北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

空き家対策法案のポイント

2013-08-16 23:10:05 | Weblog

 増加する空き家問題対策で、自民党が議員連盟による特別措置法案を提出するという報道がありました。

  ーーーーーー【以下引用】ーーーーー

空き家対策で新法案、自民が方針 ごみ屋敷に改善命令

 自民党は管理不十分な空き家の増加を受け、防災や治安確保の徹底を図る新たな対策法案をつくる方針を固めた。市町村に立ち入り調査権を与え、所有者への改善命令を可能とするのが柱だ。空き家への不法投棄などで問題化する「ごみ屋敷」への改善命令も視野に入れている。早ければ秋の臨時国会に議員立法で提出する見通しだ。党関係者が16日、明らかにした。

 新法案の仮称は「空き家対策特別措置法案」。空き家対策推進議員連盟が法案提出へ中間報告をまとめ、党政調との協議を加速させている。

 総務省の2008年調査によると、全国の空き家は住宅全体の約13%となる約757万戸。

2013/08/16 09:20 【共同通信】  http://bit.ly/18zGv4d

  ーーーーーー【引用ここまで】ーーーーー


 空き家問題は、家の持ち主がいなくなったり、親の家を子供が相続しないなどのケースで、本来家を管理すべき主体がいないか、その責任を果たさない場合が増えたことで社会問題になりつつあります。

 特に人口減少が進む地方都市では、人口が流出して家を継ぐべき子孫が地元にいない、という場合も多く空き家が増えています。

 空き家があるということだけでは単なる民間所有の財産の問題ですが、それが正しく管理されないために壊れたり、屋根が飛んで周りの家に迷惑をかけたり、犯罪の温床になったりすると、社会全体が迷惑をして社会問題になります。

 日本国憲法第29条は、
財産権は、これを侵してはならない。
2.財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
3.私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

 とされています。つまり、単なる民間財産の問題ならば、行政は憲法で保障された個人の財産権を犯すべきではありませんが、2の、財産権の内容は『公共の福祉に適合するように』というところがポイントになりそうです。

 私有財産は不可侵と言っても、公共の福祉に反するようではいけないのです。ではそういう場合は、行政が所有者に成り代わって家を処分できるのでしょうか。

 今は少なくともそうなっていません。

 ほとんどの国民は、所有する者に対して責任ある行動を取っていると思いますが、なかには「それなら放っておいて、行政に処分してもらおう」と考える者がいて、それを認めるならば真面目に管理するものが馬鹿をみることになり、モラルハザードが起きてしまいかねません。

 だから、自治体に調査権を与えて、所有者や相続者への資力を調査して、「払う資力があるのだから払いなさい」という指導ができるようにする、というところまではありだとしても、それに対する強制力があるのかどうか、ということと、さらに、「それなら家はいらない」と言われたときにどうなるのか、ということが問題だと思うのです。

 報道の中では、『市町村に立ち入り調査権を与え、所有者への改善命令を可能とするのが柱だ』と書かれていますが、問題は所有者への改善命令に対する強制力はどうなるでしょう。

 本人の資産を差し押さえて強制的に必要な経費を徴収できるでしょうか。

   ◆   

 二つ目には所有者が所有しないという意志を示した時はどうなるでしょう。

 実は、民放第239条は、「無主物の帰属」ということで、
1 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

 とされています。

 つまり、行政がもらったり、土地などの不動産ならば国に寄付すればよさそうですが、行政としてもお金がかかるような財産は少なくしたいのであって、増やしたいとは思いません。

 更地にしさえすれば土地は売れるような大都会と土地が売れない地方都市の間には、ある種の制度が適用できる範囲と適用できない範囲がありそうです。

 
 現在地方自治体では、この財産権の問題と公共の福祉の判断の問題、そして行政としてやる場合の財源的裏付けに苦しんでいると思います。

 このあたりをどこまで解きほぐせるか、議論の行く末を注目しましょう。

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