【前編】で紹介したように、
ジャン・マリー・ギュファンス氏は、以下のブランドを展開しています。
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Maison Verget:仏ブルゴーニュ地区(シャブリ、コート・ドール、マコネ)のネゴシアン
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Verget du Sud(ヴェルジェ・デュ・スッド):南仏コート・デュ・ローヌのネゴシアン
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Chateau des Tourettes(シャトー・デ・トゥレット):コート・デュ・ローヌの自社畑ワイン
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Domaine Guffens-Heyne(ギュファン・エナン):マコネのドメーヌ
自身のドメーヌDomaine Guffens-Heyneを持つようになったものの、自社畑は3.5ha、年間生産量は17,000本と少ないため、やはりネゴシアンワインが多くなります。
すでに出来上がったワインを買うネゴシアンが多い中、ジャン・マリー・ギュファンス氏は
ブドウから買い、自分で醸造を行います。
しかも、ただブドウを買うだけではありません。
長い付き合いの中で、栽培者に自分の思いを伝えてきた
よって、ネゴシアンであっても、いつ収穫させるか決めることができる、と言います。
「Maison Verget」ではブルゴーニュ各地区の
農協から、
「Verget du Sud」ではコート・デュ・ローヌの
農協からブドウを買うことで、
よりリーズナブルに楽しめるワインを生産しています。
「Verget du Sud」では、
マルサンヌとルーサンヌのブレンドワイン(
Vin de Pays de Vaucluse Marsanne Rousanne 2009)、
ルーサンヌの単体ワイン(
Vin de Pays de Vaucluse Rousanne 2009)が個性的で、かつプライスも魅力的で(前者1,600円、後者1,800円)、一度は飲む価値ありです。
白ワインにこだわるジャン・マリー・ギュファンスですが、実は、
ヴェルジェ・デュ・スッドの赤ワイン (
Au fil du temps NV、Vin de Table 1,500円)や、
自社畑のブドウ(シラー85%+グルナッシュ15%)からつくる赤ワイン(
Guffens Rouges /Rouge enfin 2007 Chateau des Tourettes 2,000円)もあるんです。
これらも個性的なワインなので、機会があれば、ぜひ試してみてください。
さて、
「メゾン・ヴェルジェ」では、ブルゴーニュの
シャブリ、コート・ドール、マコネの3地区において、幅広いラインナップのワインを生み出していますが。彼のワインづくりの考え方を聞くと・・・
シャブリはミネラリティがポイント
多くの人は、シャブリで重要なのは“酸”だというが、酸はストラクチャーとなり、ボディーをキープするもので、中に隠れている存在である。
かつて、シャブリは酸っぱいワインだった。
だが、ヴェルジェでは、
熟した酸を目指している。
しかし、
大事なのは酸ではなく“ミネラリティ”である。
石の土壌+ブドウの成熟が遅いことがワインにミネラリティをもたらす
ハングタイムが自然と長くなるような場所を選べば、2003年のような猛暑の年でもミネラリティを備えたワインをつくることができる。
マコネ はブルゴーニュの中では南部に位置しながらも、畑の
標高がコート・ドール(200m)よりも高いところ(300m)があるため(プイイ・フィッセになると340m)、収穫時期に影響を及ぼす。
左)
Pouilly-Fuisse "C.C." 2008 Guffens-Heyne (輸入元希望小売価格 8,300円)
右)
Macon Pierreclos "Tris de Chavigne" 2008 Guffens-Heyne (同 7,000円)
よって、メゾン・ヴェルジェとドメーヌ・ギュファン・エナンでは、通常の年の収穫順は、
シャサーニュ・モンラッシェとムルソー → マコネ → シャブリ → ドメーヌワイン
(マコネ地区のドメーヌワインが、北のシャブリよりも遅くなるのは面白いですね)
Macon-Vergisson "La Roche" 2009 Vergert (同 2,600円)
コスパ抜群で超オススメしたいのが、マコン-ヴェルジッソン“ラ・ロッシュ”。
果実味がソフトで、うま味があり、余韻も長く、滋味。
私のイチオシワインです
Macon Pierreclos "Les Chavigne" 2008 Guffens-Heyne (同 5,300円)
同じマコンでも、ドメーヌワインのピエールクロ ”レ・シャビニョル”になると、
より透明感のあるピュアな味わいになり、ミネラル感がしっかり現れます。
上で紹介したMacon Pierreclos "Tris de Chavigne" 2008 Guffens-Heyne(7,000円)も非常に近い味わいですが、プライスを比較すると、”レ・シャビニョル”はかなりお得感があると思います。
Pouilly-Fuisse "Clos des Petits Croux" 2008 Guffens-Heyne (同13,000円)
これは、
ミネラルの引き締まり感が素晴らしい!
生産量の少ないワインなので、さすがにお値段もステキですが。
【前編】では、
「樽は発酵時のみ使い、熟成には使用しない」 と書きました。
しかし、
熟成のある部分には樽を使う。
ただし、
比率は自由で、ルールは決まっていない。
知性と創造性が大事、と彼は言います。
樽を使う場合でも、10カ月を超えては入れません。
また、
よいアペラシオンだから新樽を使う、比率を高くする、とは限らない、と言います。
例えば、2,500円のMacon-Village 2009 Verget や、2,800円のACブルゴーニュ(Bourgogne "Grand Elvage" 2009 Verget)には新樽を使っているが、6,000円のChablis Grand Cru Bougros 2009 Verget には全く使わず、コンクリートタンクのみ。
Bourgogne "Grand Elvage" 2009 Verget (同2,800円)
これが、発酵の際に100%バレル(うち新樽15%)を使ったACブルゴーニュ。
ふっくらとした果実味のふくよかさがありますが、酸+ミネラルもしっかりあり、余韻にまでずっとつながっています。
プライスもアペラシオンの格も、ワインづくりにおいては関係ない
なぜ人は考え方を変えないのか?
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考え方を持っていないからだ
彼は、
決まったことを持たない。レシピを使わない料理と同じだ、と言う。
彼は、
ゴールキーパーのような柔軟さで、瞬間的、動物的アプローチでワインをつくる。
実は、彼は元建築家。
設計はお手の物であるはずだが、
設計通りにいかないのがワインづくり。
選択肢が少ない中で表現している、と言う。
文学、例えば26文字の詩、俳句や短歌もそうだが、
制約の多い中でも大いなる自由がある。
だが、バケツに入った絵の具をキャンバスにぶちまける自由ではない。
ジャン・マリー・ギュファンスの言葉をひとつひとつ噛み締めていくと、
だからこそ、その先にあるワインがこうなるのだな、と、スルスル紐が解けるようです。
彼の言葉を生かし、今までにはないスタイルで紹介してみましたが、皆さんに伝われば幸いです。
(輸入元:株式会社 八田)