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ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

低線量放射線 新しい原爆研究報告

2012-08-04 | 放射能関連情報

 5月14日付の記事でイアン・ゴッダード氏による「福島放射線 NOT SAFE」の日本語版についてお知らせしましたが、同じくピースフィロソフィーセンターのサイト内で新しい研究報告の日本語訳が公開されています。

 イアン・ゴッダード分析: 低線量放射線 新しい原爆研究報告(大下雄二訳)

http://peacephilosophy.blogspot.ca/


http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012_08_01_archive.html


 ぜひ皆様ご覧ください。英語から日本語に翻訳してくださった方に感謝します。ご苦労様です。
 翻訳者様のご意見も同じページに公開されていますが、こちらもぜひお読みください。
 (もうすぐ広島と長崎の原爆の日ですね・・・。)





免疫システムについて

2012-08-01 | 放射能関連情報
 3月と5月にご自分の体調と対策のメモを提供してくださった方から免疫システムについての情報をいただきました。

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/ad35361e4bb057209f45ea6e495feee7


 この方はずっと胸骨のところが痛いのだそうですが、その原因がこれではないかと考えています。
 以下は抜粋です。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BA


 ロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ(Alexey V. Yablokov)、ワシリー・ネステレンコ(Vassily B. Nesterenko)、アレクセイ・ネステレンコ(Alexey V. Nesterenko)は、2007年、en:Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment(『チェルノブイリ:大惨事が人々と環境に与えた影響』)を出版した。同書は、チェルノブイリ・エイズの発生機序について、セシウム137による内部被曝で胸腺が破壊され、ヘルパーT細胞を含むリンパ球のT細胞系が作れなくなり、B細胞に抗体グロブリンを作るように命令してくれるはずのT細胞が存在しないので、血中の免疫グロブリンの数が激減してしまう、等と述べている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 つまりセシウム137による内部被曝で胸腺に影響が出て、(胸骨の痛みはこれが原因?)さらに免疫システムがうまく機能しなくなり、病気にかかりやすくなったり、同時にさまざまな病気になってしまう、ということです。

 この文中にある「チェルノブイリ・エイズ」って何? と思われる方もいると思いますが、一般的に知られているエイズとは全くちがいます。(人から人へうつったりしません。)

 これは上記URLによると、ウクライナの生化学者で、ウクライナ免疫科学プログラムの責任者を務めていた学者がチェルノブイリ原発事故による放射性降下物からの低線量放射線のために、ヒトのナチュラルキラー細胞の数と活性が劇的に低下することを発見し、この免疫抑制現象を"チェルノブイリ・エイズ"と名づけたことに由来するものです。

 免疫システムの作用が低下して病気になってしまう、ということを分かりやすく(かつ注意喚起するためインパクトを与えるようと)このような名称を考え付いたのでしょう。

 しかし私の感覚からすれば、エイズとはちがうので、こういう名称が差別につながらないか心配です。
 すでに福島エイズという言葉もあるそうですね。こういう言葉は広まってほしくないです。
 福島県でエイズが流行っている、というような誤解を生み出しかねないからです。

 普通に免疫力の低下、という表現でいいと思うんですけど。

 放射能被曝により、免疫力が弱り、病気にかかりやすくなったりするのはベラルーシではすでに常識です。
 みんなそれぐらい知っていますよ。(自分の身を持って実感している人もたくさんいます。)
 でもそれをエイズだと思ったり、自分はチェルノブイリエイズ患者だ、と認識している人はほとんどいないのではないでしょうか?

  

オストロベツに原発が建設されます

2012-07-29 | 放射能関連情報
 帝政ロシアの初代日本領事だったヨシフ・ゴシケーヴィチが人生最後の月日を過ごしたオストロベツ地区。
 その行政の中心にあるオストロベツ市は人口9000人の町です。
 4年後、2016年にオストロベツ市から30キロ離れたリトワニア国境に近いところにベラルーシ初の原発が建設予定です。
 10年ぐらい前からベラルーシで原発を造る話は出ていたのですが、その候補地がころころ変更し、定まっていませんでした。
 しかしとうとうオストロベツに建設が決定、今年から作業が始まりました。
 オストロベツ市内には原発作業員が将来居住する予定の団地の建設が始まり、ゴシケーヴィチの胸像を見に行く途中、その工事現場のそばを通り過ぎましたが、暗い気持ちになりました。
 原発が完成し、関係者がオストロベツ市に住むようになると、人口は3万人になると予想されています。
 市にとって経済的な効果はもちろんあると思いますが、もし事故が起きたら・・・と複雑です。

 市民の間で原発反対の運動はありません。心の中では反対、と思っている人はいるでしょうが、具体的な反対運動はありません。
 逆に国境を越えたリトアニアが反発しています。
 しかし、ベラルーシ国内で建設する原発なのですから、リトアニア人が反対しても、ベラルーシ政府はそれを聞く必要はありません。

 そもそもリトアニアにはベラルーシ国境すぐそばにイグナリナ原発がありました。やはり生態系が乱れる、などの理由でベラルーシ側の環境保護団体がリトアニア側に抗議したこともありましたが、もちろんベラルーシ人の意見をリトアニア政府がきく必要はありません。

 イグナリナ原発は70年代にソ連政府により造られた原発で、2009年には操業停止となりました。原発依存度80%の国であったため、電気料金はその後、家庭向けが30%企業向けが20%値上がりしました。

 現在は新しい原発をリトアニア政府は建設する予定です。、イグナリナ原発と全く同じ場所でヴィサギナス原発と言います。
 しかも沸騰水型軽水炉を建設するのは日本の日立の予定です。

 そんなわけで、リトアニア人がベラルーシに文句を言おうがお構いなしに、ベラルーシはベラルーシの原発を造る、ということになっています。
 ベラルーシ初の原発については日本が造る、という話もありましたが、結局ロシアが建設を開始しました。
 ロシアの最新技術を使い、安全は保障付き。絶対大丈夫、と住民には説明しているそうです。

 確かにエネルギー資源がほとんどなく、石油に天然ガスをロシアからの輸入に全面的頼っている国です。寒くなってきてそろそろ暖房がほしくなってきたなあ、と思う頃に、ロシアから石油や天然ガスの価格引き上げが通告され、政経ともに(国民の心理も)きりきり舞いになる・・・という状況がずーーっと続いているのです。
 自国内で電気を起こすことができるようになれば、ロシアにエネルギー依存しなくていいし、(ロシアとベラルーシの対外関係も変化する可能性がありますね。)こんないい話はない、というのがベラルーシ側の考えです。

 それはそれで分かるのですが、どうしても考えてしまうのは、もし原発で事故が起こったら・・・です。
 風向きによってはリトアニア領が汚染されて、ベラルーシは被害が少なかった、ああ、よかった、ということもありえます。
 でも風向きなんて、どうなるのか神のみぞ知る・・・

 ゴシケーヴィチゆかりの地が、避難地域になってしまったらどうしたらいいのか・・・。立ち入り禁止地区になったら、ゴシケーヴィチの胸像ももう見に行けないではないですか。
 美しいマリ村も無人の地になってしまうかもしれません・・・。
 ベラルーシで一番親日家の多い(と思われる)この場所が放射能に汚染されるようなことになったら・・・。

 事故が起きないことを祈るばかりです。 

映画「真実はどこに?―WHOとIAEA 放射能汚染を巡って」ネット公開のお知らせ

2012-05-25 | 放射能関連情報
 映画「真実はどこに?―WHOとIAEA 放射能汚染を巡って」がネット上で公開されています。
 WHO世界保健機関と IAEA国際原子力機関が共同で開催した、2001年キエフ国際会議の模様を捉えたこのドキュメンタリーです。日本語に訳されましたので、ぜひ日本人の皆さんもご覧ください。

http://ringono.com/2012/05/24/nuclearcontroversiesvideo/


 日本語訳、字幕を作成してくださった「りんご野」スタッフの皆様、ありがとうございます。
 このようにして日本に広くこのような作品、情報を伝えることができ、大変有意義なことだと思います。
 はネステレンコさん(前ベルラド研究所所長)が画面にたびたび登場していて、またお会いできたような気がしました。(個人的にはこれがうれしかったです。)
 作品中のベラルーシの子どもたちですが、インタビューを聞いていて、ベラルーシの現状をこの子どもたちが体現している、と思いました。

 それにしてもタイトルの「真実はどこに?」ですが、これを見ていて放射能の問題は真実が見えにくい、そして見えにくくなり勝ち、さらには見えないようにしている人たちも大勢いる、と思いました。
 これはチェルノブイリ原発事故がテーマですが、チェルノブイリだから真実が見えなくなっている、と思わないでくださいね。
 放射能にまつわる問題は、国や地域に関係なく、見えにくくなってしまうものなのです。
 そして「真実がどこにあるのか分からないから、気にしない、考えないようにする」・・・というふうにはこのブログを見ている人には思ってほしくないです。
 真実が分からないから、難しいけれど探求し続ける姿勢が専門家には必要ですし、一般人も現実から目をそらさず、自分が現時点でできることはしてほしいです。
 
 

毎日新聞 「子どもを守る食事作りの知恵」

2012-05-10 | 放射能関連情報
 2012年5月10日付毎日新聞の記事です。ぜひお読みください!
 読んでいてチェルノブイリ原発事故後の状況が繰り返されているような気がしています。
 それにしても、日本ではペクチンが放射能(セシウム)排出作用があるとは認められていないことになっていて、ベラルーシで子どもたちに(しかも日本人からの寄付金で)ペクチンサプリを配っている私は複雑な思いをすることが多いのですが、この毎日新聞でははっきりと「セシウムを排出するペクチン」と書かれていて、日本も変わってきている・・・と感じました。

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http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20120510ddm013100011000c.html?fr=rk



<放射性セシウム>子どもを守る食事作りの知恵 野菜、果物多めを習慣に
2012年5月10日(木)13:00

 ◇酢水、塩水で下処理 続けることで免疫力アップ

 食品に含まれる放射性セシウムに、一般食品で1キロあたり100ベクレルの新基準値が適用されて1カ月余り。規制が従来の5倍の厳しさになったため、基準値を超える食品が相次いで見つかり、消費者も不安を募らせている。放射能の子どもへの影響を減らすために、食事作りで何を注意すればよいのか。専門家に聞いた。【小川節子、小島正美】

 生活評論家で薬剤師の境野米子さん(64)は、福島市で築160年の古民家を修復し、自然を生かした暮らしや料理を提案してきたが、山間のくぼ地には今もホットスポットが点在する。「フキやタケノコなどの山菜採りも、畑作りもあきらめました」と境野さん。せめて福島の子どもたちにより安全なものを食べさせたいと、このほど「子どもを放射能から守るレシピ77」(コモンズ)を出版した。

 食べ物の放射性物質を少しでも減らす方法として、境野さんは(1)調理の工夫(2)メニュー(3)免疫力を高める食べ方――を挙げる。

 基準値を超えた主な食材は、牛肉▽山菜、キノコ、木の実▽魚▽海藻▽米のぬかや胚芽――など。検査基準を参考に食材を選べば安心だ。

 調理の注意点は、野菜はよく洗い、皮をしっかりむく。2%の酢水に1時間漬け、水を2、3回取り換える。魚や肉は塩水に漬けたり塩漬けで保存し、塩抜きしオーブンで焼く。ゆでるのも効果的だ。

 果物にはセシウムを排出するペクチンやカリウムが豊富に含まれる。リンゴ、イチゴ、レモン、オレンジなどは特にお勧め。消化しやすいジュースで飲むと効果的だ。

 カリウム、ビタミン、ミネラル、アミノ酸が多く含まれる野菜も良い。お勧めのメニューは、五目おこわやラタトゥイユ、温野菜の盛り合わせや切り干しダイコン炒めなどだ。

 境野さんは「基本はいかに免疫力をアップさせるか。脂肪や塩分、砂糖は控えめに。野菜、果物、海藻類、ナッツ類をバランスよく食べてほしい」とアドバイスする。

   *

 「低線量の放射線被ばくでは、傷ついた遺伝子の修復活動や、細胞の掃除(アポトーシス)が行われるので、神経質になる必要はない。むしろ、放射能と闘う食習慣を実践し、がんや生活習慣病の予防をしてほしい」

 福島県郡山市で婦人科・心療内科「ロマリンダクリニック」を開業する富永国比古医師は「穀菜果食」を勧める。精白していない穀類を主食とし、野菜や果物を多く取る食生活のこと。基本は(1)減塩(2)油脂・動物性たんぱく質は控えめに(3)大豆など植物性たんぱく質を多く(4)穀類は玄米や全粒粉(5)新鮮な生野菜、果物(6)酒、カフェイン、たばこ、砂糖は控える――などだ。

 また、富永さんは心療内科医の立場から「福島県民が直面している深刻な問題は、原発事故によってもたらされた心の傷であり、分断された『人間の絆』です。母子が県外に避難して家族が離ればなれになったり、放射能のリスクに対する考え方の違いから家庭内の争いが増えたり。離婚した人も少なくありません」と話す。

 患者の中には、原発事故の影響で将来が見えず、無力感、喪失感を訴える人が増えているという。がれきの受け入れ反対や、福島の農産物の拒否などが、追い打ちをかけているのではないかと指摘する。

 「福島の人たちを忘れてほしくない。今こそ、傷ついている人を見捨てない文化が必要とされています」

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 ◇食品中の放射性セシウムの新基準値

 食品中の放射性セシウムの新基準値は4月から適用された。暫定規制値が適用されていた3月末までは、全国で検査された13万6975件のうち、1204件(約0・9%)が規制値を超えていたが、新基準値適用後の1カ月間をみると、検査された1万3867件のうち350件(約2・5%)が基準値を超えた。約4割は福島産で、次いで宮城、茨城、栃木が目立つ。基準値超えの品目は、ヒラメ、ウグイなどの魚と山菜、キノコに集中している。


イアン・ゴッダード分析: 「福島放射線 NOT SAFE」 日本語版

2012-05-04 | 放射能関連情報
低線量被曝についてのイアン・ゴッダード氏による低線量被曝の研究の紹介・分析ビデオが日本語に翻訳され、ピースフィロソフィーセンターのサイトで公開されています。
 ぜひ皆様ご覧ください。英語から翻訳してくださってありがとうございます。翻訳者様のご意見と同様に日本でも広く考えないといけないテーマだと思います。

http://peacephilosophy.blogspot.ca/


 このリンク先はトップページです。右側のアーカイブから2012年5月
イアン・ゴッダード(Ian Goddard) 「福島放射線 NOT SAFE!」(~過小評価される乳幼児発ガンの危険性~)

 ・・・をクリックしてください。
 オリジナルの動画も見ることができます。

チェルノブイリ原発事故発生から26年ですが・・・

2012-04-26 | 放射能関連情報
こちらはチェルノブイリ原発事故発生から26年を迎えました。
 毎年恒例ですが、ベラルーシでは大統領が追悼式典に出席するためヘリコプターで飛び立ちます。

 それはいいとして・・・
 去年3月15日にベラルーシの大統領はロシアの大統領(当時)とベラルーシ国内に原発を建設することを合意しました。
 ロシアがベラルーシに原発を建設し、それにかかる費用のうち90%は原発から生み出される電気をロシアに輸出することにして(つまり現物払い)、残りは10年の分割払いにする、と言うことでした。
 しかも計画によると2017年に第1号炉、2018年に第2号炉を建設するらしいです。

 この話が進んでいると思っていたところへ、今年の2月20日にベラルーシの大統領が原田親仁駐ベラルーシ日本国特命全権大使と会談し、ベラルーシに原発を日本企業が建設してほしい、さらに軽自動車の工場もベラルーシに建てて、製造をする・・・という話があったそうです。
 日本側からの発表では原発を日本が建設する話はないです。(日本自動車企業の軽自動車工場の話もない・・・。) 

http://www.by.emb-japan.go.jp/j/info001_j.html


 しかしベラルーシの新聞には大統領が
「次に日本が原発をどこかに造るとしたら、ベラルーシを第1候補に挙げてほしい。日本人は美しくよい原発を建設することができる。(福島第1原発事故については)それは格の平和利用が不要になったということではない。」
と発言した、と掲載されました。
 さらには
「核エネルギーの利用なしに日本が今後発展することはおそらくない。」
と発言。

 どうなるんでしょうか? これを聞いてロシアとの話はもううまく行ってないのではないかと、私は思いました。
 チェルノブイリ原発事故と福島第1原発事故という共通項ができ、さらなる協力関係も生まれた日本とベラルーシ。助け合うのはいいけれど、原発の建設まで日本が助けるようになるのでしょうか?
 そして「原発と軽自動車」という組み合わせにも、変な気持ちになったのは私だけでしょうか?
 

被ばくした人は被ばくしてない人に対し・・・

2012-03-31 | 放射能関連情報
 ジャーナリスト木下黄太さんのブログで「被曝した人は被曝させたい心理構造にある・・・」という記事が投稿されています。
 詳しくはこちらをご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/10f722aa3626b1ed6796c2bed01ca6b4?st=0


 この中に
「ウクライナやベラルーシで患者を見ている人からよく聞く話ですが、「俺も被曝したから、あんたも被曝しろ」という文言を良く吐くそうです。その言葉に何か深い意味があったり、論理的な構造があったりもしないそうです。なんとなく、自分が被曝したのだから、他の人間にも被曝させたいという構図です。・・・」

 とあります。
 私は17年間ベラルーシに住んでおり、また10年間のチェルノブイリ関係のボランティア活動を通じて、2000人以上の被ばくしているベラルーシ人に会ってきました。主に子どもですが、大人にも会っています。
 しかし「俺も被曝したから、あんたも被曝しろ」と言うベラルーシ人に一度も出会ったことはありません。

 そう心の中で思っているけれど、たまたま私にはそう言わなかっただけの話かもしれません。
 そういう考えのベラルーシ人、そういう発言をしているベラルーシ人もいることと思います。

 しかし被ばくしているベラルーシ人、全員が同じ考えだとは思わないでください。
 被曝していることが分かり、特に子どものことを心配し、被曝を減らすよう努力する人が私が知っている限りではほとんどです。「あんたも被曝しろ。」などと言っている場合ではありませんから。それより自分と家族のことでいっぱいいっぱいです。
 また「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーを自宅近くの学校や幼稚園などに持って行って配ってくれる人もいます。
 こんな行動を取るベラルーシ人が「あんたも被曝しろ。」と思っているわけがありません。

 そしてお願いですが、日本人で被ばくしている人も、みんな同じこと(私は被曝しているから、今被爆していない人も被曝すべき)を考えていると決め付けないでください。

 また「日本人ならみんな平等に被曝しよう。」という考えもやめてください。
 このような平等主義はおかしいと私は思います。
 戦時中の考え方みたいです。
 それに日本人全員、きれいに平均100ベクレルずつ被曝する、といったことはできないし、起こらないことです。

 私も私の子どもも測定をして食べ物による体内被ばくをしていたことが分かっていますが、「私も被ばくしたから、あんたも被ばくしろ。日本人はみんな被ばくしろ。」などと思ったことは全くありません。
 逆に日本人、ベラルーシ人という人種に関わらず、誰も被ばくしてほしくない、と思いました。

 ニュースで悲惨な殺人事件や特に人災による事故にあって亡くなられた方の遺族の話が報道されることがあります。
 多くの遺族の方が
「このような事件(事故)が二度と起こってほしくない。」
「このような思いをするのは私たち家族で最後にしてほしい。」
といった話をすることがあります。
 心痛と悲しみのどん底にいるのに、他人のこと、社会全体のことを思いやり、警鐘を鳴らしている言葉だと思います。

「自分は交通事故にあって、障害者になってしまった。だから交通事故にあったことのない人は、みんな事故に一度はあって、障害者になればいい。」
という考えの人も広い日本、どこかにいるかもしれません。
 しかし、そういう人はごく少数だと思います。

 日本人で被曝した人のうち「他の人は被曝してほしくない。」と思っている人のほうが多数だと思います。

 被曝や事故、事件に関わらず
「私は何も悪くないのにこんなに苦しんでいるのだから、他の人も苦しみを味わえばいい。」と思うのも人間。
「私はこんなに苦しい思いをしたので、他の人はこんな苦しみは味わってほしくない。」と思うのも同じ人間ですね。
 

ペクチン入りのお菓子について

2012-03-28 | 放射能関連情報
 先日、ネットで放射能関連のテーマであれこれ検索をしていたら、偶然ある日本人の方のブログを読むことができました。
 それを読んでいろいろ思うことがありましたので、このブログでも私の意見を書きますね。

 まず、やはり日本とベラルーシは社会体制がちがう、ということです。
 弊訳書「自分と子どもを放射能から守るには」78ページの「ペクチンがとれるベラルーシのお菓子」について読者の方の中には
「チェルノブイリ原発事故が発生してから、ペクチンがセシウム排出に効果があるということで、ペクチンをたくさん入れたお菓子を作り始め、バンバン宣伝している。ベラルーシ人もみんなそれを知っていて、そのお菓子をどんどん買って、子どもに大量に食べさせている。」
というように誤解している人がいるかもしれない・・・と思いました。
 
 ベラルーシはですねえ、日本のような資本主義の経済体制の国ではないのですよ・・・。
 だから日本人の皆さんがある日ベラルーシで暮らし始めたら、びっくりするようなことがベラルーシでは当たり前のように起こります・・・。
 あるいは日本では起こって当たり前のことがベラルーシでは起こりません。

 ここでは詳しく書きませんが、お菓子に関して言えば、パッケージに「放射能排出するペクチン配合!!!」といった宣伝文句を印刷しているような商品はベラルーシにはありません。
 またテレビCMなどで同様にペクチンの作用を宣伝しているお菓子はありません。
「ペクチンが入っているから、我が社のお菓子は放射能排出に効果ありです!」
と宣伝しているような企業はベラルーシにはありません。
 ベラルーシに住み始めて17年になりますが、そのようなペクチンが放射能排出に役立つ、と言ったことを宣伝している食品会社の広告やCMを目にしたことは全くありません。
 
 また弊訳書で「べクチン入りのお菓子を放射能排出に効果あり、と企業も宣伝しているし、国も国民に対して推奨している。」といったことは書いておりません。
 
 弊訳書で紹介しているベラルーシのお菓子は昔から売られている駄菓子です。(日本で言うところの金平糖やかりんとうのような感覚でしょうか。)
 ペクチン入りのお菓子はチェルノブイリ原発事故が起こるずっと前から売られています。

 日本でもマーマレードジャムが売られていますよね。 あれにもペクチンが含まれていますが、福島第1原発の事故発生前からずっと売られているのと同じです。 
 ペクチン入りのお菓子を子どもに食べさせているベラルーシ人のお母さんはもちろん事故前からもいますし、事故後もいます。
 3.11前からマーマレードジャムが好きでパンに塗って食べている日本人がいるのと同じです。

 ただ以前はペクチンと放射能排出の関係について、誰も知らなかったし、今でも知っている人と知らない人がいる、ということです。

 ベラルーシでこの駄菓子にはペクチンがたくさん含まれているからあえて買って子どもに食べさせている、という人は、知識や教養のある人です。前述のような企業による宣伝などがされていませんから、知らない人は知りません。
 どうせお菓子を買うなら、体に悪い食品添加物が入っているお菓子より体にいいお菓子を買うほうがいい、ということで、私はボランティア活動で、ベルラド研究所はパンフレットなどを通じ、ベラルーシの一般人に知ってもらおうと努力しています。宣伝というものではなく、ペクチンが入っているお菓子を子どもに与えましょう、という食育指導です。

 こんな食育指導を日本人に対しても言うようになるとは、福島第1原発の事故前は想像もしていませんでした。

 ともかくベラルーシではペクチンについて知っているお母さん、新たに知って信じるお母さんは意識してペクチン入りのお菓子を子どもにあげています。しかし知識のない人、信じてない人は意識して、「ペクチン入りのお菓子」を子どもにあげてはいません。
 単なる「おいしい駄菓子」として子どもにあげているだけです。
 
「そんなに体にいいお菓子なら作っている企業もバンバン宣伝するのではないか? どうしてそうしないのか?」
と思う人もいるでしょう。しかしこれこそ日本人的発想で、ベラルーシでは起こらないことなのです。
 一言で非常に簡単に表現するとすれば「商売っ気がない」んです。

 それからペクチンを多く含んでいるお菓子と言っても
「この駄菓子を1個食べただけで、体内放射能が消える」わけではありません。
 お菓子はあくまでお菓子であってサプリとは違います。
 また「ペクチン入りお菓子に放射能排出効果大!」といったことを私は言ったことはありません。
 またベルラド研究所もそのようなことを発言したことはありません。
 ベルラド研究所が作っているパンフレットでも、弊訳書「自分と子どもを放射能から守るには」にもそのようなことは記述されておりません。

 それから私もベルラド研究所も、「ペクチンさえ飲んでいれば、セシウム被ばくしてもいい。」などと発言したことは一度もありません。
 SOS子ども村での活動においても、ビタペクトを子どもにあげるだけではなく、「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーも併せて配布しています。
 それはビタペクトを飲んで、体内のセシウムが排出されても、食事で再び被ばくしたら元も子もないからです。
 つまりビタペクトを飲んで排出すればいい、という考えだけではない、ということです。
 残念ながら被ばくしていることが分かった場合はビタペクト(ペクチンサプリ)を飲んで早く排出しましょう。そして再び蓄積しないように調理などに工夫をしましょう・・・この二つの考えが両輪となれば、セシウム被ばく対策として前進できるけれど、一つだけでは片手落ちだとチロ基金は考えているからです。
 
 ベルラド研究所は、ベラルーシ政府が定めた食品の基準値について子ども向けの食品、1キロ当たり37ベクレルでも
「多すぎる。ゼロにするべき。」
という意見です。「自分と子どもを放射能から守るには」の38ページにもそのことが記されています。
 このような意見の持ち主が、
「ちょっとぐらい被ばくしてもペクチンさえ飲めば大丈夫。うちが作っているペクチンサプリを買って。」
と言うでしょうか?
 また放射能汚染地域に住んでいる人に対して
「住み続けても大丈夫。ペクチンさえ飲めば住めますよ。だから移住など一切しなくていい。」
といった発言も私もベルラド研究所もしたことはありません。
 もちろん強制的に退去しなくてはいけない地域もありますが、それほど危険ではないけれど汚染されている地域、あるいは低汚染地域にも関わらず、体調が悪いなどの症状が出ている人もいます。
 すでに体の不調が出ている人には移住や保養をお勧めします。それに加えてペクチンサプリを飲むことを勧めます。

 発症したわけではないけれど身に危険を感じており、移住したいと思っている人は移住したらいいと思います。
 しかし移住をするのは難しい問題です。思い立ったので明日実行! というわけにもいきません。
 特に日本は人口密度が高いし、土地も家賃も高い。仕事も簡単にやめられない、すぐに新しい仕事が見つかるか分からない、子どもも年齢によっては気軽に転校したくない、という場合が日本人には多いと思います。
 しかし放射能は目の前にあるかもしれない・・・
 このような人に対して、すぐ移住しないのは呑気である、と思う人もいるかもしれません。そんなことを直接言うと、今度は人間関係がギクシャクしてしまうでしょう。
 私は心配な人は今日からすぐできる対策、簡単にできる対策は実行してほしいと思います。 

 とにかく被ばくは避けるべきです。特に小さいお子さんほど被ばくしないようにしないといけません。
 が、こんなこと、いちいち私に言われてなくても誰でも分かっていることです。
 
 問題なのは測定をしてみたら、被ばくしていることが分かった場合です。
 もう被ばくしたから、と白旗を上げてあきらめるのでしょうか?
 何も対策はないのでしょうか? それとも対策があるらしい、と知っているけれど何もしないのでしょうか? 
 
 私はあきらめる前にペクチンを飲むことを勧めます。でも強要するものではありません。
 日本人の皆さんそれぞれご自分のご判断に沿った方法で、放射能の排出をしてください。

 あるいは「何もしない」ことを選ぶ人もいるでしょう。しかしそれはそれで個人の自由な判断です。
 私からあれこれ意見を言うつもりはありません。

 日本はベラルーシと違って、情報もたくさんあり、情報ツールも発達していて、知識を手に入れることも非常に簡単です。
 そして集めた情報や知識を元にどう行動するのかも個人で決めることができます。自由に判断することができるのです。
 

「チェルノブイリのバックグラウンド」(4) 暫定基準値

2012-03-22 | 放射能関連情報
 この記事も1990年発行、アレクサンドル・リュツコ著「チェルノブイリのバックグラウンド」からですが、日本人の皆さんにはそんなに役に立たない内容かもしれません。
 しかし、あまりにも驚いたのでご紹介します。ただこの本はチェルノブイリ原発事故から4年後の1990年に発行されたものですので、そのことを念頭に読んでください。
 ( )内の文章は私のコメントです。

・・・・・・・・・・・・・

 人間の被ばく限度については、3つのカテゴリーに分けられる。
 第1グループは原発従業員、アイソトープ研究員、放射線治療従事者など被ばくの可能性が高い職業に就いている人で、年間の被ばく限度は50ミリシーベルトとしている。
 第2グループは放射線関連施設で働いているが、直接放射線を扱わない仕事に就いている人である。(第1グループの施設で掃除や警護など裏方の仕事をしている人のことです。)このグループの年間被ばく限度は5ミリシーベルトである。
 第3グループは第1・第2グループに該当しない人、つまり一般人で、年間被ばく限度は1ミリシーベルトである。
(以上の規定はソ連政府が自国民に対して決めたものです。)

 もちろん第1グループの人が一般人より、放射能に強い体であるから、といった理由で異なる被ばく限度が定められているわけではない。 
 第1グループや第2グループの人は被ばくの検査や、そのほかの健康チェックも細かくしているので、被ばくによる影響が出ないように予防することも早くできるようにしている。そのためこのような被ばく限度量にしている。

 しかしチェルノブイリ原発事故が起きてから1年間は以上のグループ分けに関係なく、(ソ連政府国民)全員の被ばく限度を年間100ミリシーベルトに引き上げた。
 そしてこれを元に食品についての暫定基準値も計算され、定められた。
 1986年5月にソ連政府が設定した食品の暫定基準値は次のとおり。単位は1キロあるいは1リットルあたりのベクレル。

飲料水 370
牛乳 370
練乳 18500
サワークリーム、カッテージチーズ 3700
バター 7400
肉類(豚肉、鶏肉、羊肉)、魚、卵、肉類と魚類の加工食品 3700
牛肉、牛肉の加工食品 3700
植物油、マーガリン 7400
ジャガイモ、野菜、葉物野菜、自家栽培の果物、ベリー類 3700

 チェルノブイリ事故発生後1年経ってから被ばく限度量が見直され、1990年1月までに30ミリシーベルト、25ミリシーベルト、と引き下げられていった。
 食品の暫定基準値も改定され、1988年10月に定められた基準値はこのとおり。単位は1キロあるいは1リットルあたりのベクレル。

飲料水 18.5
牛乳 370
練乳 1110
サワークリーム、カッテージチーズ 370
バター 1110
肉類(豚肉、鶏肉、羊肉)、魚、卵、肉類と魚類の加工食品 1850
牛肉、牛肉の加工食品 2960
植物油、マーガリン 370
ジャガイモ、野菜、葉物野菜、自家栽培の果物、ベリー類 740

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これを見て、文字通り、いや(@Д@;) 絵文字どおりの顔になってしまいましたよ・・・。
 これはひどい。ソ連政府って・・・。
 ちなみにこの本が発行されたときはまだソ連崩壊前でした。そして上記の文章から推測すると、この本が発行されたのは1990年ですが1月以降ですね。(発行年は記載されてあすが、月日が記載されてないのです。)
 そしてその時点でも1988年設定の暫定基準値が適用されていた、ということです。 
 この後ソ連崩壊、ベラルーシ共和国独立、各共和国ごとの基準値が作られていくことになります。
 もちろん現在のベラルーシの基準値はもっと厳しいものになっています。また食品の分類も細かくなっています。

 それにしてもバベンコさんが「自分と子どもを放射能から守るには」出版記念講演のため来日したときは、日本のマスコミ各社から
「日本の暫定基準値についてどう思いますか?」
と質問攻めにあい、
「日本人の食生活に合わせて、もっと厳しくすべきです。」
と応えていたら
「日本の基準値は甘すぎる!(とベラルーシの専門家も言っている。)」
とか報道されましたが・・・

 「チェルノブイリのバックグラウンド」のこのページを見た私は・・・何だか日本がとてもすばらしいよい国に思えてきました。(^^;)

 いやあ・・言葉が出てこないと言うか何と言うか・・・この基準値はソ連政府よ・・・犯罪行為ではないですか・・・。
 事故発生から1年間はこんな基準値でOKだった食品を国民が食べていたから、後になって甚大な健康問題が国民の間に出てきたんですよ。(涙)

 しかし、よく考えると1986年当時、このような基準値だったからと言って、(今の)ベラルーシ(やウクライナ、ロシア)で流通していたの肉類がどれもこれもぎりぎりOKの1キロ当たり3690ベクレルだった、ということではありません。
 測定してみたら10ベクレルだったから流通OK、100ベクレルだったからOK、1000ベクレルだったからOK、3000ベクレルだったからOK・・・とさまざまな食品が出回っていたと思われます。
 もちろん0ベクレルだった食品も食べていたということです。

 一方でチェルノブイリ原発事故が起きてから間もない時期には食品の検査体制が整っていなかったので、全ての食品を検査できていたわけでもありません。
 実際にどのような食品を当時の国民が口にしていたのか、実態ははっきりしていません。でも1986年5月、1キロ当たり18499ベクレルの練乳は堂々と売ってよかった、ということです・・・。

 でも事故から2年半経ってもこの基準ですよ。
 日本は約1年後の2012年4月からもっと厳しい値に改定されるわけですから、ソ連政府よりずっと対応のスピードが早いと思いました。
 (ここのところがまだ救いになっているかも・・・。でもソ連などと比べるな、と言う日本人もいるでしょうねえ。)

「チェルノブイリのバックグラウンド」(3) 除染方法

2012-03-20 | 放射能関連情報
 1990年発行、アレクサンドル・リュツコ著「チェルノブイリのバックグラウンド」からの抜粋日本語訳の続きです。
 今回は除染について。
 チェルノブイリ原発事故が起きてからまだ時間が経過していない時期に書かれていたので、一般人でも自宅ですぐできる除染方法についても紹介しています。( )内の文章は私のコメントです。

・・・・・・・・・・・・・

 地面で言うと雨水など自然の降水によって、放射能は流れていく。しかしそれだけでは除染としては不十分である。
 汚染された場所や物は水でよく洗う。地面の場合、凝固剤を入れた水を撒いて、放射能を固める。
 泡が出る化学薬品を水に混ぜるのも、水だけよりも効果が出る。

 舗装されていない道路にはアスファルトを敷く。アスファルトを敷いた後はその上に積もった放射性の塵を水で洗い流すのも楽になる。
 
 しかし洗った水のほうに放射能が移動するだけであることを忘れてはいけない。
(確かに。除染してきれいになった、と思っても、洗った水のほうが汚染されていることに注意しないといけませんね。)

 地面の奥にしみこんだ放射性物質を植物が根から吸い上げ、また地表やその上の部分に放射能を戻してしまう可能性がある。
 これでは地面を除染しても無意味である。
 そこで除染で効果があるのは、その場所に生えている植物全てを完全に伐採、再び生えてこないように根も掘り起こして廃棄することである。
 さらに地面の表層部分の土をそいでおく。
(木も草もすべて引っこ抜いて捨てろ、ということです。この部分を読んで絶句しました。人間の健康のための除染とは言え、自然に対して我々は何をしているんでしょう?)

 広い面積の除染は経費のことも考慮すると困難。
 そこで広大な森などがある場合、除染を行うより、国立の管理公園に指定して、立ち入り禁止地区にし、さらに森の放射能を観察・実験をする場にしてしまう。
 このようなケースがベラルーシには多い。
(要するに汚染地域が広大すぎるので、除染をあきらめる、ということです。逆に実験フィールドとして研究の場にしよう、という逆転の発想ですね。)

 乾燥した空気のとき、天気のよい日は空間線量が高くなる傾向があるので注意。
 またこの時期に畑仕事の多い時期が重なると、さらに空間線量が高くなる。
(春、種まきをしようと畑の土を掘り返すと、土の中の放射能が空気中に飛び散る、ということです。)

 逆に家の裏などの地面で、湿っている場所の空間線量は低い。
(できるだけ畑仕事の際には地面に水を撒いて湿らせておくほうがいい、ということか・・・と思いました。しかし・・・)
 汚染地域でどうしても畑作をしたい場合は、極論かもしれないがガスマスクをつけて作業することを勧める。
 ガスマスクのタイプは中にガーゼがたくさんの層になって入っているもので、畑仕事が終わったら、そのガーゼは捨てること。
(ここの部分を読んで再び絶句しました・・・。)

 窓やドア、靴を通じて放射能は室内に入ってくる。
 毎日濡れた雑巾で水拭きの掃除をすること。
 濡れ雑巾は、泡の出る洗剤を入れた水に浸して濡らすほうが効果がある。
 壁を洗うのも、家具を洗うのも効果がある。
 放射能は絨毯の毛の中に集まりやすいので、できる限り頻繁に絨毯掃除をする。
 (泡掃除も推奨しています。)

 薪を利用する場合、枝の部分、特に針葉樹の薪は使わないほうがよい。
 また幹の年輪部分で言うと中心部分に放射能がより多く蓄積しているので、薪を作るときに注意する。

 このほか、保養については・・・
 病人、病弱な人は夏場に保養に行くこと。
 出産予定のある女性、妊娠中の女性は妊娠期間の全期間、非汚染地域で暮らすほうがいい。
 (発病リスクで言うと、妊娠8-15週目が被ばくの影響を胎児が一番受けやすい時期なので、注意が必要、としていますが、念のため妊娠中は汚染地域に住まないようにしよう、ということですね。)

「チェルノブイリのバックグラウンド」(2) 発病のリスク

2012-03-18 | 放射能関連情報
 アレクサンドル・リュツコ著「チェルノブイリのバックグラウンド」からの抜粋の続きです。
 発病のリスクについて書かれてる章があります。ただしこの本はチェルノブイリ原発事故から4年後の1990年に発行されたものですので、そのことを念頭に読んでください。
 ( )内は私のコメントです。

・・・・・・・・ 

 理論上では被ばく量が多ければ多いほど発病のリスクが高くなることになっている。
 しかし体の強い人も弱い人もいて、発病するかどうかはその人による。
 ガンを発病する人が出てくるとしても、それが10-20年後になる場合もあるし、遺伝子による病気がその人ではなく、その子どもに出る場合もある。
 しかも発病の原因が放射能被ばくであるかどうかを実証することは難しい。

 骨髄が被ばくすると白血病になる。また白血病にならなくても免疫力が落ち、伝染病に罹りやすくなる。虚弱体質になったり、貧血になる。

 被ばくすると視力が落ちる。数年後白内障になる。失明するかあるいはほとんど失明に近い視力になる。
(この本ではベラルーシに白内障患者が増えることを、すでに予想していたわけです。)

 妊娠8-15週目が被ばくの影響を胎児が一番受けやすい時期なので、注意が必要。
  
 低量被ばくによる特別な健康への影響はない。しかしいくつかの種類の病気を促進することがあるので、低量被ばくが無害である、とは言い切れない。0.1から1シーベルトの範囲内の被ばくでも奇形や変形を持つ新生児が生まれてくる率が2倍に増えた。
  
 ガンについてはまず最初に現れるのは白血病で、被ばくして5-25年後に現れる。
 その次に乳がん、甲状腺がん、肺がんなどが現れる。
(この点については予想が外れています。特に子どもの甲状腺がんはこの本が発行された1990年に増え始めました。早くて5年後に白血病が現れてから甲状腺がんが出てくるとした予想ですが、実際には事故が起きてから4年後には甲状腺がんが増えました。)

 年齢が低いほど白血病の発症数のピークは早く来る。(若い人ほど、事故後早い時期から発症者数が増える、ということです。)
 しかしそれ以外のがんの数は時間が経てば経つほど増えるであろう。

 チェルノブイリ事故後は貧血、心臓病などさまざまな病気が増えた。
 免疫力の低下も見られる。事故前にはなかったことである。(事故後4年間の調査結果です。)

 まだ被ばくが与える影響についての研究は進んでいない。

 アルコール飲料の摂取が被ばくを防ぐ、と言う人もいるが定かではない。しかし汚染地域でアルコールを常飲している人の中に体力低下が見られるので、アルコール飲料の多飲は勧められない。
(現在ではアルコールが被ばくを防ぐ、という説は否定されています。赤ワインを奨励する医者もいますが、これは免疫力アップのためで、被ばくを防ぐ物ではありません。)

 今後、病気の種類や経過を詳しく観察しなければいけない。特に原発で事故処理作業をした人々の健康はより詳しく見守らないといけない。
 研究や調査をすることによって、発病リスクについての理解も深まり、対策方法を考え出すこともできる。
 それを将来生かすこともできる。もし、将来この地球上で同じような事故が繰り返されることがあれば、であるが。

(この文で発病リスクの章が終わります。この最後の部分を読んで泣きたくなりました。)

「チェルノブイリのバックグラウンド」(1) ストロンチウム90

2012-03-17 | 放射能関連情報
 私はミンスク市立の児童図書館内にある日本文化情報センターで働いています。
 同僚である図書館員から
「うちの図書館の貸し出しコーナーにこういう本があるわよ。」
と本を貸してもらいました。
 灯台下暗し・・・。児童図書館で子ども向けの本しかないと思い込んでいた私を許してください・・・。

 借りた本のタイトルを訳してみると「チェルノブイリのバックグラウンド」
 1990年出版なので、チェルノブイリ原発事故が起きて4年目に発行された本、ということになります。
 しかし4年しか経っていないのに、かなり詳しいことが載っていました。特にストロンチウム90についての記述は目を引きました。
 内容を簡単ですが日本語に訳してこのブログに掲載します。

 著者は(執筆当時)ベラルーシ大学助教授のアレクサンドル・リュツコ。専門は物理数学。出版社は「ベラルーシ・ソビエト・百科事典社」です。
 何だか難しそうな内容のことが書かれているのでは? と思ったのですが、児童図書館に置いてあるだけあって、中学生でも分かる(つまり私でも分かる)噛み砕いた文章でした。

 以下、ストロンチウム90についての記述を中心に抜粋しました。( )内の文章は私からのコメントです。

 
・・・・・・・・
 
 ストロンチウム90を含む小麦を製粉し、小麦粉にすると、100あったストロンチウム90の量がおよそ30-70へと減少した。

 ジャガイモ、ビートの皮をむくと含んでいたストロンチウム90が40%減少した。
 セシウム137もほぼ同じ割合で減少した。

 ストロンチウム90を含む牛乳から生クリームを作ると5%しか残らなかった。(95%は乳清のほうへ移行した、ということですね。ただしベラルーシの生クリームは乳脂肪率10%のものが多いです。)

 セシウム137を含む牛乳からバターを作ると、1.5%しか残らなかった。
 サワークリームを作ると、9%残った。
 チーズを作ると、10%残った。
 カッテージチーズを作ると21%残った。

 ストロンチウム90もセシウム137も食肉の中では豚肉が一番蓄積量が低かった。
 
 1986年の事故後の調査ではベラルーシ北部の野生の鹿の肉のほうが、南部の放射能汚染地域で飼育されていた肉牛の肉より10倍多く汚染していた。
 鹿がエサとしている森の苔が高い被ばく量であることが原因である。

 放射能性核種は川や湖の水底にたまりやすい。貝類、甲殻類、水草に放射能は蓄積しやすい。
 
 魚はエサ、そしてえらを通して被ばくする。そこから各種内臓に蓄積していくが、特に高い値で蓄積するのは肝臓である。
 しかし最も危険なのは魚の卵である。
 汚染された魚の身や卵を食べるのはよくない。出汁を取って、スープやブイヨン類を作るのはやめておくこと。

 ジャガイモ、ビート、スイバ、キノコはゆでるとセシウムの50-80%がゆで汁に移行する。
 
 果物は比較的放射能を含まない。しかし種は多く含んでいるので、食べないこと。
 
 1989年の秋にベラルーシ各地で収穫されたリンゴを集めて測定したが、汚染地域でとれたリンゴも「きれい」で食べることができた。
 リンゴは比較的放射能を蓄積しない果物だと言える。

 生の野菜や果物はよく洗う。 
 骨からとった出汁を使った料理は食べる回数をできるだけ減らす。
 危険なキノコは食べない。
 

・・・・・・・・

 事故から4年後の時点でもちゃんとストロンチウム90のことを研究していたのですね。
 でもこの本の中でも
「ストロンチウムは新陳代謝により体外に排出されるが、そのスピードは非常に遅い。」
「効果的な排出方法はない。」
としています。
 できるだけストロンチウム90を含まない食品を食べるようにし、また調理の下ごしらえに工夫し、またふだんからカルシウム不足にならないようにすることを提言しています。
 

ミンスク州のホットスポットでとったキノコ

2012-03-16 | 放射能関連情報
 ベラルーシ人の友人から聞いた話です。この人の同僚が自分の奥さんとミンスク州ビレイカ市の近くにあるホットスポットへ去年の秋行きました。
 このホットスポットはチェルノブイリ原発から400キロ離れたところにあります。
 この森は危ない、と思いつつもキノコをたくさん拾いました。
 そしてミンスクへ持って帰って来ましたが、周りの人から
「そんなキノコ危ない。食べないほうがいい。念のため検査したら?」
と言われたので、検査に出したところ1キロあたり4500ベクレルでした。
 基準値を超えてしまっています・・・。
 結果を聞いた友人たちは
「ほら、言わんことじゃない。食べたらだめだよ、そんなキノコ。」
と言いました。
 
 その人は家で奥さんに検査結果を告げ、
「食べるのやめよう。」
と言いました。ところが奥さんは
「せっかく採ってきたのに捨てるなんてもったいない。絶対いやよ。私は食べる。」
と反対し、夫婦喧嘩となりました。
 (女性のほうが放射能に危機感を抱いている場合が多いのですが、この夫婦は逆のようです。)

 友人は
「そんなに食べたいなら、よくよく洗って、何度も煮て煮汁は捨てるようにすれば?」
とアドバイスしました。
 その後この夫婦がキノコをどうしたのかは知らない、と言うことでした。

 チェルノブイリ原発事故が起きてから25年半の時点でこのような状況です。
 

チェルノブイリ原発ツアー

2012-03-14 | 放射能関連情報
 先日ベラルーシのカメラマンで新聞社で働いている人と話をする機会がありました。
 その人はチェルノブイリ原発ツアーに行ったことがあるということで、詳しく教えてもらいました。

 チェルノブイリ事故が起きたとき、ご本人は生後1ヶ月だったので、事故のことはもちろん何も覚えていません。ミンスク生まれで、ご両親もこれと言って事故のことを話したこともありません。
 また被ばくが原因と思われる症状なども出ていません。
 
 2007年の21歳のとき、カメラマンとして働き始めた頃、新聞の編集部から
「チェルノブイリ原発の写真がいるんだ。撮りに行ってくれ。」
と言われました。
 仕事なので承諾し、経費などももちろん編集部が出すことになりました。
 チェルノブイリまで行く、と言っても編集部が車を出してくれるわけではなく、ベラルーシの旅行会社がウクライナの旅行会社とともに手配しているチェルノブイリ原発パックツアーに申し込んで、一般の観光客といっしょに行くことになりました。

 このパックツアーは今でもあります。1年前の2011年の時点では2日間で80$の料金だそうです。この中に交通費、食費、宿泊費、立ち入り許可証発行の代行などが含まれています。(安い・・・。)
 ミンスク市内で参加者が集合し、夕方バスでウクライナのキエフに向けて出発。
 朝起きるとキエフに到着し、ホテルへ行きました。
 このとき注意されていたのは原発の見学後、着ていた服は捨てないといけないので、捨てても惜しくない服を着ていくこと。そして着替えを持っていくこと、でした。

 きれいな着替えはキエフのホテルに置いておきます。
 それから専用のバスでチェルノブイリ原発へ向かいました。
 各人には線量計が渡され、ガイドも同行します。
 この話をしてくれた人は出張だったわけですが、そのほかのツアー客は一般人で、どちらかと言うと
「怖いもの見たさ。」「変わったところへ行ってみたい。」「なかなか行けないところへ行きたい。」
と言った参加理由の人が多かったようです。

 まず原発関係者の町だったプリピャチに入って、そこで停車。
 カメラマンさんは仕事なので、たくさん写真を撮ったそうです。もちろん無人の町になっているのですが、雑草や苔が伸び放題になっていました。
 人も車もめったに通らないので、道路のアスファルトを突き抜けて若木が生えてきていたり、枝を払うといった手をかけることがなくなったので街路樹が伸びて葉っぱのトンネルができていたりしたそうです。
 異様に巨大な植物や、明らかに奇形の植物、などは見かけなかったそうです。

 このように植物が街中に生い茂っている状態のプリピャチですが、地面のところどころ直径10メートルぐらい丸く植物が「抜けている」部分があるそうです。
 周りは雑草が生えているのに、その「サークル」には草も苔も全く生えていません。線量計を近づけるとそこは特に線量が高く、ガイドから近くに寄らないように、と言われました。

 観光客が
「どうして草が全く生えていないこんなサークルが地面にあるんですか?」
と質問するとガイドは、推測ですが、と前置きして
「おそらく事故が起きたときに核燃料のかけらが飛び散って、ここに落ちたのでしょう。落ちた地点から半径5メートルには、何も生えないし、虫も動物も生き物という生き物はいません。死のサークルなのです。」
と説明しました。カメラマンさんは、さすがに気持ち悪かった・・・そうです。

 近くの森には野生動物がいて、人間がいないせいかすぐ近くまで近寄っても怖がらないそうです。おかげで至近距離で野生動物が撮影できた、とカメラマンさんは喜びました。
 そのほか絶滅危惧種の鳥も増えてきているそうで、自然が野生的に変化しており、動物にとっては楽園のような森になっているそうです。
 
 その後チェルノブイリ原発へ。石棺にはひびが入っていました。
 しかし線量計はそんなに高い数値を示さず、恐怖は感じなかったそうです。

 観光も終了し、その後30キロ圏内から外へ出ました。
 そこに建物があって、そこで着替えます。ホテルに置いてきた「きれいな」服はちゃんと業者が別の車に乗せて、その着替え所まで持って来てくれていました。
 それまで着ていた「汚れた」服は全部脱いで、袋にまとめていれます。
 その後業者さんがその服を、放射能廃棄物専用のゴミを捨てる穴に捨てに行ってくれます。
 ツアー客はバスに乗ってキエフのホテルに帰ります。そこでシャワーを浴びます。そして夕方バスに乗り、翌朝ミンスクに到着、解散、となります。

 カメラマンさんは編集部に行き、撮影した写真を渡し、その後数枚の写真が新聞に載りました。
 そして編集部から保養に行くよう言われ、24日間被爆者向けのサナトリウムに滞在しました。
 そこでは被爆者専用プログラムが組まれています。
 1日6回の特別食。ビタミンのサプリ。マッサージ。食事には赤ワインも出ました。
(赤ワインのポリフェノールが免疫力を高めるとして、ベラルーシでは適量を飲むことを奨励している。)
 費用や手続きは編集部が負担しています。
 仕事のために危険な場所へ若い人を送り込んだのですから、当然と言えば当然ですよね。

 保養所から帰ってきてしばらく働いていると、さらに「保養に行きなさい。」と出張も兼ねて、バリ島へ行ったそうです。
 そこで夏休み3週間を編集部の経費で滞在しました。
 (すばらしい! 編集部太っ腹!)

 もっともこのカメラマンさんはWBCで測定をしていないので、チェルノブイリ原発へ行ったとき、どれぐらい被ばくしたのか、また保養の効果でどれぐらい放射能が排出されたのかは分かりません。

 カメラマンさんはもうすぐ26歳になりますが持病などはなく、とても元気に仕事をしている、ということでした。

 貴重な話を伺えてよかったです。
 それにしてもこのカメラマンさんは出張で行ったわけだけれど、怖いもの見たさでこんなツアーに参加する人もいるとは・・・。
 私としては未来の日本に「フクイチ パックツアー」などと言うものが存在してほしくないです。
 もともとそこで働いていた人や近くに住んでいて、今避難を余儀なくされている住民の方々の気持ちを考えると、観光なんかしてほしくないです。