prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」

2005年02月06日 | 映画
マクナマラ元長官による11の教訓(lessons)といっても、教えを垂れるという感じではなく、それぞれ明晰で経験と知力に裏打ちされ頷かせるものを持ちながら、当人はエピローグに典型的に出ているように“言っても通じないよ”と諦めている印象もある。

映画のインタビュアーはほとんど前面に出てこなくてラスト近くにちらっとインタビューが聞こえるが、これが映画の作者のものなのか他の記者のものかよくわからない。質問の方が、人に物を聞くというより自分の聞きたい事を言わせたい、言質を取りたいというニュアンスが強いせいもあるだろうが、マクナマラはうんざりした調子で言っても誤解されるだけだと答えを拒否する。
人は過ちを犯す、と言って、だからどうすればいいとは言おうとしない。簡単に答えが出ない性格の問いには簡単に答えない態度が一貫している。

キューバ危機が本当に危機であり、核戦争が起きなかったのは幸運だっただけだ、というあたり、首筋が冷える思いがした。

東京大空襲を実行しベトナムを「石器時代に戻す」と言い放ったカーティス・ルメイ(それが日本の自衛隊から最高の表賞を受けている!)が、人となりとは別に指揮官としては有能だったというあたり、説得力はあるが見ていて憂鬱になる。

全体にマクナマラも映画の作者も思考の重心を低くして考えを深めることに重きをおいていて、知的な分「華氏911」みたいな俗受けはしない感じ。

作意を感じさせない画面作りだが、エンドタイトルを見たらgafferとかkey gripといったスタッフがクレジットされている。かなりスタッフを揃えて照明をセットしてきちんとメイクもして撮っているということ。


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