電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第289回定期演奏会で芥川也寸志、プロコフィエフ、ベートーヴェンを聴く

2021年01月18日 06時01分51秒 | -オーケストラ
日曜の午後、妻と二人で、山響こと山形交響楽団の第289回定期演奏会に出かけました。少し早めに出かけて駐車場を確保、駅ビルで少し買い物をして、山形テルサホールに向かいました。このあたり、駐車場や交通の便が良いホールの立地の大切さを感じます。建物内に入ると、まず手指消毒、チケットの半券の裏に氏名と電話番号を記入して自分で「もぎり」パンフレット等も自分で取ります。本日の座席は二階席の正面ほぼ中央、文句なしです。お客様の入りは最前列を除きほぼ埋まっていますので、まずは通常どおりでしょう。

さて演奏会ですが、本日の曲目は次のとおり。

  1. 芥川也寸志:交響三章
  2. プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
  3. ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
      阪哲朗 指揮 山形交響楽団、辻 彩奈(Vn)

このうち、1曲めの芥川也寸志さんの曲は、初めて聴きます。芥川龍之介の息子で三男だとか、N響アワーの司会者だったとか、ダンディなオジサマでベストドレッサー賞の常連だったとか、そんなような雑学は知っていても意外に作品は聴いていないもので、文字通り初体験です。

ステージ上の楽器配置は、中央左から、第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)、左手奥にコントラバス(3)の対向配置です。正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、その奥にホルン(4)、トランペット(2)、最奥部にティンパニとトロンボーン(2)、ティンパニの左にバスドラムとスネアドラム、その反対側、ヴィオラと第2ヴァイオリンの右手奥にピアノが据えられています。

第1楽章:カプリッチョ、アレグロ。ファゴットの音から始まり、クラリネットへ、フルートから弦、さらにピアノも加わって賑やかにカプリッチョ風に。リズムがいきいきとしていて自動車のクラクションのような音があったり響きも面白いです。第2楽章:子守唄、アンダンテ。ファゴットが奏でる子守唄がクラリネット等管楽器や弦楽で変奏されていくうちに哀感を持った音楽になっていく、一種独特の緩徐楽章です。第3楽章:フィナーレ、アレグロ・ヴィヴァーチェ。一転して活力ある元気いっぱいの音楽に。ピアノも加わり、エネルギッシュな迫力があります。戦争が終わって軍楽隊から音楽学校に戻った23歳の青年作曲家が1948年に完成させた、喜びや悲しみをストレートにぶつけたような音楽といえばよいのでしょうか、なかなか魅力的な曲ですね〜。

2曲めは、大好きなプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番(*1)です。楽器編成は、弦楽が 8-7-5-5-3 の対向配置、Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)、Hrn(2)-Tp(2)、バスドラム、スネアドラム、シンバル、トライアングル、カスタネットというもので、カスタネットというところがスペイン演奏旅行の完成と初演が影響しているところでしょうか。

ステージ上に青のドレスの辻彩奈さんが登場、第1楽章:アレグロ・モデラート、独奏ヴァイオリンの低い音で始まりますが、この始まりの旋律でぐいっと音楽に引き込まれます。オーケストラも、時折チェロとコントラバスがドスのきいた低音を響かせるだけでなく、どこか船の霧笛のような響きも聞こえたり、ミステリアスな雰囲気と緊張感を持った音楽です。第2楽章:アンダンテ・アッサイ。弦のピツィカートの中、独奏ヴァイオリンが叙情的で優しい旋律を奏でます。ヴァイオリンの音が、まるでステージからホールの上方に上がっていくような風情。いいなあ。このあたり、奏者も至福の表情。ところで、CDで聴いているときは何の音かわからなかった豆腐屋のラッパみたいな面白い音、あれはトランペットのミュート効果だったのか! 実演だからわかる発見です。第3楽章:アレグロ、ベン・マルカート。ロンド風のところにはカスタネットが繰り返し効果的に入り、バスドラムが腹にこたえるドスのきいた音で迫る、エネルギーに満ちた迫力あるフィナーレです。いや〜、今回のゲスト辻彩奈さんの演奏、素晴らしいです! 大好きな曲を、ほんとに堪能しました。

そして、聴衆の大きな拍手に応えて、アンコールを。

J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番
       III ロンド風ガヴォット

生真面目というよりはむしろちょいと小粋なバッハでした。良かった〜!



ここで、20分の休憩が入り、後半はベートーヴェンの交響曲第7番です。年配者の曲目解説だと、ワーグナーが言ったという「舞踏の〜」などという紹介があるのでしょうが、今や「ほら、あの、のだめカンタービレのテーマソングだよ!」と言えば通じてしまうというところがすごいです(^o^)/
で、ある時期にはものすごい人気で、「運命」よりも頻繁に演奏したのだそうな。演奏する側から見れば、一種、食傷気味のところがあったのかもしれませんが、あいにくこちらは遅れてきた「のだめ」ファンですので、そんなに食傷するほどには聴いていません(*2)し、直近の演奏会は2016年6月、鈴木秀美さん指揮の第253回定期演奏会(*3)以来ですからもう5年も前のことです。阪哲朗さんがしなやかに指揮する「第7番」はどうか、興味が持たれます。楽器編成は、Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)、Hrn(2)-Tp(2)、Timp、8-7-5-5-3 の弦楽5部、対向配置、というものです。もちろん、ホルンとティンパニはナチュラルタイプ、ティンパニもバロック・ティンパニです。

第1楽章で、フルートが導いてやがてのだめのテーマが爆発するところ、何度聴いてもいいなあ! 第2楽章:ヴィオラとチェロが重なる響きがいいなあ。まさに堂々たる歩み。そういえば、映画「英国王のスピーチ」で緊張高まる世紀のスピーチの場面が、たしかこの曲だった。第3楽章:某作曲家がテレビの「N響アワー」で紹介した「だーめよ、だーめよ、もうだめだわ〜」が忘れられず、どうしても連想してしまうのだけれど、Timp. の連打が抜けの良い音を聞かせ、快感です。第4楽章:思わず興奮するような、たたみかける音楽、「のだめ」の画面を彷彿とさせる熱狂的なフィナーレです。

今回も、良い演奏会でした。冬の夜道を自宅に帰る車中で、妻と二人、「良かったね〜」「また来たいね」。ほんとに、新型コロナウィルス禍の渦中にあって、オーケストラの定期演奏会を楽しめる山形の現状に感謝しなければいけません。



(*1):プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2009年2月
(*2):ベートーヴェン「交響曲第7番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2009年9月
(*3):山形交響楽団第253回定期演奏会でメンデルスゾーン、ハイドン、ベートーヴェンを聴く〜「電網郊外散歩道」2016年6月

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