藤沢周平のハードボイルド・ミステリー時代小説(?)第2弾、彫師伊之助シリーズの続きで、『漆黒の霧の中で』を読みました。伊之助は、相変わらず彫藤で版木彫り職人を続けています。おまさとの関係は進展していますが、残念ながら一緒の所帯を持っているわけではなく、店の二階で公然の仲、というだけ。このへんは、前作の結末から見て、ちょいと腑に落ちないところもあります。一人暮らしに馴染んでしまうと、なかなか思い切れない、ということはあるかもしれませんが。
さて、今回は、伊之助が不審な水死人を見かけるところから始まります。仕事場を訪ねてきた南町奉行所の同心の石塚の依頼で、水死人の身元を調べ始めるのですが、伊之助の昔の稼業を知らない親方は、探索のため休んだり早退したりすることを、快く思いません。同心の石塚は、直下の岡っ引が年をとってしまい、探索も滞りがちなのを見て、伊之助に依頼したのでした。さらに第二、第三の殺人が起こりますが、探索の時間をひねり出すのが、なかなか難問です。このあたり、業界新聞に勤めていたサラリーマン時代の経験を生かしているようです。
せっかくのミステリーですので、結末は省きますが、しかし冒頭の表現、
いや、実にうまいものです。若葉の頃の見事な描写、比喩の見事さ!
さて、今回は、伊之助が不審な水死人を見かけるところから始まります。仕事場を訪ねてきた南町奉行所の同心の石塚の依頼で、水死人の身元を調べ始めるのですが、伊之助の昔の稼業を知らない親方は、探索のため休んだり早退したりすることを、快く思いません。同心の石塚は、直下の岡っ引が年をとってしまい、探索も滞りがちなのを見て、伊之助に依頼したのでした。さらに第二、第三の殺人が起こりますが、探索の時間をひねり出すのが、なかなか難問です。このあたり、業界新聞に勤めていたサラリーマン時代の経験を生かしているようです。
せっかくのミステリーですので、結末は省きますが、しかし冒頭の表現、
藍を溶いたような空がひろがっている。その空にわずかな風が動いて、塀のうちの木の梢をゆするのがみえた。若葉の梢は、風が吹き過ぎるたびに、いたずらを仕かけられた小娘のように、大げさにさわいて日の光をはじく。
いや、実にうまいものです。若葉の頃の見事な描写、比喩の見事さ!