電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第五部「女神の化身I」を読む

2020年04月10日 06時02分26秒 | -香月美夜
新型コロナウィルス感染者の拡大で世情は不安がつのる中ではありますが、それでも平凡な日常の価値は不変です。例えば好きな音楽を聴き、おもしろい物語にひたることなどでしょうか。おもしろく読んでいる香月美夜著『本好きの下剋上』は、いよいよ第五部「女神の化身」の始まりです。先月の発売日に購入し、通読した後に少し寝かせて印象をあたため、再読したところ。

ローゼマインの庇護者であったフェルディナンドがアーレンスバッハに旅立ち、プロローグは重要な登場人物となるヒルデブラント王子のお披露目の場面から。続いてエーレンフェスト内の粛清の引き金が引かれ、アーレンスバッハの第一夫人に昇格したゲオルギーネに忠誠を誓う一派は一掃されますが、貴族院の学生たちの様子は多少の動揺はあってもローゼマインの影響力のほうが圧倒的に大きいようです。大領地ダンケルフェルガーもドレヴァンヒェルも、また王族のアナスタージウスとエグランティーヌ夫妻も、ローゼマインの破格さに注目しています。

WEB 本編ではあまり強調されてはいませんでしたが、単行本への書き下ろしで明らかにされてきているのが、政変にともなう図書館の悲劇でしょう。「短編集」でも一部描かれていましたが、オルタンシアのエピソードには司書たちが犠牲になった事実が描かれ、権力と図書館の独立性というテーマが背景となっているようで、このあたりはライトノベルらしからぬ大人の味わいです。

なお、ローゼマインが楽器フェシュピールを奏でる場面のモデルは、作者によればナターシャ・グジーさんのパンドゥーラなのだそうです。イメージとしてはこんな感じでしょうか。YouTube から、「鳥の歌」。

Song of the Birds ( El Cant dels Ocells ) by Nataliya Gudziy / 鳥の歌 ・ ナターシャ・グジー


第五部第2巻は、順調に行けば6月10日に刊行予定とのこと。その頃には、できればコロナ禍も少しは落ち着いていると良いのだけれど。


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