電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

「山響クロニクル〜50年の軌跡」(15)可能性を信じて・(16)新しい音へ

2022年08月15日 06時00分01秒 | クラシック音楽
地元紙・山形新聞に連載中の「山響クロニクル〜50年の軌跡」、第15回「可能性を信じて」(8月2日付)および第16回「新しい音へ」(8月8日付)は、私が定期会員となった頃の山形交響楽団の歩みを振り返るものです。若手指揮者の中でも期待のホープであった飯森範親さんが山響の常任指揮者を引き受けたことについて、周囲からは(たぶん引き留めようとする善意?から)、「都落ち」などと冷たい反応があったらしい。でも、ドイツの地方都市と似た雰囲気を持つ山形の地域性に好感を持ち、山響の持つポテンシャルを引き出そうと考え、冷たい言葉を逆にモチベーションとして、様々な試みを開始します。コンサート開演前のプレトークやカラー印刷の年間プログラム案内パンフレット、音響と椅子の座り心地が良い山形テルサホールでの土日二回公演など、現在の山響のスタイルを確立していきます。



さらに、記事には地元の菓子メーカーとありますが、おそらくはシベールの後援を得て、自主レーベル「YSO-Live」を立ち上げ、自主録音CDを発売します。第1回のタイトルは、ハイドンの交響曲第85番「王妃」とシューマンの交響曲第4番ニ短調でした。私もこのCDを皮切りにずっと購入していますが、なじみのホールでの響きをかなり再現した録音もあって、ずいぶん楽しみました。



その後、R.シュトラウスの交響的幻想曲「イタリアから」とビゼー「アルルの女」第1組曲・第2組曲だとか、モーツァルトの交響曲第31番「パリ」・第39番・「アヴェ・ヴェルム・コルプス」などのCDが次々にリリースされ、定期演奏会で入手するのが楽しみでした。中でも、記事中でも指摘されているブルックナーの交響曲については、第4番を手始めに、第3番、第1番、第5番、第6番、第7番と、山響のオリジナル編成を基本とし、ピリオド奏法とピリオド楽器を取り入れた純度の高い響きを聴かせる録音が次々に発表され、私の小規模なLP/CDライブラリーの中であまり充実しているとは言えなかったブルックナーの、最新録音によるまとまったシンフォニー群を加えることができ、嬉しいことでした。



山響のCDは、モーツァルトの交響曲全集のうち、第40番がモーツァルト自身が書き直した「クラリネットなし」版と「あり」版とが比較できたり、シューマンの交響曲第4番がブラームスが推した初稿とクララが推した改訂版と両方の録音があったり、同じホール・同じオーケストラでの両者の響きがどう違うか、マニアックな比較ができるという観点でも興味深いものがあります。



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