とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

WOWOW連続ドラマW「東野圭吾『幻夜』」 

2011-01-19 22:30:46 | ドラマ


WOWOWで去年から放送されていた『幻夜』が先日最終回となった。東野圭吾の数多くの作品の中でも傑作の一つであると言われている。『幻夜』は、TBSでドラマ化された「白夜行」の続編、姉妹編とも言われる作品で、「白夜行」同様、直木賞候補となり、すでに100万部に迫る売れ行きをみせているクライムサスペンスである。

自身の野望のためにはどんなことでもする主人公・新海美冬役には深田恭子。日本文学史上に残る「究極の悪女」をどのように演じるかが注目の的であった。そして、愛する美冬のためならすべてを捧げると決意した男・水原雅也役に、塚本高史。さらに、自身もつらい家庭の問題を抱えながら執拗に美冬と雅也を追い詰める刑事・加藤亘役として、柴田恭兵が登場する。

この作品は、すでに原作を読んでいたので、ストーリーは判っていた。原作を如何にドラマで忠実に再現できているかを検証しながらの視聴だった。計8回の放映で、分厚い原作をドラマ化できるのか気になっていたが、原作のイメージをほぼ忠実に再現できた内容だったと思う。

妖しいまでに美しく男をたぶらかし、周りの人間を巻き込んで自分の欲望を実現していく恐ろしい女・新海美冬役を、深田恭子が見事に演じていた。相変わらず声は可愛過ぎるが、話さない時のしぐさや目つきなどは「冷徹で不気味な感じ」で貫禄が出ていたともいえる。ただ、美冬を追い回す加藤刑事役の柴田恭兵の出演シーンが多く、美冬対加藤という構図になり過ぎていたのが気になった。また、雅也 (塚本高史)は美冬に命じられるままに何でも言いなりになって殺人を犯してしまう。もうちょっと頭を使う男として描いても良かったのではないか。

また、原作では阪神大震災から始まるが、ドラマでは阪神ではなく中京地域の大震災となっており、あえて阪神を外した設定だった。これは、震災にあった人たちへの配慮という事なのだろうか。基本的には、ほぼ忠実に原作をなぞったといえるが、ドラマではやたらに殺される人が多かった。美容師の青江や加藤刑事の同僚が死ぬなんて設定は原作にはない。また、美冬が加藤の妻を自殺に追いやるなんて事もなかったはずだ。ドラマ版では美冬の悪女振りを強調した脚本にしたのだろう。

最終回では、映画「白夜行」で笹垣刑事を演じる船越英一郎が出演していてビックリした。今月末公開の映画「白夜行」との連動企画ということらしい。ドラマでは、「白夜行」の唐沢雪穂のその後が新海美冬みたいな暗示となっていた。原作では、そのあたりはぼやかされており、はっきりしていない。原作者の東野圭吾自身も、その辺りは明言を避けているそうだ。新海美冬が唐沢雪穂と同一人物であるかどうかよりも、最後まで謎だらけの女として描いたほうが、原作の持つ救いようのない話のイメージを保つことが出来たような気がする。