リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

名古屋ギターコンクール(2)

2007年12月11日 11時20分22秒 | 音楽系
S君は、課題曲を6人の中で一番端正にきちんと弾いていました。課題曲はF.ソル作曲の練習曲ハ長調で、古典的な様式感、ポリフォニックな処理が求められる、ギタリストにとってはなかなか難しい曲です。S君の演奏は古典曲をきちんと勉強してきたということを伺わせるものでした。ただトータルに見るととややおもしろみに欠ける演奏で、自由曲はI君よりも低くつけました。I君を二位にしてしまったのは、ソルの課題曲の出来によるものでしたが、ソルの出来具合から見る限りは、現時点ではS君のバックグラウンドはI君よりかなりきちんとしていると言わざるを得ません。

ただ将来性を見据えると、I君が一番有望だろうと思います。しかし彼にはリズムのノリが日本語的であるという問題点があり、これは全ての曲に見られました。古典の曲ももう少したくさん弾いて、他の楽器の上手な人なら必ず身につけている基本的なことをきちんと身につけるべきだと思います。

日本のクラシックギターの世界では、基本的な約束事が全くできてない演奏をするギタリストであっても上手いギタリストだって言われることがあるように私は感じています。だからいつまでも日本のギター界に身をおいていてはだめで、ヨーロッパのどこか、他の楽器の人たちといつも交流ができるような地で勉強したら、彼ならこれらのことはすぐに克服できるのではないかと思います。