本日の日経新聞北海道版一面は特集「人材立国への道」の第一回、『人手消滅 眠れる力を発掘』とありました。
記事の趣旨は、日本の働き手は人口が減りながらも女性や高齢者の就労により増えてきたが、いよいよそれが減少局面に入るという背景を説明し、『働く意欲を持つ一人ひとりが力を発揮できる国にならなければ国力を保てない』というものでした。
そうした人手不足を補う一つのヒントが"多能工化"なのだと。
記事はホテルでフロントからレストランでの接客、物販、SNSでの発信まで一人何役をもこなす女性が紹介されていました。
一人何役と言っても、器用貧乏でいいようにこき使われるブラックなイメージではなく、会社の業務そのものの事業拡大につなげたことで売上高を伸ばし、従業員への賃金水準も高くできているのだと。
あるホテル運営会社では、社員を多能工化することで宿泊業以外でも通用する人材を育成することで様々な経験を積むことができ、逆にそれを社員の定着に繋がるのだと目論んでいます。
一人の労働がシングルタスクを行うシングルスキルでは、その仕事がなければ暇になったりそれ以外での成長も期待できず非効率な労働環境になってしまいます。
その非効率を埋めるのが多能工化で、一つ一つの業務の量が少ない時には周りが補いあいながら業務を潰してゆくのが効率的です。
人口減少に悩む地方都市では特に、一人ひとりが、あるいは会社や企業も特殊な一つの仕事しかできなければ地域が求める仕事需要に応えられないばかりか、ビジネスチャンスを失っているとも言えます。
地域の仕事を余すところなくこなしてビジネスにつなげることが域内経済を回すうえでも重要な仕組みになってゆくことでしょう。
会社や企業がそうであるように、住民の一人ひとりも複数の得意技を有して社会に参加して活躍する集団になることが地域を持続的に支える財産になります。
支えられる側にとどまっているところから、何か一つでも支える側に回ることで地域の仕事の需要と供給のバランスが変わります。
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何度も紹介しているように、長野県小布施町で防災パークnuovoを展開しているのが一般財団法人日本笑顔プロジェクトです。
こちらは水害を受けた被災地の復興の過程で、ボランティアがスコップ一丁ではとても処理しきれない量の土砂を、建設機械であれば効率的に片づけることができることに注目。
「地域内に小型特殊機械のオペレーターを1000人育成する」という志を立てて活動を始め、今では育成したオペレーターが2000人に達したとのこと。
さらには免許を取るだけでは実際の作業に慣れることができないと、防災パークで優勝の寄付で重機の運転ができるというプログラムを作り、それに賛同する多くの利用者に歓迎されています。
ここで重機の運転に慣れて、一定の技量に達したと認められれば、日本笑顔プロジェクトとして被災地に重機とオペレーターをセットで派遣し、きめ細かい住民の復興ニーズに応える活動を行っています。
たとえ災害を受けても、そこから素早く復興を果たす力がある地域の力こそ、真にレジリエンスな社会と言うことができるでしょう。
有事の備えは平時にこそある。
平和な時にこそ有事を思う備えを、モノでも志でも、資格やスキルでも獲得しておきましょう。
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