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リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

アキラHLガット弦試用メモ

2021年05月04日 12時43分54秒 | 音楽系
アキラの撥弦楽器専用のガット弦、HLタイプの弦をバロックリュートの1コースに張ってみましたので、その試用メモを書いてみたいと思います。

楽器:ラース・イェンソン作のバロック・リュート、弦長71cm/75.5cm
期間4月23日~29日
天候:室内は湿度20度~23度、湿度40%半ば~50%半ばを24時間保つ。
演奏曲目:音階練習、3コース開放のa~10フレットのesまでバス付。大体30~40分。その後にヴァイスのソナタ第39番ハ長調プレスト。

(表示の時間は演奏時間の累計です)

1)0.42mmを1コースに張る。

1時間くらい弾いた後ブリッジ付近にほつれが見られる。ケバは出ていない。
2時間演奏後、右手の弾弦位置あたりにケバ。
3時間後左手側に少しほつれ。音的にはやや暗くなるがなんとか。
5時間後4フレット8フレットあたりに少しほつれ。音が暗くなる。
6時間半後、音はさらに暗くなる。(ボコボコの音になる)

ここでタオルのTKOです。切れてはいないが、音色的使い物になりません。それとかなり早い段階で音程が悪くなってきています。1時間経過後のほつれが見られたころあたりか。

2)0.40mmに交換

テンション的にこちらの方があっている。テンションはナイロン0.44=ガット0.40です。
0.42mmと比べるととても深みがあるけど明るく美しい音。
2時間半後、音色的には問題なし。しかし1フレット手前に小さなケバ。
4時間半後、1、2フレットあたりにケバが出てくる。途中で音色が暗くなり、この時点でもはやガット弦の優位性はなくなる。

ということでここでタオルです。ナイロンの0.42mmに交換しました。

3)番外編

キュルシュナー0.36mm。3kgちょっとのロー・テンションですが音エネルギー的にはなんとか。しかし2本張ってみましたが、2本とも振動不良できちんとした音程の音が鳴っていません。音程とか音色以前の問題です。よって試用対象外です。

まとめ

アキラのHLは何年か前に試したガムート弦のビーフよりは持ちがいいとは思います。ガムートは弾いているうちにほつれやケバが出てきたからです。しかし張ったハナはとても美しい音の0.40mmでもその音色が3時間くらいしか持たないのでは、本番で使うのは無理です。前日に交換して、リハーサルが終わったあとまた替えて演奏するというリスキーな方法もありますが。ヴァイスは「・・・私は演奏を聴かせようとするときに弦を張り替えるなどしたことはほとんどないのです。・・・」(マッテゾンへの書簡)と言っていますので、ヴァイスよりはるか格下の私なんぞが本番前に何度も弦を交換するというようなことをするとロクなことがありません。美しい音色がせめて10時間演奏くらい持ってくれるといいのですが。

何時間使ったら切れるかについては、ボコボコの音で切れるまで練習を続けるのは時間の無駄ですの試してはいません。そもそも張ったハナの美しい音がなくなりボコボコになってしまった時点でガット弦の優位性は全くなくなります。ナイロン弦の方がはるかにいいです。余談ですが、ナイロン弦はガムート社のものが一番です。音程、振動状態、音色いずれも他社のものよりいいです。さすがガット弦のメーカー!?

今回の試用は、弦を下から上まで使い速い動きの楽曲を使ってのハードなものでしたが、そうでない楽曲でも多少はもち時間は増えるでしょうが似たようなものでしょう。ガット弦を張って弾かないのが一番長く美しい音色を保つ秘訣かも。でも弾かないで張っておいたままでも遠からず音色はボコボコになってくるでしょう。さすがにどのくらい時間が経ったらそうなるかの検証はアホらしくてできません。