『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

リアルファンタジー『名人を超える』41

2022-10-08 09:22:30 | 創作

 

* 41 *

 

 知識が増えても、行動に影響がなければ、それは現実にはならない。             

                               養老 孟司


 

 研修会での同箔体験来、すっかり「カナリ押し」になった十代の女流棋士たちは、「我らが女神様」の動向を逐一チェックし、グループ・ラインで盛り上がっていた。

 

「カナリ先生。沖縄戦、ブッチだーッ!

 八十三手の圧勝スンゲーっ!」

 

「その後、地元局に出演して、CF(コマーシャル・フィルム)とPV(プロモーション・ビデオ)撮りもしたんだってーッ!」

「どんだけーッ! 女神様ー!」

 

「あぁ・・・カナリ先生ぃ、L・O・Ⅴ・Eだわーッ!」

 

「家来にしてほしーッ!」

 

「そう。桃太郎のイヌでも、キジでも、サルでも、何でもいいよね(笑)」

 

             

 

 カナリは、対局後に沖縄でプライベート休暇をとった。

 ちょうど三連休にかかったので、名古屋から愛菜、聡美、竜馬を呼び寄せて、「ファミリー・バカンス」をプレゼントした。

 妹と弟たちは、いずれ中学か高校の修学旅行でくるやもしれなかったが、その時には寄らなそうな処を愛菜のレンタカー運転であちこちを観て周った。

 

 亡き父は、瀬戸物で有名な「瀬戸市」の生まれで、年に一度開催される『全国陶器市』で、琉球焼の『まじる商店』とは懇意になっていたので、そこにも寄ってみた。

 親父さんが亡くなり、息子さんのリュウちゃんが元気に店を継いでいた。

「奥様。ソータ先生には、まことにご愁傷様でございました」

 と、彼は深々とお辞儀をした。

 愛菜は慌てて、

「龍也さんも、お父様、残念でしたわね」

 と、お悔やみを申し上げた。

「ハハ・・・。うちのは歳でしたから、順送りですわ」

 と、笑いながら言うと、ホテルから御来店の旨を承っていたので、若旦那はあらかじめ用意していた木箱を差し出した。

「先生がお好きだった次郎さんの花入れです。

 どうぞ、先生のご仏壇に飾ってください」

 とのことだった。

 

             

 人間国宝・金城 次郎の素朴な琉球焼が好きだったソータは、先代の大旦那から陶器市で初めて買い求めて以来、その素晴らしさに魅了され、毎年のように市でコレクションを増やしていった。

 名古屋のデパートであれば、一点五十万は下らない逸品である。

「お心遣い、ありがとうございます」

 愛菜は、丁重にお礼を述べた。

 カナリは、娘としても、父が好きだった物を手向けたく、

「わたし、これを頂きます」

 と言って、同じく、次郎氏の湯飲みを選んだ。

 一緒に選んだ聡美が、

「これで、わたしとリュウ坊で、毎朝、お茶をあげるわ」

 と言って、母親を喜ばせた。

 

 

 


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