)
「窓際のトットちゃん」「コッペパンはきつね色・ねこによろしく」「1945年8月6日広島は語りつづける」「天の赤馬」(この3冊だけがうちの図書館に残っていました。)
 
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以下は2010年3月3日の追加書き込みです。
 リスト中の
9)「龍の子太郎」 松谷みよ子 1970年度版を購入しました。時間はかかっていますが、少しずつコレクションが増えています。とてもうれしいです。

 画像は現時点で集まった「日本児童文学コレクション」です。
 この調子で少しずつでも買い集めたいと思っています。また改めてこの活動についてはご報告いたします。