prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ナイロビの蜂」

2006年05月21日 | 映画
レイチェル・ワイズはこれでアカデミー助演女優賞を取って臨月姿でオスカー像を受け取ったわけだが、映画の中でも臨月のヌードを見せている。もちろんこっちは特殊メイクによるものだろうが、強い印像を残す。
やたら正義感が強くて常に正論を吐いて周囲を辟易させるようなキャラクターだが、それが干からびた教条性ではなくて、生命全般に対するシンパシーから来るものであることが一見してわかる。

イギリスなどのレイフ・ファインズの生活空間はモノトーンに近く、アフリカの原色の画面とコントラストをなしている。原色も、アフリカの自然の原色と、工場廃液みたいな毒々しい汚染色とを微妙に使い分けている巧みな色彩設計。
時制がひんぱんに交錯して、すでに死んでいる妻を絶えず甦らせて見せる演出。
ファインズが庭先で号泣する場面は、抑制と激情をないまぜて秀逸。
ヒロインの惨死体を見て嘔吐する男が、実は半ば陰謀の片棒を担いでいたことがわかるアイロニー。

製薬会社がアフリカに薬を寄付するのは、使用期限を過ぎた薬を処分するのと税金対策からで、実際には酷暑の中ですぐ使い物にならなくなるというあたり、行き過ぎた資本の論理の非人間性をまざまざと教える。
(☆☆☆★★)



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ナイロビの蜂

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