電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ジョージ・セルは学校教育を受けていなかった

2022年09月06日 06時01分14秒 | クラシック音楽
マイケル・チャーリー著『ジョージ・セル〜音楽の生涯』(伊藤氏貴訳、鳥影社)を読んでいる中で、興味深い事実に気づきました。クリーヴランド管弦楽団を率いて20世紀の最高峰オーケストラの一つに育てた指揮者で、しかも帝王カラヤンが最も尊敬したという大指揮者ジョージ・セル(*1)の少年時代の話です。

ユダヤ人の両親のもとに生まれたセルは、幼い時期から音楽の才能を見出され、神童として早くから音楽の専門的な教育を受けますが、それは早くから個人レッスンの形を取り、集団の中に放り込まれる学校教育を受けたことがないようなのです。このことは、音楽を専門とする大人たちの中で注意深く純粋培養されるようなもので、専門的な才能を育て開花させるのには優れていても、同年代の子どもたちの中で洗礼をうける荒々しい人間関係の圧力や挫折を通じて身をもって知る手加減や優しさなどというものを、あまり思い知ることなく育った可能性がある、ということです。

何よりも音楽に最高の価値を置き、その実現のためには、例えばモーツァルトのニ短調協奏曲の録音の際にケンカ別れしたカサドシュのように、長年の友人関係がギクシャクする、あるいは破綻することをも厭わないという姿勢は、いったいとこから来るものだったのか。音楽に関して妥協を知らないいくつかのセルのエピソードの背景を理解する上で、説得力のある、あるいは納得できるものです。

(*1): カール・ライスターの「一番印象深かった録音」〜「電網郊外散歩道」2005年5月



ところで、YouTube よりセルの指揮ぶりやインタビュー等を探してみました。

まずは、彼の指揮ぶりです。ベートーヴェンの交響曲第5番のフィナーレを指揮しているところ。
Szell/Cleveland LIVE CONCERT FOOTAGE!!: Beethoven symphony no.5 finale (9分38秒)


次に、ジェイムズ・レヴァインたち3人の若い指揮者たちに対して指揮の指導をするジョージ・セル。
George Szell with Three Young Conductors (7分11秒)


デッカの名プロデューサー、ジョン・カルショウが著書『レコードはまっすぐに』でも触れているインタビュー。
George Szell interview with John Culshaw (56分)


ウィーンフィルとの演奏会(1966年、ウィーン芸術週間)、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番(Pf:グルダ)、ブルックナー「交響曲第3番」(1時間46分)
George Szell & Wiener Philharmoniker - Orchestra Concert of 1966 Wiener Festwochen


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