『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

“暑気払い” 懐石

2024-06-29 06:16:05 | 懐石

きのうは
月一の「ご自愛日」として
三ツ星懐石を頂いてきた。

やや蒸しっとした夏日だったので、
無粋ながら
熱中症予防のアイスバンドを
首に巻き、せめて“中尾巻き”みたいに
見えてくれないか・・・と、
馬鹿な見栄を気にしたりしていた。

*

定刻に入店すると
女将が笑顔で迎えて下さり、
いつもの定席にエスコートされた。

珍しく、
親方がすぐに挨拶に来られ、
その笑顔にも癒され、
「毎日、熱中症になって
大変なんですよ・・・」
と、ついつい
愚痴をこぼしてしまった。

そうなんだ・・・。
月一の“ご自愛日”は、
カウンセラーにとっての
癒しの日でもあるのだ・・・。

自分のカウンセリングをして下さった
先生方は、いずれも
ご帰幽なされているので、
同じ昭和世代でアラ還の
食のマエストロたちに
癒して頂いているのである。



*

いつもは
先付けとして
冷製小鉢が供されるが、
この日は
いきなり「浅利の茶碗蒸し」で
意表を突かれた。

きっと、
予約の到着時間を見込んで
調理されていたんだ・・・と、
思わされた。

熱々の餡が張られ、
その表面はピンとした緊張感と
浮かんだ青柚子と
沈む三つ葉の緑が
まず、見る目を癒してくれた。

真っ先に供された
熱々のオシボリと同様に、
冷房下で味わう
“暑気払い”である。

その申し分なく
旨い出汁加減を
十分に味わうに足る
先付けとなった。



**

続いては、冷製の
「螺(ツブ)の煮貝/
 烏賊の黄身焼/
 キャビア挟み才巻海老」に
焼きたての
「青箭魚(サゴシ)の玉素焼」。

この後に、
「椀刺し」となるので、
なるほど・・・
ヴィバルディの定型楽曲様式の
「急-緩-急」じゃないが、
「温・冷・温・冷」となる。

ツブ貝を
尻尾の肝まで巻き出せず、
(あぁ・・・。
いつも、失敗するんですよねぇ・・・)
と、苦笑すると、
カウンター越しに親方も
笑って下すった。

冷製の三品を頂いてから
サワラの幼魚である
熱々のサゴシにとりかかった。

**

【“懐石の華”は椀刺しである】
と宣うたのは、
かの『吉兆』の創業者である
柚木 貞一である。

1997年〈平成9年〉まで
存命したので、
料理番組に出演した時に
それを伺った。

在京中は
近所でもあった
ロイヤルホテル内の『吉兆』に
たびたび訪れては、
その妙技を味わった。

 



椀物は、
目にも鮮やかな
『赤茄子(トマト)仕立て』
にされた枝豆真蒸であった。

この艶やかな椀物に
火入れされた
「一文字人参」が
ピンとした緊張感を
与えていた。

それは、
来日したサルトルが
竜安寺の枯山水の石庭を眺め
「うん。
 緊張感だな・・・」
と見事にその本質を
慧眼により見抜いた、
という逸話を彷彿させた。

やや酸味を感じ指す
まさに、初夏に相応しい
“味わひ深き”逸品だった。

それにしても、
半月盆の朱に
木椀の朱・・・と、
「朱の三段活用」には
畏れ入った。

その中に青柚子や
蓋の金彩と緑である。

俗にXmasカラーと言われる
この補色関係は
「夕陽と緑」なのか
「緑葉に完熟果実」なのか・・・
いずれにせよ、
生き物としてのヒトの目には
この上なく美しく映るのは
肯うよりないだろう。


*+*+

刺し盛りは、
水滴を帯びた
冷え冷えのギヤマン鉢に
これまた冷え冷えの
ガラスの銀簾(ぎんす)が敷かれ、
まことに涼味溢れていた。

北寄、袖烏賊、鯛、鮪大トロ
・・・と、それぞれに
妙なる歯応え、
馥郁たる香味を
瞑目して味わった。


**

口中が陶然と涼味に溢れた処で、
またまた、熱々の
『豚(とん)トロの角煮』の炊き合わせ。

コラーゲンの塊のような
とことん脂を落とされ
甘味のみが残った
琉球のラフティにも似た
角煮であった。

丁寧に六方剥きにされた
小芋や
色鮮やかな紅葉麩も
隠元も
けっこうな合いの手となり、
底に張られたツユ加減が
これまた絶妙の美味で
脳天までズズンと響いた(笑)。

 



揚げ物の
『海老団子と筍と獅子唐』
を菜として
すぐさま、
『新生姜ご飯』が供された。

 



いささかも
油臭くない揚げ物の
カリリとした歯応えやら
モッチリとした噛み応えをも
「食の愉楽」として
存分に味わった。

爽やかな新生姜の芳香が
鼻孔を擽(くすぐ)り、
いつの間にやら
その温もりに
うっすらと汗ばみさえした。

まさに、
初夏の懐石に相応しい
“暑気払い”の
ひと時であった。



*

女将さんに
「冷房を1℃下げてくださいませんか・・・」
と言わしむるほどに
カラダの芯から温もったが、
いつもながら、
入浴と食事で温まっても
何故に「熱中症」にはならないのだろう・・・
と、またぞろ、素朴な疑問が湧いた。

帰ったら、
AIにでも尋ねてみようかしらん・・・
と思った。

そんな愚考を巡らしていたら、
これまた涼しげな
『白玉と白餡の冷やし善哉』
が運ばれてきた。

振られた五色霰(あられ)の
可愛らしいことよ・・・。

~(´▽`)ノ カァイ~



*

甘やかに満たされた処で、
お薄の碗に黙礼し、
「今ここ」を心して、
感謝を込めて喫し
“ひとり茶会”を仕舞いにした。

お帳場では
女将・親方と
ふた言みこと軽話をし、
笑顔に見送られて
店を後にした。





 


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