ベラルーシの部屋ブログ

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「チェルノブイリのバックグラウンド」(2) 発病のリスク

2012-03-18 | 放射能関連情報
 アレクサンドル・リュツコ著「チェルノブイリのバックグラウンド」からの抜粋の続きです。
 発病のリスクについて書かれてる章があります。ただしこの本はチェルノブイリ原発事故から4年後の1990年に発行されたものですので、そのことを念頭に読んでください。
 ( )内は私のコメントです。

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 理論上では被ばく量が多ければ多いほど発病のリスクが高くなることになっている。
 しかし体の強い人も弱い人もいて、発病するかどうかはその人による。
 ガンを発病する人が出てくるとしても、それが10-20年後になる場合もあるし、遺伝子による病気がその人ではなく、その子どもに出る場合もある。
 しかも発病の原因が放射能被ばくであるかどうかを実証することは難しい。

 骨髄が被ばくすると白血病になる。また白血病にならなくても免疫力が落ち、伝染病に罹りやすくなる。虚弱体質になったり、貧血になる。

 被ばくすると視力が落ちる。数年後白内障になる。失明するかあるいはほとんど失明に近い視力になる。
(この本ではベラルーシに白内障患者が増えることを、すでに予想していたわけです。)

 妊娠8-15週目が被ばくの影響を胎児が一番受けやすい時期なので、注意が必要。
  
 低量被ばくによる特別な健康への影響はない。しかしいくつかの種類の病気を促進することがあるので、低量被ばくが無害である、とは言い切れない。0.1から1シーベルトの範囲内の被ばくでも奇形や変形を持つ新生児が生まれてくる率が2倍に増えた。
  
 ガンについてはまず最初に現れるのは白血病で、被ばくして5-25年後に現れる。
 その次に乳がん、甲状腺がん、肺がんなどが現れる。
(この点については予想が外れています。特に子どもの甲状腺がんはこの本が発行された1990年に増え始めました。早くて5年後に白血病が現れてから甲状腺がんが出てくるとした予想ですが、実際には事故が起きてから4年後には甲状腺がんが増えました。)

 年齢が低いほど白血病の発症数のピークは早く来る。(若い人ほど、事故後早い時期から発症者数が増える、ということです。)
 しかしそれ以外のがんの数は時間が経てば経つほど増えるであろう。

 チェルノブイリ事故後は貧血、心臓病などさまざまな病気が増えた。
 免疫力の低下も見られる。事故前にはなかったことである。(事故後4年間の調査結果です。)

 まだ被ばくが与える影響についての研究は進んでいない。

 アルコール飲料の摂取が被ばくを防ぐ、と言う人もいるが定かではない。しかし汚染地域でアルコールを常飲している人の中に体力低下が見られるので、アルコール飲料の多飲は勧められない。
(現在ではアルコールが被ばくを防ぐ、という説は否定されています。赤ワインを奨励する医者もいますが、これは免疫力アップのためで、被ばくを防ぐ物ではありません。)

 今後、病気の種類や経過を詳しく観察しなければいけない。特に原発で事故処理作業をした人々の健康はより詳しく見守らないといけない。
 研究や調査をすることによって、発病リスクについての理解も深まり、対策方法を考え出すこともできる。
 それを将来生かすこともできる。もし、将来この地球上で同じような事故が繰り返されることがあれば、であるが。

(この文で発病リスクの章が終わります。この最後の部分を読んで泣きたくなりました。)

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