電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ガーシュイン(ベネット編)交響的絵画「ポーギーとベス」

2005年07月21日 21時36分02秒 | -オーケストラ
通勤の音楽、現在はガーシュイン(ベネット編)交響的絵画「ポーギーとベス」を聞いている。アンタル・ドラティ指揮デトロイト交響楽団の演奏で、1982年にデジタル録音されたものだ。(F35L-50052)
この曲、出谷 啓氏 の解説によると、フリッツ・ライナーの依頼で、ロバート・ラッセル・ベネットが、歌劇の旋律や断片を元に組曲にしたものらしい。1942年の2月、ピッツバーグ交響楽団の定期演奏会で、フリッツ・ライナーの指揮で初演され、圧倒的な成功を収めたという。
全体の印象は、ジャズ風というよりはシンフォニックな方に傾いたものだが、おなじみのガーシュインの曲が次々に登場し、新鮮で楽しい音楽になっている。演奏時間は 23'53" と短いが、思わずリピート再生ボタンを押してしまう。

1942年といえば、アメリカに亡命したヨーロッパの音楽家たちが、アメリカに受け入れられようと苦労していた時代である。ライナーとガーシュインという組み合わせも、ライナーがジャズファンだったからというより、別の文脈で理解されるべきだろう。ちょうど、ジョージ・セルが彼の編曲した管弦楽版のスメタナ/弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」等を引っさげて、米国各地のオーケストラを指揮して歩いていた時期にも重なるし、バルトークがアメリカで受け入れられず、失意と貧窮の内に健康を害していく時期にも通じる。

わかりやすく受け入れやすい音楽を提供できる者、強面で自分を押し出していける政治力を持っている者は受け入れられ、難解で取り付きにくく、シャイで内省的な者は取り残される。戦時のアメリカには、こういう側面がある。しかし、ライナーもセルもバルトークも、それぞれに生きるために努力したのだ。バルトークの悲劇に照らし、同国人のライナーやセルのあり方を安直だと決め付けるのは当らないだろう。

同時に収録されたグローフェの組曲「グランド・キャニオン」も、屈託のない、楽しい音楽だ。バルトーク「管弦楽のための協奏曲」の厳しさと生命力に感嘆するとともに、時折こういう音楽を聞くのは、よい気分転換になる。
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2 コメント

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私はマゼール (よし)
2005-07-22 11:13:00
こんにちは

トラックバックありがとうございます。

私はマゼール、クリーブランドのLPで全曲を持っていますが、あまり聴くことはありません。組曲の方が良かったですね。

ただ歌を聴いていて「サマータイム」はベスではなく近所の住人の歌だということが分かりました。

サマータイム (narkejp)
2005-07-22 21:18:38
よし さん、こんにちは。コメントをありがとうございます。

「サマータイム」、私はエラ・フィッツジェラルドのボーカルでこの曲を知りました。「ポーギーとベス」は、まだ全曲を聞いたことがありません。機会を見て、全曲を聞いて見たいですね。

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