ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

トスカーナ州マレンマでオーガニックワインに挑戦

2011-12-12 16:55:46 | ワイン&酒
イタリアのトスカーナ州には、キアンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノといった伝統的名醸地がいくつもありますが、注目の新ワイン産地が多いことでも知られています。

例えば、ボルゲリ、マッサ、ピサ、スヴェレート、スカンザーノ、オルチャ渓谷etc...
サッシカイアのあるボルゲリは、もう新産地とはいえないほど成熟してしまいましたが。

トスカーナの伝統的ワイン生産地は内陸の丘陵地にありますが、上記に挙げた生産地は、オルチャ渓谷を除きすべてティレニア海に面した西トスカーナのエリアになります。

西トスカーナは内陸に比べると気候が温暖で、土壌は砂や粘土が多くなります。
収穫は内陸より早くなり、ワインはボリュームがあって甘味が多いのが特徴といわれます。



今日紹介するのは、スヴェレートを含む マレンマ地方 です。
マレンマ地方は、ティレニア海に近い西トスカーナのグロセート郊外(トスカーナ南西部)から南のラツィオ州にかけて広がる地域です。

マレンマ地方は1980年代頃から次第に注目され始めましたが、よく名前を聞くようになったのはここ10年くらいでしょうか。
元々は大きな湖を含む湿地帯で、20世紀に入ってからムッソリーニによって干拓されましたが、未開墾や休耕地が多い土地でした。
しかし、それが逆にブドウを植え替えたり、新しく植えたりするのに好都合となったようです。

特に、アンティノリ、フレスコバルディ、ガヤといった著名生産者らがマレンマに新ジョイントベンチャーとして進出したことで新生産地としての注目度が高まりました。

カステッロ・ディ・ヴォルパイア(Castello di Volpaia)もマレンマに進出したワイナリーのひとつ。
今回が日本初登場になります。

キアンティ・クラシコ地区のラッダ・イン・キアンティのヴォルパイア村にあるカステッロ・ディ・ヴォルパイアは、1966年設立のワイナリーで、自社畑37haを所有し、オーガニック栽培を行なっています。

1972年の結婚の際にここを譲り受けた娘のジョヴァンネッラさんと夫のカルロ・マスケローニ氏が現当主で、カルロ氏は1997年からキアンティ・クラシコ協会の会長を務めるなど、この地区の重鎮として活躍しています。

このヴォルパイアがマレンマに設立したのが、カンパーニア・ディ・ヴォルパイア (Compania di Volpaia )で、2001年から2005年にかけてブドウ樹を植え始め、2007年にワイナリー設立、2009年4月に初めてのワインがリリースされました。

彼らが採用したのは、ラッダ・イン・キアンティでも実践してきたオーガニック農法です。

カンパーニア・ディ・ヴォルパイアのワイナリーおよび畑の周辺にはイタリア最大の湿地帯があります。ここは陽射しが強く、夏は40℃に達するほど暑くなる地域です。
湿地帯の近くで高温と、病虫害が発生しやすい、非常に厳しい環境でありながら、オーガニックに挑戦したのは、マレンマ地方の美しい自然に敬意を払い、それを守るため
(AGRICOLTURA BIOLOGICAの認証を取得)


Federica Mascheroni Stianti さん

カンパーニア・ディ・ヴォルパイアのマネージャーは、フェデリカさん(ジョヴァンネッラ&カルロ夫妻の娘)です。10月に来日した彼女が、マレンマでの新プロジェクトワイン “Prelius” を紹介してくれました。

Prelius (プレリウス)は、古代ローマ時代にこの地方にあった大きな湖の名前で、その湖の姿がエッチングでボトルに描かれています。これはフェデリカさんの祖父の友人がデザインしたもので、2009年にヴェローナで開催されたVinitalyでのパッケージコンペティションで受賞をしたといいます。
ブルーの色調が印象的な湖は、周辺を湿地帯に囲まれた小さな湖として現在も残っているそうで、湖を見下ろす丘の斜面にプレリウスの畑(52エーカー、約20ha)が広がります。

この辺りはフランスのボルドー地方に気候条件や土壌タイプが似ていることから、ボルドー品種(カベルネ系、メルロ)が多く栽培されています。


左)Prelius Vermentino 2010 IGT  右)Prelius Morello di Prile 2009 IGT

左はヴェルメンティーノ100%の白ワイン(輸入元希望小売価格2,200円)、右はカベルネ・ソーヴィニョン35%+カベルネ・フラン35%+メルロ30%の赤ワイン(同3,000円)です。

ヴェルメンティーノはミネラル感があり、非常にフレッシュ。フェデリカさんは、このミネラル感は海の影響があるから、と言います。
モレッロ・ディ・プリールはタンニンが充実して骨格がしっかりとし、豊かな果実味とのバランスがよく取れています。



Citto 2009 IGT

チットは、サンジョヴェーゼとカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした赤ワインで、サンジョヴェーゼはキアンティ・クラシコ地区からのもの、カベルネ・ソーヴィニヨンはマレンマ地区からのものを使っています。
つまり、キアンティ・クラシコとマレンマのミックスワインです。

サンジョヴェーゼとカベルネのいいとこ取りをした、しっかりした味わいが魅力で、1,800円というプライスを考えると、非常にコストパフォーマンスがいいと思いました。



なお、カンパーニア・ディ・ヴォルパイアでは、ライフゲート社(LifeGate)のインパットゼロ(IMPATTO ZERO)という環境保全プログラムに参加しています。
CO2を減らすことを目的に各企業がそれぞれ活動するもので、カンパーニア・ディ・ヴォルパイアは “ブドウの苗を1本植えることでCO2削減する” ことを目指しています。

オーガニックやビオを実践するワイナリーはずいぶん多くなってきましたが、自己完結に終わらず、社会の中の一企業として責任を果たすところも、今後は増えてくるでしょうか。


(輸入元:メイワ株式会社)


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