電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第2部「神殿の巫女見習い」第1巻を読む

2017年12月17日 06時03分28秒 | -香月美夜
下町の貧しい兵士の娘として生まれたマインは、現代の22歳の大学生として育った記憶を持つ子供でしたが、「身食い」という病気が実は持って生まれた魔力のせいだということが判明、本が読みたいという一念で神殿に突撃し、貴族に準じる青色巫女見習いという資格で神殿に通うことになります。生粋の貴族ではあるけれどマインの理解者の立場に立つ神官長は、自分を威圧し卒倒させたマインを嫌う神殿長からマインをかばい、神殿のために魔力を利用しようと図ります。マインのために付けられた側仕えのフランと見習いのギルとデリアとは、はじめの頃はしっくりいきませんが、しだいに理解し合えるようになります。

本巻での大きな出来事は、まず孤児院の改革でしょう。マインにとっては、自分が心安らかに読書に専念できるようにという動機ではありましたが、ルッツの励ましとベンノらの応援を得て、孤児たちが自力で食料と薪を稼ぐことができるように、マイン工房孤児院支店を開設、紙作りを教えます。たしかに、紙の生産は小規模家内工業では普及が難しいでしょう。複数の工房が植物紙作りに携わることで生産量が拡大し、使用量に見合った供給が可能になります。もっとも、魔力を吸収して急激に成長するトロンベを材料にした高級紙なんてのは、ごく希少性が高いですが(^o^)/

もう一つの「事件」は、ルッツの進路問題。ルッツは商人になりたいのに、両親はそれを認めてくれないと嘆くルッツは、ついに家出を決行。マインは神官長に相談しますが、貴族が平民の問題に口を出すなどまれなことです。無口な父親と息子の和解を仲介した神官長の名前はフェルディナンドというのでした。



本作りに情熱を燃やすマインには、なんとなく親近感を覚えます。本書は WEB版で読んだのが最初ではありましたが、やっぱり紙の本で読みたいと思ってしまうところに、マインに対する共感の所以がありそう。

ところで、マイン(mine)の名前は「私のもの」という意味ですが、前世の名前「麗乃(うらの)」というのも、実は「私の」という意味で付けたのか。「資源、宝庫、鉱山」という意味では……この後の湧き出る泉のように知識を提供することを思えば、そういう意味も成り立ちそうな気もします。二重の掛詞になっているのかもしれません(^o^)/

コメント