掛川の友人から、「小松さん、掛川にいた時は何度誘ってもとうとうフライの世界に入ろうとしなかったのに、それがどうして手のひらを返したように釣りにくるっているんですか?」と訊かれました。
「う~ん、多分そのときはやることが多すぎて時間が取れなくて、最初からあきらめていたんだと思いますよ」
「でも釧路だってそれなりに忙しかったでしょう。それなのに釣りの時間は取れたんですよね」
「そうだねえ、やっぱり釧路では『ここにいるんだったら釣りをしなくちゃ』と思うだけの、土地の力があったんじゃないですかねえ」
趣味や道楽の世界は多々あるけれど、自然を相手にするものはやはり魅力あるフィールドが身近にあるかどうかが、魅かれるかどうかを左右するのだと思います。
自分が楽しむだけなら室内でも良いけれど、自然を楽しむ趣味はどれくらい魅力的な自然かどうかは大きなポイント。
昨日空知川で釣りをしていて、「こういう釣りが本州ではできないんですよ!北海道はやっぱり違いますね」という友人の声が耳に残っています。
フライを楽しむならやっぱり北海道なんですね。
【空知川の川霧】
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ある友人が、地域観光の視察のために道内でも有名なリゾート地へいったそう。
そこで様々な地域アクティビティを視察するなかで、サイクリングアクティビティを見ていると、どうも地域のポテンシャルをしっかり感じさせるようなプログラムがなかった、と言っていました。
「リゾート地なんだから美しい景色なんかがあるのじゃないですか?」
「ところが、それをちゃんと順序立てて紹介したり、一連の流れを物語のようにして興味を持続させるような組み立てがないんです」
「なるほど、北海道だと歴史や寺社仏閣なんかも少なくて、コンテンツが不足しているせいですかね」
「それもあるかもしれませんが、どうも『これだけのリゾート地に来たんだからそれで十分でしょう』と言われているような気がしました」
「ふーむ、確かにそうかもしれません。私がいた掛川でも地域を自転車でガイドする質の高いプログラムを、市民サイクリストが皆で考えて支えていましたよ。掛川なんて、すごいリゾートでもなんでもありませんが、お城があって神社があって、茶畑があって東海道がある。お地蔵さんがあって手掘りのトンネルがある。海があって山がある。そんな小さなコンテンツを紡いで再構成して、市民サイクリストがしっかりガイドする。自転車でのおもてなしって、こういうのを言うんだろうな、と本当に感じましたよ」
「そういうのが北海道のリゾートにはないんじゃないでしょうか。もちろん、優れたガイドさんもそれなりにはいますが、全体として、ガイドは土地のポテンシャルを楽しませてもてなすものだという価値観がまだ醸成されていない印象です。土地のポテンシャルが高いだけに、それに頼りきってしまっているということはないでしょうか」
「耳が痛いですね。しかし一方で、そういう質の高いもてなしガイドはビジネスとして成立するでしょうか」
「旅を『安かろう悪かろう』でも良いと思っている人は対象にならないでしょうけれど、質の高いものにはちゃんとお金を払うという層はあると思います。そんな時期が近付いているとは思いますがね」
なかなか面白い北海道リゾートの感想でした。
土地のポテンシャルに頼り切らずに、それを活かすような工夫と努力がもっと必要ということでしょうか。
厳しい指摘ですが、よりよい地域リゾートをめざす努力は欠かせません。