きのうは
月に一度の
自分への
仕事のご褒美として
三ツ星懐石店で
味と技ともてなしを
愉しんできた。
親方と女将の笑顔に
迎えられ、
いつもの定席で
ひとり心ゆくまで
茶懐石のひと時に浸り、
何かと緊張と心労の多い
心理カウンセラーにとっての
何よりの癒しとなった。
*
先付けは
「帆立の菊花巻き」。
土佐酢により
秋らしい
さっぱり爽やかな
味わいである。
カウンターの目の前で
親方が造りながら、
「昔の田舎では、
法事で使われた仏壇の菊を
バラして食べて、
線香臭いなんていうことも
ありましたねぇ・・・」
という
面白い噺も聞かせて下すった。
*
つづいては
吹き寄せ。
「北寄の炙り」
「出汁巻」
「舞茸の天婦羅」
「鮭の芋サラダ焼き」
「海老の含め煮」
北寄は熱々で、
噛み応えも旨味も十分で、
その焼き汁の
美味といったら
なかった。
照葉(紅葉)に盛られた
焼き鮭は、玉素焼きの応用のような
和洋折衷の面白いひと品だった。
*
お造りは
「鯛・烏賊・鮪・牡丹海老」。
本山葵のみならず、
穂紫蘇、セルフィーユ、大葉も
薬味として、それぞれに合わせて
味のハーモニーを愉しんだ。
味わい深い織部の角鉢が
朱の半月盆に
見事に映えて、
眼福であった。
*
椀物は
「零余子(ムカゴ)真蒸の豆乳仕立て」。
ムカゴは
山芋の脇芽で、
料亭以外では
なかなか口にする機会のない
珍しい食材である。
松葉の青柚子と紅葉麩が
中秋から晩秋への
移ろいを描いている。
*
強肴は
「喉黒の煮つけ」。
日本海物だが、
品薄の高級魚とあって
なかなか入荷がなかった
とのことだった。
コックリと焚かれた白身は
ほろほろと崩れて
上品な奥深さを感じさせた。
名人・金馬の『目黒の秋刀魚』の
長屋の住人じゃないが、
「眼肉の乙なことよ・・・」
であった。
**
焚き合わせは
「大根と牛の角煮」。
トロトロに煮込まれた牛は、
フレンチの
『ブッフ・ブルギニオン』とは違い、
沖縄の『ラフティー』に近い
食感と味わいだった。
*
親方自ら運んでこられた
ご飯と味噌汁を見て
「おっ!! 栗ご飯!!」
と、歓声を上げると、
「すみません・・・(笑)。
栗じゃなく、芋です・・・」
と、苦笑いされていた。
「みなさん。
おんなじ思いをされて、
なーんだ・・・って、なるんです」
と、申し訳なさそうだった(笑)。
前日に、
ダイソーの『マロングラッセ』を
試食していたので、
さほど栗に焦がれていたわけじゃないが、
それでも、秋といったら、
なんたって栗ご飯である・・・(笑)。
これは、
自分ちで炊くよりないなぁ・・・
と、思った。
***
主菓子は
『焼き林檎と南瓜羊羹』。
はんなりした甘味で
ほっとした処に、
お薄が運ばれてきた。
茶懐石は、
この一碗のために、
料理があるのである。
在京中から
三十年来、茶を嗜んでいるので、
茶人として
居住いと襟を正して、
一期一会の一碗に
謝し奉り、心して喫した。
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