先日の美唄での都市問題会議では、パネルディスカッションのパネラーとして地元で雪を活用したエネルギービジネスをしている「美唄自然エネルギー研究会」として美唄市内の工業団地にホワイトデータセンターを誘致している本間達弘さんと同席をしました。
私の切り口は広井良典先生の言葉を借りると『地域コミュニティを支える文化や倫理』という視点でしたが、本間さんの切り口は『ローカライゼーション』であり『持続可能な未来社会』ということになります。
本間さんの取り組みは雪冷房。北海道では除雪をしなくてはならないことからある意味嫌われ者的でもある雪ですが、天から冷熱が降ってくると思えばこれは貴重な冷熱資源でもあります。
美唄では以前からこの点に着目して冬に雪を集めてそれを暖かくなっても簡単に解けないような工夫を重ね、夏にその冷たさを利用して冷房を行うシステム作りを研究してきました。
雪冷房を真面目に考えると、雪1トンの冷房利用で、石油10リットルの削減効果=CO2が30kgの抑制効果があるといわれます。これだけのエネルギーがただで手に入るのが北海道です。
一方除雪に目をやると、道路の雪を除排雪するには当然除雪作業や雪を運搬して排雪する作業と予算が必要になり、また大面積の雪捨て場も必要になります。
そこで逆転の発想で厄介者の雪を利用しようというのが、本間さんが進めている「ホワイトデータセンター構想」ですl。
今や情報社会の中でどんどん必要とされているのがデータセンターで、ここには膨大な数のハードディスク(HDD)が置かれていて我々が日常に使っているクラウド化されたデータが保管されています。
そしてこのハードディスクを動かすためには膨大な電力が必要ですがその電力の大半は熱を発するHDDの冷却に使われているのです。
今日データセンターの多くは大都市近傍に作られていますが、これには二つのデメリットがあります。一つは大都市のある本州は気温が高く、それを冷却するには北国よりも多くの電力が必要で、その一方近年大都市では電力が不足気味になっているということ。
寒い地方であれば冷やす電力がより少なくて済み、おまけにそれに電力を使わない雪の冷熱を使えばさらに電力は少なくて済むというのです。
また北海道では使われていない工業団地の安い土地がふんだんにある一方で、幹線道路沿いにはすでに大容量の光ファイバーなどの通信インフラが整備されていて大いに可能性のある土地柄です。
本間さんの発想は発熱を冷やすだけにとどまらず、それでもなお出てくる熱を利用して温熱をつくり、なんと「ウナギの陸上養殖」に取り組むつもりなのだそう。
ウナギの陸上養殖の技術はすでに確立されているのですが、温熱を安定的に安価に調達することが最大のネックとのことで、データセンターから出る熱を利用すればこれもまたビジネスチャンスに結び付く可能性が開かれます。
降る雪、出る熱という厄介者を逆転の発想でビジネスにつなげようという試みが今ここ美唄で進められていて、北海道の地方都市美唄で進められています。
雪冷房から始まった話が、熱を利用したウナギにまで発展しようとは。
ローカルにはまだまだ希望があります。
https://www.kyodo.co.jp/release-news/2021-04-30_3609358/