電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ」を聞く

2006年07月15日 09時55分08秒 | -室内楽
長い出張も終わり、ようやくくつろいでいます。コーヒーを飲みつつ雨音を聞きながら、心からほっとします。この期間、一番よく聞いたのがこの曲。なにせ持参した携帯型CDプレイヤーに入れっぱなし。移動時はイヤホンで、朝晩はPC用小型スピーカで同じ曲をずっと聞いていました。演奏は、ジャン=ジャック・カントロフのヴァイオリン、ジャック・ルヴィエのピアノ。1982年8月、オランダのハーレム、コンセルトヘボウでのデジタル録音。フランクのヴァイオリン・ソナタとカップリングされた、お気に入りのCD(デンオン盤)です。

第1楽章、アレグレット。ヴァイオリンの旋律はいかにも感覚的な印象派ふう。かと思うとピアノのパートはまだ親しげな要素があり、対比的に描かれているみたい。
第2楽章、ブルース~モデラート。都会の場末のブルース。田舎のファンキーなディキシーランドジャズではない。
第3楽章、初めから終わりまで同じ速度で~アレグロ。16分音符が爆発する、細かい音が高密度にぎっしりつまった華麗な音楽。

1927年に完成されたこの曲には、ジャズ風に感じられるところもあり、ロマン的心情とは異なる感覚的な新鮮さがあります。これはたぶん、世紀末の雰囲気をひきずった20世紀初頭の空気なのでしょう。この時代に育った若者達に、基本的には即物的なスタイルを示しながら、音色やリズムやフレージングに限りないニュアンスをこめるようにさせた、そんな時代の空気。

ちなみに、ヴァイオリニストの五嶋みどりさんがこんな解説(*)をしています。

(*):モーリス・ラヴェル、ヴァイオリンとピアノの為のソナタ ト長調 (1923-27年作曲)
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2 コメント

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望 岳人 さん、 (narkejp)
2006-07-19 19:45:56
コメントありがとうございます。吉田秀和さんは、『私の好きな曲』という本の中で、この曲は実は好きな曲には属さない、と書いていますが、それって反則ですよね(^_^;)>poripori

ラヴェルなので、逆説的表現を用いた、ということなのでしょうけれど。

五嶋みどりさんの説明は見事だと思います。

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ラヴェルのVnソナタ (望 岳人)
2006-07-19 08:42:31
おはようございます。フランス系のヴァイオリンソナタでは先日のフランクがやはり傑作だと思いますが、このラヴェルやドビュッシーのものも聞き応えがありますね。私もBlogのプロフィール内のMusik欄にも書きましたが、吉田秀和「私の好きな曲」にこの曲が掲載されており、カントロフ盤でようやく理想の演奏にめぐり合えました。
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